会社をいかに永続させるか。そして、いかに持続的に成長するか。これは、業種を問わずすべての経営者にとっての至上命題です。
しかし、現実の経営環境は非常に厳しく、設立からの会社の「生存率」は意外に低いのが実態です。下表は中小企業庁のデータなどから推計した数値ですが、設立から10年後には全体の約3分の1が姿を消しています。算出方法によっては、10年後の生存率は数%程度にまで下がるという厳しいデータすら存在します。
さらに、近年では、下表のように、数年に一度のスパンでさまざまな危機が訪れています。
「100年後なんて、自分はこの世にいない」と思考停止するのは簡単です。
しかし、これほどの頻度で事業環境を激変させる事態が起きているからこそ、どんな危機が来ようとも「自分の代も、その後も成長する組織、伸び続ける会社」を目指すことが、極めて重要ではないでしょうか。
ところで、世界に目を向けると、実は日本がダントツで「100年企業」が多い国であることをご存じでしょうか。
このデータによると、創業100年以上の企業数は、2位のアメリカと比較して、日本が大きく水をあけています。創業200年以上の企業数に至っては、アメリカやドイツが約200社にとどまるのに対し、日本にはケタ違いの約3,000社以上が存在しています。
日本企業には、会社の永続に関する世界最高峰のノウハウが蓄積されていると言えるのです。
一方で、経営者が見落としてはならない事実があります。それは、「老舗ほど、成長性と収益性は鈍化する」という傾向です。
企業の成長性と収益性を評価する船井総研の独自指標に、「SGS(持続的成長スコア)」があります。
【SGS(持続的成長スコア) = 3ヶ年平均成長率(%) + 前期営業利益率(%)】
下のグラフをご覧ください。これは、創業からの経過年数別の平均SGSをまとめたものですが、企業が陥る成長鈍化の軌跡が明確に表れています。
※東京商工リサーチのデータに基づき船井総研が作成したグラフです
◆創業初期の高い成長力
創業5年未満の企業のSGSは43.3%と極めて高く、勢いがあります。
◆急速な鈍化
しかし、5〜10年未満で20.9%に半減し、10〜15年未満では14.9%、15〜20年未満で12.4%と急降下します。
◆長期的な低迷
その後もなだらかに低下を続け、20〜30年未満で10.3%、50〜60年未満で7.1%となり、創業100年超の老舗企業においても7.3%にとどまります。
つまり、「いかに会社を永続させるか」ということと、「いかに持続的に成長するか」という命題は難易度が異なり、多くの老舗企業が後者の壁にぶつかっていることがわかります。100億企業を目指すような持続的成長を実現するには、単に長く続ける以上の「革新」が必要となるのです。
では、成長鈍化の罠を越え、幾多の危機を乗り越えて持続的成長を達成している真の100年企業は、どのような経営思想を持っているのでしょうか。
日本では、経営・商売に関する「5つの考え」が、古くから確立していました。
① 過度な利益追求を避ける「三方よし」の精神
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の思想に代表される精神が深く根づいています。企業が短期的な利益のみを追求するのではなく、地域社会や顧客との長期的な信頼関係を優先する経営姿勢です。
② 堅実な財務体質と無借金経営
身の丈に合わない無理な拡大路線をとることを避け、平時から内部留保や不動産といった安定資産を蓄える方針をとります。この堅固な経営基盤こそが、不況や自然災害といった予測不可能な危機が訪れた際にも、会社を耐え抜くための防波堤となってきました。
③ 家督相続と「のれん」を守る意識
会社を決して個人の所有物として扱うのではなく、「先祖代々から預かり、次の世代へと継承していくもの」と捉える深い意識が存在します。家族経営や家督相続といった価値観が、目先の利益に捉われない長期的視座をもたらしています。
④ 人材(従業員)の長期育成
社員を単なる短期的な労働力として扱うのではなく、一つの「家族」のように扱い、技術や精神を時間をかけて継承していく独自の雇用形態がとられてきました。
⑤ 「不易流行」の実践
時代がいかに変わろうとも絶対に守るべき「経営理念や家訓(=不易)」を大切にする一方で、その時代の流行や技術革新に合わせて、柔軟に事業内容を変化させていく(=流行)姿勢です。
この中で、会社の永続と持続的成長のために特に重要だと思われるのが、「⑤ 『不易流行』の実践」です。
広く知られている事実ですが、誰もが知る大企業も、本業は創業時と現在で大きく姿を変えています。
資生堂は調剤薬局から化粧品メーカーへと転換し、任天堂は花札の製造からゲーム機・ゲームソフトの世界的企業へ、そしてトヨタは繊維機械から自動車産業へと大胆な進化を遂げました。
一見すると、まったく異なる領域へ進出し、本業が変わっているように見えますが、実は創業時から受け継がれる「思い」は変わっていません。
決して変わることのない本質(不易)を大切にしながらも、たえず新しい変化を取り入れる(流行)ことこそが、会社の永続と持続的成長につながる最大の秘訣なのです。
未曾有の危機が幾度となく訪れる現代において、ただ生き残るだけでなく、持続的な成長を遂げることは至難の業です。老舗企業が直面する収益性鈍化の壁を打破し、永続する企業を目指すためには、日本の100年企業が脈々と受け継いできた強靭な経営思想を、現代の経営にインストールする必要があります。
それは、強固な財務体質や「三方よし」の精神で足元を固めつつ、最も重要な「不易流行」を実践すること。自社の存在意義やコアとなる理念をブレさせず、環境変化に合わせて提供する事業そのものは柔軟に変革していく姿勢が求められるのです。
最後に、本コラムを読んで「100年企業化」にご興味を持たれた方におすすめの経営レポートを2つ、ご紹介します。
■創業114年、売上106億 株式会社オカモトヤに学ぶ事業変革と人的資本経営
https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/S109__00001701_S109
■創業439年、売上145億 株式会社AWABIYAホールディングスに学ぶ、伝統と革新の「地域コングロマリット経営」
https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/S109__00001698_S109
どちらも船井総研オフィシャルサイトから無料でダウンロードできますので、ぜひご一読ください。
![]() | 執筆者: 株式会社 船井総合研究所 井手 聡 いで さとし |

