高齢者を取り巻く住まいの現状
まずは「本事業の現状とこれから」ということで、市場環境からお話をさせていただきます。今回ご参加してくださっている皆様はデイサービスや訪問介護事業をメインに行っておられますので、基礎的な部分を私からお伝えする必要はないかもしれませんが、ご自宅に住まわれている高齢者の方々が転居される場合は有料老人ホームがほとんどなわけですが、そのような状況下でも介護度が低い方や年金の範囲内で施設に入りたいためにご予算が低い方などの受け皿になれる施設は、皆様の商圏内にどれほどありますでしょうか。実際に私も老人ホーム紹介サービスという、高齢者様に老人ホームを紹介するというサービスのコンサルティングもしているのですが、このサービスはコロナが流行っていた時期から行っていたのですが、年金の範囲内、具体的には10万円や12万円で入りたいから探してくれないかというご相談は増えていますので、紹介業者も一生懸命探してくださるのですが、見つかる施設数は1つか2つでほとんど定員が埋まっています。やはり一般的に有料老人ホームは月額15万円以上で、入居一時金が最低でも20万円から30万円ほどかかってしまいますので、ご提示いただいた予算的に厳しいですし、介護施設としてはホテルコスト以外の具体的には介護報酬もしっかりととっていきたいので、介護度の低い方はお受入れしづらくなってしまいます。加えて低予算の方向けの施設はあるにはあるのですが、介護度が低い方が入れる施設は多くないです。背景には新築施設の建築コストがあります。建設コストとして2、3億はかかるため、銀行から2億円の融資を受けたとして、20年返済で金利が1.5%だと、返済と利息で月々換100万円ほどコストがかかってしまいますので、施設様としてはきちんと収支が取れる経営をしていかなければならないので、軽度の方や低予算の方々などを受け入れていただける施設は市場的にも不足している状況です。
このような状況下で行き場を失った高齢者の方々を受け入れる受け皿を整備する事業が空き家活用型施設事業だとご理解いただければと思います。活用できる物件に関しましては、スライド下部に他社様が展開されている物件例をいくつか挙げておりますが、築年数30年以上や駅から徒歩20分以上など一般のお客様からは敬遠されている物件を活用して有料老人ホームとして展開するわけです。加えて空き家を活用することで、新築施設の場合にかかっていた2、3億円の初期投資費用も抑えることができます。具体的には今回のゲスト講師である株式会社カイト様の改修費用で最も高い金額が2,500万円です。これを仮に銀行に2,000万円融資してもらうとして、返済期間を20年ではなく10年に設定したとしても月々の返済額は20万円なので、新築施設での月々収支と比べると8割ほど月々の収支が軽くなるので、そこに関しては入所者様に対しての価格帯の面で差別化をしていただきたいです。
具体的には、食事・介助・見守り付きで15万円以内で収まるような価格設定にしていただいた上で施設に入りたいけれども入れていない高齢者の方々を獲得していくようなビジネスモデルになります。
大まかなモデルとしてはお話したように、空室に悩む中古物件を我々が購入ないしはサブリースで物件を仕入れて集客していきます。そして、基本的に有料老人ホームではお食事や見守り、必要に応じた介護サービスを付加していきながら、自社が展開している事業を組み込んでいくといいと思います。具体的には、デイサービスを展開している会社様の場合は日中に自社のデイサービスに入っていただいて夜に戻ってきていただくなどのイメージです。
価格帯としては、家賃が4万円、管理費が1.5万、食費が3万6,000円で合計が9万1,000円です。ここに医療・介護の自己負担額や日用品費などが合わさっても高くて13万円から14万円に収まると思います。そして、家賃に関しては生活保護の方もご入居いただく場合は、エリアの住宅扶助で支払われる金額に抑えていただきたいです。
しかし、これだけ聞くと、ちゃんと収支が取れるのか不安に思われる方もいると思いますが、空き家を使うからこそ収支が成り立つのがこの事業の特徴です。
続いては、空き家活用型施設事業とそのほかの事業との違いをご説明させていただきます。こちら縦軸が介護度で、横軸が入居時の費用です。このように比較していただくと空き家活用型施設事業とほかの事業との差別化ポイントは価格帯ですので、価格でしっかりと差別化をしていただいて、どれぐらいの介護度の方を入居させていくかというところは会社様によって変わると思います。それこそ訪問看護を展開されている会社様であれば、ナーシングホームという看護師の方が24時間常駐して医療が必要な方を受け入れられる施設として展開されている会社様もありますので、ここに関しましてはサービスプランを臨機応変に組み替えていただいて展開していただきたいです。
ここまでは空き家活用型施設事業についてご説明させていただきましたが、これまでを踏まえた上でここからは市場を取り巻く数値についてお伝えをさせていただきます。今見ていただいているデータが有料老人ホームの定員数と入所者数です。数値としては、2008年がピークでその後は徐々に落ち着いてはいますが、すでに85%の方が入所されているので、我々が展開している施設は気運であると言われますが、そもそもこの施設は従来の施設とは集客層が全く異なるのでまだまだ参入の障壁は低いです。
続きましては、そのような状況下での生活保護を受給されている高齢者様の推移をみていきたいと思います。2000年から受給者数が急増していまして、現在は全国で約100万人の方が生活保護を受給されています。こちらの数値に関しましてもかなり増えております。高度経済成長期やバブルの時代には受給率は下がっていたのですが、バブルが弾けた後には受給者数が増えております。
ここまでの説明で一般の介護施設ではお受入れができない高齢者の方々がかなり増えているということがデータとしてもお判りいただけたと思いますが、そういった高齢者の方々が転居を考えられた理由としてはもちろん「介護が必要になったため」という理由もありますが、それだけが理由ではありません。現にこちらのスライドで最も多い意見は「独り暮らしが不安になったため」です。ご覧の通り必ずしも寝たきりで24時間介護が必要なわけではないけれども、自宅で一人きりで過ごすことは難しいという方も当然自宅から施設に移られるターゲットとして捉えられています。そのようにお一人で住居に住まわれている、いわゆる独居の高齢者も年々増えていて全国で600万人を超えています。
今まではターゲットとなる高齢者様のお話をさせていただきましたが、ここからはターゲットである高齢者様の受け皿となる空き家がどのような状況なのかについてご説明させていただきます。こちらのスライドは国交省と野村証券が推定で出したものですが、2033年には今ある全住所の三分の一が空き家になってしまうと言われています。
そして、行き場をなくした高齢者の方が増えていく一方で受け皿としての可能性を秘めている空き家物件が増えているのであれば高齢者の方々に空き家を提供し住んでいただければいいという考え方もあるのではないかと思いますが、こちらのグラフを見ていただくと、物件のオーナー様や不動産業者の方々の約6割が高齢者の方々のご入所に拒否感を持っておられます。理由としては孤独死問題や家賃滞納問題、認知症問題などがありますが、具体的には70歳を超えてくると取り合っていただけないことが多いです。
ここにミスマッチがあるわけですが、ビジネスというのは往々にしてニーズがなければ発生しませんし、そのニーズを捉え的確なサービスを提供しなければ、事業が大きな派生をすることはありません。それを踏まえて空き家活用型施設事業を考えていくと、行き場をなくした高齢者の方々と物件の空室に悩むオーナー様をしっかりとマッチングしていきながら、介護事業者様に関しましても今後高齢者の方々が増えてくる関係上、介護事業に参入してくるプレイヤーも増えてくるわけですが、そのような状況下ですでに介護事業を展開されている方々は他社との差別化をどのように行い、市場を生き残り続けられる体制を築いていくためにも利用者の獲得がキモになりますので、今後は「行き場のない高齢者」「空室に悩む物件オーナー」「利用者獲得に苦戦する介護事業者」の3点をしっかりと捉えて、アプローチしていけるのが空き家活用型施設事業になります。
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