「地の利」こそが、収益力を高めるための重要ポイント
私は住宅リフォーム会社の支援を多く担当しているのですが、多店舗展開をしている支援先の店舗別損益データを見ていると、共通点があることに気づきます。それは、「1号店・2号店が利益を出していること」です。
たとえば、ある支援先A社は、リフォーム事業で9店舗を展開し、売上が25億なのですが、このうち1号店と2号店で7億を占めています。そして、この2店舗で、リフォーム事業全体の営業利益の約半分をたたき出しています。
また、別の支援先B社は、リフォーム事業で6店舗を展開し、売上16億なのですが、このうち1号店と2号店で7億を占めています。
いずれも、25年ほど前にリフォーム事業に本格参入した会社です。その1号店・2号店というと、現在よりはるかに競争が緩やかだった時代に出店して地域一番店の地位を確立し、長い年月を経て豊富なOB客を有しており、安定したリピート基盤を持つのが特徴です。
そういう店舗が「稼ぎ頭」となっている一方、それ以降に出した店舗は、売上アップに少々苦労している印象です。
ある支援先C社は、2016年に3店舗目を出し、2019年には、会社年商が過去最高の8.2億に達したのですが、翌2020年、社員が大量離職してしまったことを機に、不採算だったその3号店を閉鎖した過去を持ちます。
しかし、その後は盛り返し、2024年度は2店舗で8億に達しています。3店舗で8.2億と2店舗で8億。どちらが良いのかは、言うまでもありません。
※ちなみに、直近となる2025年度は久々の出店を果たし、さらに新規事業(不動産事業)への参入も奏功して、3店舗で10億へと伸ばしておられます。
これらの事実は、その地域における知名度やシェアが高く、その地域の特性をよく理解していること、つまり「地の利」があることが、経営戦略上いかに重要かを教えてくれます。
そしてこの「地の利」という要素の存在こそが、「地域コングロマリット経営」をとるべき大きな理由なのです。
地域コングロマリット経営で既存エリア売上を最大化する
先述のとおり、やみくもに新しいエリアへと進出するより、1店舗売上や既存エリア売上の最大化を志向するほうが、収益力を維持しながら企業成長をすることができます。
そして、既存エリア売上を最大化するための戦略が、既存エリアのマーケットを新規事業や新規業態で深耕する「地域コングロマリット経営」です。
地域コングロマリット経営とは拠点地域において住宅、飲食、観光、介護など複数の関連事業または非関連事業を複合的に展開する経営スタイルのことです。地域内需要を「点」ではなく「面」でとらえ、相互にシナジーを生み出しながら、地域経済の活性化と企業の持続的成長を両立させる戦略であることが特徴です。
実は先述のA社とB社は、いずれも地域コングロマリット経営をとっておられます。
A社は「トータルハウジング戦略」と称し、リフォームに加えて新築(注文住宅、規格住宅、分譲住宅等)、不動産(売買仲介、買取再販、中古住宅+リフォーム等)の各事業も手掛けています。住まいのことならなんでもワンストップで対応してくれることは、お客様にとって大きな魅力です。また、新築したお客様が、その後リフォーム、そして最後は不動産売却を依頼してくれるという、「一生涯のお付き合い」にもつながります。
A社の地域コングロマリット経営スタイルは、下図の中では「①事業ドメイン特化型」であるといえるでしょう。
一方、B社は新築、不動産のほか、介護事業(リハビリデイサービス)を展開しています。
また別の支援先D社は、リフォーム、新築、不動産に加え、不用品買取事業にも参入しています。そして、支援先E社は、インドアゴルフスクール事業を手掛けています。
介護や不用品買取、インドアゴルフスクールはいずれもリフォームと関連がないように見えますが、実は客層が一致しています。
リフォームの主たる客層は50~60代のシニアですが、自身あるいは親に介護のニーズがあることが少なくありません。一方、この年代には趣味がゴルフで経済的に余裕がある人も多く、インドアゴルフスクール事業がフィットします。
またリフォームをする際、不用品を処分したいと考えるお客様は多いのですが、「グループ会社で不用品買取をしていますよ」と案内すると、とても喜ばれるそうです。
B社・D社・E社の地域コングロマリット経営スタイルは、上図の中では「③客層特化型」または「⑤自社アセット&リソース型」であるといえます。
地域コングロマリット経営がもたらす「シナジー」と「リスクヘッジ」
これらの地域コングロマリット経営事例に共通するのは、「シナジー」と「リスクヘッジ」が図られていることです。
A社は「一生涯のお付き合い」を可能にすることにより、そして、B社・D社・E社は別サービスを提供することにより、LTV(生涯顧客価値)を高めることに成功しています。これらは、わかりやすい「シナジー」です。
またリフォーム事業が不振に陥っても不動産事業でカバーできたり、何らかの要因でリフォームマーケットが冷え込んでも、介護や不用品買取、あるいはインドアゴルフスクールといった、まったく異なるマーケットは順調だったりと、事業間で相互に補い合うことが可能です。
このような「リスクヘッジ」の大事さは、リーマンショックや数々の震災、そしてコロナ禍を経験した経営者の皆様であれば、痛いほどよくわかるかと思います。
以上を参考に、ぜひ皆様もさらなる企業成長のために、地域コングロマリット経営を志向されてはいかがでしょうか。

