自社の技術・設備による新規業種・新規顧客 5つのStep
自社の技術・設備による新規業種・新規顧客開拓の5つのStepということでStepを5つに分けてお話をさせていただきたいと思います。
まずStep1は商品・技術戦略ということで、最初に決めなければいけないことは自分たちが持っている商品、技術をどう打ち出していくかを考えることです。3Cを踏まえて(自社・市場・競合)ということで、今日ご参加されている方々は既によくご存知で分析されている方も多くいらっしゃるかと思います。マーケティングを考える上ではまず自分たちが持っている商品がお客様や市場にとってどういう価値があり、かつ競合の動きがどうなのかということを考慮する必要があります。
その上でStep2、どういった技術・商品でどう戦っていくのかということを決めます。そしてStep3で、端的に言うとWebサイトということになりますが、自分たちの持っている技術、商品、生産能力を知らしめるための基軸の広告であるWebサイトやソリューションサイトを作っていきます。
さらにStep4でそれを告知していくということで、マーケティングオートメーションというシステムを導入して効率的な営業活動につなげていきます。
最後のStep5でお話しさせていただくことは、技術研究・開発となります。具体的には新しい成長分野からの市場ニーズをどう捕まえて、自分たちで次の技術開発にどうつなげていくのかというお話をさせていただきます。
それでは、まずStep1からお話しさせていただきます。
Step①-1:自社の強み・強化ドメインの明確化
まず、自社の強みは成長市場の仕事につながる打ち出し方、見せ方になっているかということです。当然、自分たちの強みに合った仕事を受けなければいけません。これは皆様もご承知の通りだと思います。ただ、やはり不景気なことや目先の仕事が無くなることを考えだすと、少し無理をしてうちの会社に合わない仕事まで取ってきてしまうことがありえます。これはプレス業界に限らず、同じ受託加工の業界でリーマンショックの後に起こった出来事です。
仕事は何とか確保できたが全然儲からない、あるいは発展性が無いといったことが過去にありました。そのため大事なことは、自分たちが持っている強みをいかに成長市場の仕事とマッチさせるかというところです。自分たちが狙う仕事を取ることは大事ですし、どういう仕事を受けたら自分たちの強みが一番出て、お客様もハッピーになるのかを考えることも大事です。
当たり前のことじゃないかと皆様はお思いになると思います。しかしこの部分が仕事を新しく取ろうとなったときに意外と抜けがちになるポイントなので、あえて最初にお話しさせていただきました。
Step①-2:事業ドメインの見せ方 例
続いて、ある程度自分たちの強みが分かって言えるようになった際に、今度はそれをどう見せるのかという話になってきます。先ほどの強みというのは、やはり具体的に語れる内容が望ましいです。
具体的に語れるとはどういうことかというと、よくある話ですが「うちは小回りが利くんです」とか「うちはお客様の痒い所に手が届くんです」といったところを評価していただいている会社様があります。「うちは技術だけを評価していただいているわけではないです。長年の関係とか、相手が楽だということも強みです」と、そういったことを言われる会社様もよくいらっしゃいます。これは確かに間違いではありません。サービス力に優れているという観点では非常に良いことです。ただ、新しいお客様からすると「うちは小回りが利くんです」とか「何でもやるんです」とか「うちは他社ができないと言った仕事でも何とか形にするんです」といった話は非常に分かりづらいのです。
「あなたの会社の強みは何ですか」と聞かれたときに「小回りが利くことです」と言って自社のことが100%相手に伝わるかというと、それはなかなか難しいと思います。そのため大事なのは、自分たちが持っている技術、サービスなどの要素をどうお客様に価値があるように見せることができるかということになります。これは変にお化粧をすること、あるいは自分たちを実力以上に見せるということではありません。自分たちが持っている要素や技術を正しく分類し、どういうことが提供できるのかをきちんと形にしましょうということです。
例として、自社が持っている要素技術とスライドテキストに書かせていただいておりますが、例えば高精度な金型が作れる、高精度なプレス加工が安定して作れる、量産ベースで10万個以上できる、仮にそういった技術があるとします。加えて板鍛造にも強い、板鍛造の金型設計からできる、仮にそういう二つの技術があったとします。基本的に自社の強み、技術の強みというのは組み合わせですので、こういう高精度化の要素技術と板鍛造の要素技術が組み合わさると、それがお客様に対する提供価値・機能になるということです。このスライドで言えば、例えば切削加工からプレス、板鍛造によって広報を変えませんかというのが提供価値になってくるわけです。
ただ、提供価値は市場におけるニーズと結びつかなければ、やはり評価はしていただけません。なので、具体的にどういうものに使えるのかというところまではお客様が想像力を働かせるような伝え方をする必要があります。お客様が持っている課題と、会社の持っている技術がどのように結びつくのかというところを紐づけていただかないといけません。
先ほどは仮に高精度と板鍛造の話をしましたが、例えば高精度のプレス加工と絞り加工の技術であれば、プレスをした後に簡単な二次加工を入れているんだという話があったとすれば、そういったことで悩まれているお客様にとってはコストダウンに繋がる提案になるわけです。
そのため大事なのは、自分たちが持っている技術をきちんと分類してあげて、自分たちのことをよく知らない方が見ても分かるようにしてあげることです。「お宅はこれが得意なのか」とか「こういう部品やこういう加工が得意なのか、それならこういう製品もできるのか」というように価値をきちんと伝えるという事が非常に大事です。これがやはり最初にやらなければいけないことです。
今日はどうしてもWebやデジタルツールなどの話が後半も続きますが、一番大事なことは、自分たちが持っているものや提供できる価値から始めなければいけないということです。
Step①-3:商品・戦略:購買頻度の考え方
先ほど自分たちが持っている価値を可視化しましょうというお話をさせていただきましたが、その次は、プレスの仕事を量産として取っていこうというお話です。例えばこれはダイキャストや射出成形でも同じことですが、基本的に一度量産が決まると1~2年、場合によって10年は仕事が続きます。これはどういうことが言えるかというと、市場的には購買頻度が極めて低いと言えます。要は頻繁に購買の意思決定をすることはないということです。常時買っているわけですが、例えば新製品が出る、あるいは今までの設計が変わる、あるいは既存サプライヤーが供給できなくなったといった事情がないと購買に至らないということになります。例えば展示会などで「あなたの会社の技術はすごいですね」と言われることもあるかと思います。過去には「それではまた何かあったときは声かけますよ」となったことが多いのではないかなと思います。これはどうしようもないことです。構造的にプレスであれ、ダイキャストであれ、射出成形であれ、金型というイニシャルコストがあって、かつ安定供給、量産部品ですので当然購買頻度は低くなります。ただその中でも、もっとお客様の接点を作れる商品を作りましょうということがここで申し上げたいことです。
例えば一般的な話になりますが、集客の商品と主力の商品を分けましょうというお話をここでさせていただきたいです。例えばスーパーの場合ですと、スーパーの折り込みチラシが皆様のところにも入ると思いますが、スーパーのチラシの左上には肉や卵、牛乳に魚といった生鮮食品が並んでいると思います。
それではスーパーにとって一番儲かる商品とは何なのかと言いますと、実は生鮮食品のような日持ちしなくてかつ価格競争に陥りやすい商品ではないのです。スーパーにとって儲かりやすい商品というのは単価が高くて、かつ長期在庫ができる商品になってきます。具体的に言うと、ただの醤油や味噌といった商品です。しかし醤油を1週間に1回買う人たちはいないので、これは購買頻度が低いと言えます。
一方で卵や牛乳、肉は購買頻度が高いです。2日か3日に1回は買いに行きます。そういうことでスーパーやクリーニング屋などは購買頻度が高いものを前面に出してお客様を集めて、購買頻度は低いけど利益は多い商品へと誘導しているわけです。そういった形で主力商品に繋げていくということです。
我々の場合もこういった集客の商品を持ちましょうというのが申し上げたいことになります。今、テキストの画面には「トラブル防止」「コストダウン」「品質・機能性向上」VA・VE設計技術ハンドブックというものが載っています。例えばこういうものも集客商品になるわけです。皆様もインターネットサーフィンをしていて少し気になる資料などを見つけたときに、無料ダウンロードみたいなものを見られたことがあると思います。そこにアクセスすると個人情報を入れてくれということで、入れられたケースもあるでしょうし、そこまでしたくはないと思って閉じたケースももちろんあると思いますが、あれがいわゆる集客商品になるわけです。お客様との最初の接点ということです。
なので「今すぐプレス加工の案件をください、相談してください」とは言いません。ただ、無料でこういったあなたの役に立つ商品をうちは提供してますよ、ぜひこれを買ってください、もらっていってくださいという入り口を作りましょうということです。ここではハンドブックという資料を例にご説明しましたが、例えば「試作やりませんか、うちは加工の試作を1品からやりますよ」とか、あるいは「うちは試作加工したあとの組み立ての検証までやりますよ」といった集客に繋がる、お客様の役に立つ、かつ購買頻度が高いといった商品というものを用意しましょうということです。
Step①-4:自社の強み・強化ドメインの決定方法
ここからは競合のお話をさせていただきます。自分たちが売っていく、売りたい商品と自分たちが得意なものは大体分かった、整理できた。市場に対してそれをどう打ち出していくかということも大体想像がついて決まった、かつもう少し買ってもらいやすい接点、本格的な見積もり前の接点を作って入り口商品を作ったということで、ではこれでお客様を作れるかと言うと、また少し違ってくるわけです。一番右のところに競合と書いてありますが、既にお客様には取引しているサプライがほぼ確実にいるわけです。基本的にはそことの比較になってくるわけです。あるいはインターネットや展示会などで探したとき、自分たちと同じようなビジネスをしているプレス加工会社様が自分たちの競合になります。そこと比べてどうなのかという視点が最後に大事になってきます。
具体的には商品戦略、フロントエンド、バックエンド、キーワード戦略等を書いていますが、まずは基本的にお客様との接点を作るということは第1講座でも申し上げましたが、今は基本的にWebでお客様と最初の接点を持たれるケースが多いです。どこかから紹介をされたにしても、Webで検索をします。そういう意味ではWeb上での競合対策ができているか、うちがきっちり1番を取れるかという視点が大事になってきます。これをこの後のStep2でもご説明させていただきます。
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