地域コングロマリット経営の「順序」
地域コングロマリット経営とは、「特定の地域で複数の事業体を持つ経営」のことです。
それだけだと「多角化経営」と変わらないように思えますが、地域コングロマリット経営は単に事業を増やしていくのではなく、
①事業間シナジーを重視し、会社全体としてLTVを高める
②主力事業に依存せず複数の柱を持つことで、急激な外部環境の変化などによるリスクを分散する
③会社のブランディングが進み、採用力が高まる。事業責任者ポストが生まれ、経営幹部が育つ
これらのようなポイントを押さえることで、「地域になくてはならない存在」を目指すのが特徴です。
ところで、事業を増やすためには、新規事業への参入、またはM&Aが必要です。もちろん、その両方を行っている会社も多いのですが、そこに「順序」は必要なのでしょうか?
どんな事業に参入するのかにもよりますが、新規事業の立ち上げには、多額の投資と多大なエネルギーが必要です。
M&Aを通じた多事業化も、多額の投資(買収資金)が必要であるのは同じですが、譲渡企業の社員、顧客、協力会社などのネットワーク、そしてビジネスノウハウや実績をそのまま引き継ぐことができるという点において、自前での新規事業参入よりも簡単ではないかという印象があります。
しかし、それは間違いかもしれません。新規事業を立ち上げる力がない会社が、M&A(や、M&Aによる多事業化)をやり切れるとは思えないのです。
自力での新規事業立ち上げが先、その後でM&A
PMI(合併後の統合作業)により譲渡企業の業績をアップさせたり、グループシナジーを発揮させたりしていこうと思えば、譲渡企業のウィークポイント(弱点、経営課題)を支援していくことが重要になります。
その支援の内容は、集客、営業、採用、財務、DX、設備投資などが考えられますが、はたして、自社で新規事業を立ち上げたことすらない会社が、自社とは異なる事業を手掛けるグループ会社に対して適切な支援ができるでしょうか?
私は、かなり難しいのではないかと思います。
実際、私が担当する支援先や会員企業の中に、「社内で新規事業を立ち上げた経験がないまま、別の事業を営む会社をM&Aして、うまくいっている」という会社は、1社もありません。
したがって、自力での新規事業立ち上げが先、その後にM&Aなのであって、順序を間違えてはいけないのではないでしょうか。
まずは社内で事業を立ち上げる力をつけるべきであり、それを経ずに「M&Aで新しい事業を買ったらいい」と考えてしまうと、うまくいかないことが多いのです。
新規事業の立ち上げで、幹部人材を育成する
社内で新規事業の立ち上げを試みる際、最初に問題となるのは、「誰が責任者を務めるか」です。
このとき、その事業の経験者を採用したり、ヘッドハントしたりして任せても、うまくいかないことが多いと感じます。
なぜなら、「経験」と「ビジネスセンス」は、別物だからです。また、新規事業を軌道に乗せるために欠かせない「投資」の決断が、多くの場合、当人にはできないからです。
多額の投資までその経験者に任せることはできませんから、決断は経営者や幹部の仕事です。しかし、経営者や幹部がその事業や現場のことをまったく知らなければ、やはり決断はできません。
したがって、結局、経営者や幹部が実行レベルにまで関わるのが、最も早くて確実なのです。
もちろん、その事業の経験者を採用すること自体がダメだということではありません。その人に任せっぱなしではうまくいかないことが多い、ということです。
つまり、経験者を採用して立ち上げに必要な知見を借りつつ、現場に入って指揮を執ることができる幹部人材の存在が必要なのです。
では、そのような人材をどのようにして育てるか。近道はなく、新規事業を立ち上げるというチャンスを与え、経験を積ませるしかありません。
つまり、新規事業の立ち上げは、地域コングロマリット経営の入口であると同時に、ゆくゆくはM&Aをした企業のPMIをも任せられる幹部育成の機会でもあるのです。

