日本の賃貸業界においては、外国人向けの賃貸市場に大きな注目が集まっています。その背景には、日本国内における在留外国人の顕著な増加があります。出入国在留管理庁のデータによれば、過去10年間で在留外国人の数は約1.5倍に増加し、322万人に達しています。この数値は、経済成長の促進、労働力不足の解消、そして税収の増加にも寄与しており、日本社会において外国人の存在がますます重要になっていることを示唆しています。

このような状況下、インバウンド需要の増加と同様に、日本に住む外国人が増加することは、宿泊市場だけでなく賃貸市場の需要をも拡大させる要因となります。しかしながら、現状では、多くの大家が外国人に部屋を貸すことに抵抗を感じており、国土交通省の調査によれば、約6割の大家が入居制限の有無についてのアンケートで外国人の入居を不可と回答しています。

外国人入居受け入れを行わない理由として上位に挙げられるのは、「不安がある」「今まで対応したことがない」というもので、この二つで約7割を占めています。実際にトラブルに遭遇したことが理由であるケースはわずか1.5％に過ぎないという実態があります。このことから、外国人に対する漠然とした不安や、対応ノウハウの不足が、外国人への賃貸を躊躇させる大きな要因となっていると考えられます。

また、日本独特の賃貸制度も、外国人にとっては理解しにくい点が多いようです。例えば、家具付き賃貸の普及率、敷金・礼金の制度、光熱費の扱いなど、日本の「当たり前」が海外ではそうではない場合があります。このような日本の賃貸制度に対する知識不足や誤解も、外国人が賃貸住宅を借りる際のハードルとなっています。

結果として、現状は「外国人だから」という理由で賃貸住宅を借りることが難しい状況にあります。在留外国人の数は増加の一途を辿っている一方で、彼らを受け入れる体制が十分に整っていないことが、外国人賃貸マーケットにおける大きな課題と言えるでしょう。

成長著しい外国人賃貸マーケットへの参入方法として、「外国人マンスリービジネス」という新たなビジネスモデルを提案します。

現状として、多くの大家が外国人の入居に拒否感を持っていることや、日本独特の賃貸制度が外国人にとって分かりにくいことが、外国人による賃貸住宅の利用を阻む大きなハードルとなっています。

このような現状を踏まえ、外国人が日本で賃貸住宅を借りる際に直面する3つの大きなハードルは、「保証人が必要であること」「イチから家具家電を準備する必要があること」「短期～長期間で滞在期間がバラバラであること」です。これらの「住みづらさ」を解決する手段として提案されているのが、「外国人向けマンスリービジネス」です。

外国人向けマンスリービジネスは、「来日したその日から、快適な生活をスタート！」「異国の地で安心な生活を。家具付きで快適なマンスリーマンション」をコンセプトに、外国人の「住みづらさ」を解消することを目指したビジネスモデルです。具体的には、保証人不要の賃貸住宅、家具家電設置済みの賃貸住宅、そして短期～長期間の滞在に対応できる賃貸住宅を提供することで、外国人のニーズに応えます。

外国人マンスリービジネスの具体的な立ち上げ方について解説します。

1.物件仕入

空室物件を賃料保証や成果報酬などの条件でサブリースにより仕入れます。留学生を受け入れている大学付近や、単身者向けの物件（1R～1LDK）がターゲットとなります。

2.商品化

仕入れた物件に、外国人が求める家具・家電を設置し、商品価値を高めます。例えば、良好な睡眠環境を提供するためのダブルベッドの推奨や、コインランドリーが近くにあれば洗濯機は不要です。

3.集客

WEBを中心とした集客戦略を展開します。多言語対応の決済完結型の自社ホームページを作成し、リスティング広告などを活用します。地方自治体や大学と連携し、外国人の住まい探しをサポートすることも有効です。

4.オペレーション

外国語対応可能なコールセンターを設け、接客業務を不要とします。入居ルールなどの事前説明やトラブル対応も、専門のコールセンターが行うことで、効率的な運営が可能になります。動画を用いた契約前のトラブル対応も有効であるとされています。

外国人マンスリービジネスの魅力は「旅館業・宿泊業」と「一般賃貸マーケット」の狭間に位置するビジネスである点です。外国人マンスリー事業は、旅館業や住宅宿泊事業（民泊）と比較して、資格取得の手間や費用がかからず、物件のハードルも低いというメリットがあります。また、宿泊・入居期間の上限規制も、旅館・民泊事業に比べて緩やかであり、柔軟な運営が可能です。

さらに、外国人マンスリービジネスの成功事例として、A社は、外国人向けの家具付き賃貸住宅を提供するサイトを運営し、2023年の年間売上は1.24億円、粗利は3,600万円を達成しています。従業員は1名でありながら、高い売上を上げているという事例は、このビジネスモデルの可能性を示唆しています。稼働率は年間平均で92.46%と高く、安定した収益を確保していることが分かります。1室あたりの平均単価は約2.3万円であり、121件の新規契約を獲得しています。

外国人向けマンスリービジネスは「ストック事業」であり、周辺事業へのシナジー効果も期待できるため、今後ますます増加する外国人の受け入れ体制を整える上で、将来性のあるビジネスです。周辺事業として、ホテルや旅館、民泊などの短期貸しへのシフト、コワーキングやシェアオフィスなどの時間・会員制サービスの展開、さらには不動産の売買や建築といった収益不動産事業への展開も視野に入れることができます。

日本における外国人人口の増加は、賃貸市場に新たなビジネスチャンスをもたらしています。しかしながら、外国人に対する大家の拒否感や、日本独特の賃貸制度といった課題も存在し、参入にあたっては独自のノウハウが求められます。

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