当時の課題
数年前の北関東工場は、まさに「超アナログ」な現場でした。
具体的な課題は以下の通りです。
● 終わらない紙日報の手集計
毎日の作業日報はすべて「紙」。現場リーダーは夕方になると紙の束を集め、残業しながらExcelへ手作業で転記・集計を行っていました。本来の業務である「現場の改善」や「若手の指導」に全く時間が割けない状態でした。
● 属人的な「ノート」での在庫管理
材料の入出庫は、現場の片隅に置かれたボロボロのノートに数字を書いて管理。当然、書き忘れによる在庫の欠品や、過剰発注が頻発していました。
● 苦行のような棚卸し作業
棚卸しの時期になると、手書きのノートを持って工場中を歩き回り、それをまたExcelに手入力して反映させるという二度手間、三度手間が発生していました。
● 見えない生産進捗
生産計画はExcelで作成し、紙に印刷して現場へ配布。現場が今どの工程をどこまで進めているのか、事務所からは全く把握できず、「あの特急品、どこまで進んだ?」と工場内を走り回って確認する毎日でした。
「このままではいけない」という強い危機感はありましたが、世の中の立派なパッケージシステムは数千万円と高額です。
さらに「こんな多機能なシステムを入れても、うちの職人たちが使いこなせるはずがない」という不安が、システム化への大きな壁となっていました。
どのように解決したのか?
いきなり巨大なシステムを入れる「トップダウン型のDX」ではなく、現場が一番困っている身近な課題(ペイン)から解決していく「スモールスタートDX」を選択しました。
しかし、本事例の最大のポイントは、単なる「部分的な業務改善」で終わらせなかった点にあります。
無計画にアプリを入れるのではなく、最初から「最終的にすべてを連動させて、工場全体のオールシステム化を達成する」という全体最適のロードマップを描いて実践しました。
1. まずは「点」の課題を解決し、現場の抵抗感をなくす
● 紙日報からタブレット入力へ
紙を廃止し、大きなボタンで直感的に操作できるシンプルなタブレット入力へと切り替えました。
● 手書きノートからQRコード管理へ
材料にQRコードを付与し、スマートフォンでサッと読み取って入出庫を登録する仕組みを構築しました。
まずは独立した小さなアプリ(点)を導入し、「残業が減った」「モノ探しがなくなった」という小さな成功体験を現場に蓄積させました。
これにより、「システム=面倒くさい」という現場の心理的ハードルを完全に取り払いました。
2. 点と点を「線」でつなぐ(生産計画のシステム化)
現場がタブレットやスマホの操作に完全に慣れ、「もっと便利にしたい」という空気が醸成された絶好のタイミングで、本丸である「生産計画」のシステム化に着手しました。
ここが本事例の最大のポイントです。
これまで現場が単独で使っていた「日報アプリ(実績データ)」と「在庫管理アプリ(材料データ)」を、新しく導入した生産計画システムにバック裏でデータ連携させたのです。
3. 高額パッケージに頼らない「オールシステム化」の完成
バラバラだったアプリ(点)が、生産計画という「線」で繋がった瞬間、工場に劇的な変化が起きました。
現場の職人がいつものように目の前のタブレットで「作業完了」をタップするだけで、事務所のモニターにある生産計画の進捗バーがリアルタイムに更新されます。
材料を使えば、自動的に在庫データと発注アラートが連動します。
数千万円規模の重厚長大な統合システム(ERPなど)を一括導入せずとも、自社に合った身近なアプリを段階的に導入し、最後にそれらを結合させることで、経営層が切望していた「工場全体のリアルタイムな見える化(オールシステム化)」を見事に達成したのです。
ご支援内容の詳細
船井総研は、単なる「システムの選定・導入代行」ではなく、コンサルタントの立場で自ら業務に適合するアプリを開発し、現場に伴走する支援を行いました。
● 現場目線のUI/UX開発
職人が抵抗感を持たないよう、入力項目を極限まで減らした「現場専用のオリジナルアプリ」を要所要所で開発・提供しました。
● 小さな成功体験の積み重ね
「今まで通りが一番楽だ」という現場の反発を抑えるため、「タブレットを使えば残業が減る」「スマホを使えば在庫探しがなくなる」という小さな成功体験を意図的に作り出し、現場のデジタルへの心理的ハードルを下げる支援を行いました。
● 「全体最適」を見据えたロードマップ策定
単発のアプリ導入で終わらせず、「最終的に生産計画と実績を連動させる」というゴール(全体設計図)を描き、そこから逆算して導入の順番をコントロールしました。
どのような効果が出たのか?
定量的な効果
● 集計作業時間のゼロ化
現場リーダーが毎日Excel入力に費やしていた手集計の時間が毎日1時間残業していた状態から「0時間」になりました。
● 棚卸し工数の大幅削減
システムから出力したチェックシートを現場で入力する運用になり、事後入力の手間が省け、棚卸しにかかる時間が半日から2時間に短縮されました。
● 欠品の撲滅
スマホでの在庫登録と連動し、システムが過去の推移から「発注点(いつ何を発注すべきか)」を自動でアラート。勘に頼った在庫管理による欠品がなくなりました。
定性的な効果
● リアルタイムな進捗管理の実現
タブレットの実績と生産計画が連動し、事務所にいながら「今、どの製品が何%完了しているか」が一目で分かるようになりました。
● 現場の意識改革
当初は反発していた現場スタッフから「これ、すごく楽だね」「次はこっちの業務もシステム化できないか?」という前向きな声が上がるようになりました。
● リーダーの本来業務への回帰
事務作業から解放されたリーダーが、現場の品質向上やスタッフのマネジメントに注力できるようになりました。
船井総研に依頼してよかったこと
もしトップダウンで数千万円のシステムを導入していたら、現場はパンクし、絶対に失敗していたと断言できます。
船井総研の熊谷さんは、私たちの『泥臭い現場のリアル』を深く理解した上で、現場が使いこなせる小さなアプリを自ら作ってくれました。
パッケージを押し付けるのではなく、ウチの業務に合わせて柔軟にシステムを構築してくれたこと、そして何より『点と点をつないで、最後に工場全体を見える化する』というストーリーを描き、そこまで伴走してくれたことに本当に感謝しています。
今後の展開
北関東工場での「スモールスタートから全体最適へ」という成功モデルを確固たるものにし、今後は蓄積された製造実績や在庫推移のデータを活用した「データドリブン経営(原価低減や歩留まりの改善)」へとステップアップしていく予定です。
支援担当者からのコメント
中小製造業の皆様からDXのご相談を受ける際、多くの方が「システム投資へのハードルの高さ」と「現場のITアレルギー」に悩まれています。
いわき様の成功の最大の要因は、小林社長と斎藤工場統括が「現場の痛みに寄り添うこと」を最優先された点にあります。
DXの主役はシステムではなく、現場で働く「人」です。
現場が「楽になった」と実感できる小さな成功体験を積み重ねることが、結果的に最短距離でのスマートファクトリー化に繋がります。
「ウチの現場はアナログだから…」と諦める前に、まずは一番身近な「紙」を一枚なくすことから、一緒に始めてみませんか?
もし「自社の場合、どこから手をつければいいのか?」と迷われましたら、いつでも私たち船井総合研究所にお声がけください。
皆様の工場が、より素晴らしいスマートファクトリーへと進化するお手伝いをさせていただければ幸いです。
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