賃貸管理ビジネスの現状―どんどん厳しくなる賃貸管理ビジネスの現状
結論からお伝えしますと、賃貸不動産ビジネスは厳しくなっていますし、これからも厳しくなります。もちろん皆様ご存知の通り人口減少、それからエリアや会社様によっては商圏の縮小を余儀なくされていて、人口が減って商圏が小さくなれば当然市場規模も小さくなると思います。それから今は部材が上がっていますから、新築の着工数も減少しておりまして新築物件が減れば減るほど新築起因の管理個数の拡大も鈍っていきます。これだけでも非常に厳しい状況にはあるのですが、そこに異業種からの参入が増えてきています。具体的には売買事業、リフォーム事業、建築事業、これらを営んでいる会社様です。売買や建築であればイメージしやすいかなと思います。オーナー様に購入いただいた物件をそのまま管理する、オーナー様に建てていただいた物件をそのまま管理する、場合によってはそこから賃貸仲介までやりだして、新築のピカピカな物件のユニーク物件の仲介を扱っている話もあったりします。
それから四つ目の手数料の減少です。一つ目に賃料の低下というように書かせていただいておりますが、オーナー様の懐事情も二極化していると感じます。賃貸経営がうまくいってるオーナー様と残念ながらそうではないオーナー様です。うまくいっていないオーナー様の場合は、物件をしっかりバリューアップして空室対策をして、賃料維持、ないしは上げていこうという動きを取ろうとしても、そもそもの工事の元手がなくて工事の元手を作るために今の空室を埋めないといけなくてといったような八方塞がりの状況になっているオーナー様も中にはいらっしゃいます。
また、賃貸仲介の客付けの観点から見ると、仲手無料スキームです。昨年、訴訟の話もありましたが、管理会社様のご相談でいただくのは月だいたい3件から多くて5件ぐらいでしょうか。問い合わせとご案内を管理会社で行うのですけれども、残念ながら契約に至らずに、お客様とお別れをして後日、この仲手無料スキームを使っている業者様からお問い合わせがあって、「契約になりお申し込みいただきました」とご連絡があるとします。そうすると管理会社様からすると、広告費、人件費、ガソリン代まで使ってお客様をご案内しているのに1円も儲からない実態が出始めてきています。
それから二つ目、増加する入居者管理サービス業務というところでクレーマーのモンスター化です。一部のクレーマーは、管理部の方がお問い合わせを頂戴して現地に伺うと、スマートフォンを持って録画を回していまして、「あなたの一挙手一投足、これで録画している。変なこと言ったらただじゃすまないぞ」というようにプレッシャーをかけてきたり、あとは日本の人口の高齢化問題、ここからも逃れることができません。既存の入居者様、元気だった高齢者様が、気づけば軽度の認知症を発症してしまっていて、鍵が開かないというリクエストがきます。現地に直行してみると入居者様はケロッとした様子でお部屋に入っていて、「どういうことですか」と聞けば、実は隣の部屋の鍵を開けようとしてしまっていた、認知症になってしまって自分の部屋がどこなのかわからなくなってきたということでした。そのようなことからもしかすると入居者間トラブルも今後増えていく可能性がございます。ここの増加する建物管理業務は、先ほどお伝えした通り、物件が老朽化して専用部のみならず共用部も階段が錆びついていたり、外壁がボロボロでなかなかお客様にはご紹介できないわけですが元手がないという市場やお客様の状況がございます。
さらには賃貸不動産ビジネスそのものを振り返ってみますと、そもそも社員一人当たりの対応件数には上限があるビジネスです。人が携わらないとできないビジネスですので、1年後の売上を倍にしましょう、3年で3倍にしましょうというのが難しいビジネスであります。属人的な業種特性というようにここに書かせていただいておりますが、もう少し掘り下げるならば、そもそもの商品を在庫としてストックできません。小売業のように在庫としてストックできません。たまたま売れたらラッキーじゃないですけども、売り切りの商品になっていて、取り扱っている商品そのものも品質が均一ではありません。バリューアップできているものできてないもの、立地が良いもの悪いもの、そしてその商品を提供する人です。接客のトークなどもなかなか均一には難しい背景があります。それからコストに目を移すのであれば、季節や曜日、時間帯によって需要が変動します。繁忙期と閑散期が一番わかりやすい例ですけれども、繁忙期は人が足りない、でも閑散期は人が余っているわけです。ところが年間を通じて広告費、あるいは人件費のコストは、一定、横ばいですから、繁忙期は損益分岐点が大きく超えて利益が出ているのですが、閑散期になると損益分岐点ギリギリになる、月によっては割ってしまうなどそういったお悩みを聞くことがあります。今コストの話をしましたけれども、合わせて膨らむ人件費のお話です。今は時給が上がってきていまして、パートの社員が増える事態につながっています。どういうことかと言うと、時給が増えるものですから扶養の範囲内に収めようとすると、出勤日数を削らざるを得なくて、週2日や3日で勤務するパートさんが5人、6人、7人になっていく状況になっています。一方で、正社員さんはどうかというと求人をかけても応募が来ないということで今回このようなお悩みでご参加いただいている会社様も多いかと思うのですが、そもそも募集をかけても応募が来ないということです。
一方で、これを社内に目を向けていきますと、社員さんが定着しなかったり、あるいは長年勤めていただいているベテラン社員さんは万年店長、万年課長だったり、その様子を見ている若手が「頑張りますけど、リーダーにはなりたくありません」「責任は負いたくありません」などの言葉が出てきてしまったり、これらが今の賃貸不動産会社の実態だと思います。
さらにどこまで追加するのかという話ですけれども、2021年6月に賃貸住宅管理業法が施行された影響でコンプライアンスが厳格化されています。管理業法、財産分離や定期報告の話がありますが、できていないと業務停止の行政罰や罰金、そこから波及する社会罰にまでオーナー様の中で話が広がって、「あそこの管理会社はどうもちゃんとしていないらしい」という風評被害にまで行き着いてしまいます。実際に船井総研がお手伝いしている会社様でも今年の1月から3月に国土交通省の関係者様の直接的な現地調査がありました。このような背景、時流が様々ありまして、管理料、家賃の5%の数千円を稼ぐためのコストが増加している状況です。さらに時流も踏まえていきますと、残念ながら賃貸不動産ビジネスは衰退期の状況に突入しています。
賃貸管理ビジネスの現状―「衰退期」突入し、上位数社しか生き残れない
マーケティングの用語でビジネスのライフサイクルといった考え方がありまして、経営者の皆様はもちろんご存知かなと思います。導入期から始まって、成長期、成熟期、衰退期、安定期の流れのことです。その衰退期まで入っていますので、需要を供給が上回っている状況、ものが余っているような状況、空き家が山ほどある、市場の供給率がもう7割のエリアも出始めています。そうすると、今ある会社様の生き残りのレース展開になっていましてその生き残りに勝とうとすると、今度は入居者様のニーズも多様化していて、ペットを2匹買いたい、ネット無料が欲しい、宅配ボックスが欲しい、楽器を演奏したい、駐車場2台欲しいなど様々なニーズが増えていくわけです。物が余っている一方で、商品がニーズに追いつけていなくてお悩みの会社様が多い状況です。
衰退期に勝ち残る鍵は、既存のお客様をどれだけ維持できるかの1点なのですけれども、例えばもう安定期に入っているコンビニエンスストアを想像いただけるとわかりやすいかと思います。具体的には、安定的に入りますと上位トップ3ぐらいしか残らないと言われています。皆様の商圏内でも上位トップ3、良くてもトップ5までの不動産会社様しか残りません。コンビニで言えば、赤いところと緑のところと青いところでしょうか。この3社が市場を独占している状況だと思います。これらのコンビニも生き残りレースに差し掛かっていましたから、既存のお客様を維持するために何をやっているかと言いますと、例えば店頭で引き立てのコーヒーが飲める、ホットスナックの商品が充実していたり、プライベートブランドを強化したり、一度ご来店いただいたお客様に満足いただいてもう一度お越しいただくための工夫をして注力していたのが、コンビニだったのだと思います。加えて出店戦略などもされていたと思うのですが、最近でいくとなんとかペイやなんとかカードもある意味、既存顧客を維持するための取り組みです。
いずれにしても衰退から安定期に向けて、今いるお客様をどこまで維持できるか、お客様のライフタイムバリュー、顧客生涯価値などの言葉もありますが、取引期間をいかに長くして、取引回数をいかに増やして、欲を言えば1取引の単価をどこまで上げられるか、これが衰退期における勝ち残りの鍵になっています。
賃貸管理ビジネスの現状―賃貸管理会社の目指すべき姿
踏まえて、賃貸不動産会社の目指すべき姿を船井総研はこのように考えています。今回ご参加いただいている皆様も同じようなお考えなのではないでしょうか。地域密着、顧客密着のワンストップサービスを提供するための総合不動産会社を目指す、そのためにはシェアアップもさることながらライフタイムバリューを上げるような施策を進めていく、これが今後の賃貸不動産会社の目指すべき姿と考えております。
具体的には、こちらに1番、2番、3番と番号を振っていますけれども、まず初めに空室対策や客付けから入りながら、オーナー様の賃貸経営管理、例えば大規模修繕のタイミングや修繕費を作るための経営計画だったり、そこから蔓延した物件を売ってみる、オーナーさんがもっと投資したいということであれば購入いただいたり、あるいは新規の建築やスクラップアンドビルドでもいいです。そして、既存のオーナーさんに満足いただけたらその先の相続、二代目オーナーにつなげていく、このようなことが地域密着の不動産会社様が目指すべき姿だと思います。
そのためにやるべきことは二つしかありません。社員が育つ仕組みを取り入れること、それから売り上がる仕組みを取り入れること、至極当たり前のことを言うなという話かもしれませんが、衰退期に差し掛かって安定期に向かっていますから、ごくごく当たり前のことをしっかりやりきれるか、徹底できるかで差がつく時代になっています。ここを作りきれるか、作り込んでやり通す経営力があるかが衰退期の成長の分かれ目になっています。それこそコンビニを思い浮かべていただければわかると思いますが、コンビニエンスストアにしかないあっと驚く商品はほとんどないと思います。これからも出てこないと思います。あるいは同じく衰退期、安定期に向かっているアパレルの事業のユニクロを想像いただけると良いかなと思うのですが、あっと驚くお洋服は出てこないと思います。一昔前にフリースみたいな話はありましたが、そんな商品見たことも聞いたこともない、初めて聞いたお洋服はないのです。ただ、例えばユニクロさんのどの店舗に行っても、陳列がほぼ変わらないです。カラーバリエーションがわかるように上から下までびっしり詰め込むような陳列を実施されていますし、接客品質も大きく変わらないです。当たり前に決まったことを徹底的にやりきる、やりこむことで成長を果たしていらっしゃいますので、繰り返しになりますが、この1番と2番の、社員が育つ仕組みと売り上げる仕組みを取り入れてやりきる、ここが成長の分かれ目です。
ただし、会社の規模やタイミングに応じて、1番と2番の強化テーマを入れ替える必要はあります。そこで船井総研は、この入れ替えタイミングを間違えると会社の成長が止まってしまうということが様々な会社様とお付き合いをしてわかってきました。
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