ICTによる業務効率化には2つの視点がある
まず、はじめに業務効率化のお話をさせていただきます。ここで言う効率化には主に二つの視点があります。比較的分かりやすい効率化にスライド資料左側の時間の短縮が挙げられます。効率化という言葉を聞いて皆様の頭にすぐに浮かぶことだと思います。それから効率化の非常に重要な点として標準化が挙げられます。この二つが相まって、効率的な運営が可能になりますので、ICTを導入して業務の効率化を図られる法人様はこちらの二点を意識していただければと思います。
時間短縮の代表的なICT化の例は、タブレット端末やモバイル端末になります。この二つに介護ソフトを掛け合わせて活用することで、情報がデジタル化され、記録時間の短縮や転記の削減が見込まれますので、この二つが時間短縮における主な削減要素になります。
そして、標準化のICT活用による主な削減要素は情報共有ツール等の活用によって、判断を代行することで毎回の判断や調整によるロスが削減可能になります。こちらについてものちほどお話を進めていきたいと思います。
50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮事例―記録ソフト×タブレットの導入
まずは、スライド左側の時間短縮をICTを活用してどのように行っていくのかを事例に沿って具体的にご説明させていただきます。
今からお伝えする事例は、50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮の事例でございます。導入されたのは記録ソフトとタブレットになります。記録の電子化と言いますと、単に手書きでなくなるだけではありませんので、この事例を通してICTを最大限活用して記録時間を短縮していただければと思います。
まずは、記録ソフトとタブレットの導入背景からお話させていただきます。昨今ICT化が当然になりつつある中で、実際にタイムスタディを実施した結果、帳票記録や転記作業の多さが課題として挙げられたため、タブレット端末等を活用して記録業務の効率化図ろうとなったのが導入の背景になります。
当時のタブレット端末等を導入する上で解決しなければいけない課題として多かったのが、職員それぞれが持っている手書きのメモです。なぜかと言いますとメモから帳票への複数回の転記作業が発生していたからです。さらにはご家族の方へ作成している月報の作成が重なってしまい残業が発生していました。
それから、ICT化を進めたいが、現在の紙の帳票からタブレットに移行した際に抜けが発生するのではないかという不安がありなかなか思い切った判断に踏み切れないということが挙げられます。
そして、業務改善の目的はタブレットを導入することでの記録時間の短縮になります。先ほど残業が発生しているとお伝えしましたが、残業を無くすのが1番の目的になりますが、それと並行して介護サービスの質の向上を図ることも含まれています。
そして、業務改善の目標としては、タブレットを導入することで、転記時間や転記ミスを削減することとデータを一元管理することで、データの管理や抽出の時間を削減することが挙げられます。
業務改善の内容としては使用する帳票を整理し、転記が発生している帳票を抽出し、使用している帳票から不必要な帳票を抽出して、現在使用している帳票がタブレットに移行した場合はどこに入力するのかを整理することなども大事ですし、タブレットの運用方法に関して研修を行うことや記録業務や情報管理においてタブレットを活用していただくことも大事になります。PCでも入力できますが、タブレットの良さを知っていただくためにタブレットで固めております。
50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮事例―介護・看護職員の総記録時間と転記時間の変化
実際にICT化をフル活用して記録時間がどれほど短縮されたかですが、こちらの事例では、ある50床の特養様で1日大体10名から12名ほどの方が働いておられますが、1日あたりの記録時間が導入前のタイムスタディでは664分でしたが、492分短縮されています。1日当たりの職員の記録時間合計で約170分短縮されています。ですので、一人当たりに直すと10人で働いてれば1日17分の短縮になります。一人当たり17分は決して短くない時間の短縮だと思っています。
50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮事例―記録時間
そして、記録業務のところでは、転記と中央に書かせていただいていますが、それまで職員が個別に取ったメモの内容を帳票に書き写し、月報にまとめるためさらに転記をしていましたが、そこの時間を大幅に短縮できています。さらに介護ソフトをフル活用することで記録時間の大幅な短縮が進められています。スライド右側にAfterを記載させていただいていますが、持ち運びが可能なため即時入力することができ、記録の質や記録スピードの向上やメモから書き写す必要がないため職員のミスも激減しています。そして、タブレットの情報はクラウド上に保存されますので加工が容易なため事細かな転記の必要がなくなっています。
50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮事例―情報管理
それから、情報管理につきましては当然、紙であればまとめる作業が発生しますし、情報を見る際に必要な情報を抽出する作業が発生します。この業務をその都度行っていましたし、最悪のパターンとしてケアに必要な情報が見つからないことが頻繁に発生する状況でしたが、Afterはタブレット化することでさまざまな情報がタブレットの中に入ってきますので、情報を探しに行く必要がなくボタン一つで確認できるようになっていますので、入力だけではなく管理閲覧の無駄もなくなっています。
50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮事例―タブレット・記録ソフト機能を最大限活かす
そして、さまざまな現場で記録の状況を見させていただいていますが、紙を使用している現場につきましては、タブレット、記録ソフトを導入していただきたいです。タブレット、記録ソフトを既に導入されている法人様でもうまく活用しきれていないと感じることがありますので少しご紹介させていただきます。スライドに記載の法人様では全部活用できています。
活用しているものの一つ目は音声入力です。こちらについては音声入力が早い、遅いという問題ではなく、記録の電子化、デジタル化をしていくにあたってICT化をしていくにあたって、タイピングに抵抗がある職員が非常に多いです。理由としましては時間がかかるので嫌だ、何となく苦手だということで抵抗が強いですが、タブレットの音声入力の研修さえしていただければ、ご高齢の方でも使えるようになります。実際にこの施設でICT化を進める際にも、現場主任と事前に打ち合わせをしていて、馴染めなさそうな職員さんについてお聞きしたところ60歳ほどの職員さんがいまして、その方は少し難しいかもしれないとお話をしていましたが、実際に音声入力を紹介した際には、その方が1番積極的に音声入力を使っておられました。その方はフリック入力やタイピングが苦手でしたが、音声入力できるなら全然構わないということだったので私の中に驚きとして残っています。
そして、タブレット用キーボードも必要です。PCではないので基本的にタブレットは持ち運びできますので、見守りをしながらの入力が可能ですので、その際に音声入力やフリック入力に時間がかかる方でPCが得意でタイピングに慣れている方についてはタブレットにはタブレット用キーボードを接続することが可能ですので、用意していただくのもポイントになります。
そして、欠かせないのが一括チェックです。こちらは基本的に介護ソフトに付属している機能の一つですので使えていない法人様は比較的少ないと思いますが、チェックは一括で行っていただければと思います。
それから、申し送りへの転送機能も大体のソフトには付属しているかと思いますが、タブレットの中の情報を別用紙に転記することはなしにしていただきたいです。
それから、記入と閲覧での軸の切り替えです。これは本当にICT化されたときのメリットだと思っていますが、記入する際には業務軸で記入したほうが職員さんは記入をしやすいです。例えば、排泄介助をされていれば、排泄介助をご利用者順に行いますので、排泄介助業務の軸で区切っている帳票は紙で言いますと排泄チェックリスト等があると思いますが、そのように業務軸で区切られているものが記入もしやすいです。
ただ、閲覧する場合、話は別になります。基本的には、利用者ごとに排泄の様子や食事の様子、体調の変化など総合的に情報を閲覧することが多いので、表示を利用者ごとに切り替えることができます。
それから看護師に多いのは、バイタルや排泄の様子などの一つの情報を1ヵ月や1週間遡って時系列で閲覧することもありますので、そのような場合にもICT化されていることによって、業務軸、利用者軸、時間軸などさまざまな軸で確認でき、情報の加工が容易になりますので、入力、記録だけではなく閲覧する際にも他職種で見たいように見れるようになります。
実際にこの施設様では紙の帳票に記録していたときから、看護師の方は自分が見たい情報を自分たちで引っ張ってきて加工していました。それこそ第2講座の安診ネットでもありましたが、入力して熱型表を手書きで作っているのが現状です。このようなものはICT化すれば時間軸に直せますので、転記をする必要がなくなります。それからフロアで記入するについてですが、タブレットはサイズ的に持ち運びができますので、必ずスタッフルームや職員室、ステーション等に籠って記録をしないでいただきたいです。
普段から見守りの人員が足りない施設様は比較的多いと思いますが、そういった際に籠ってしまうとその時間だけでも見守りの数が足りなくなりますので、そのような場合にタブレットがあれば見守りに人が避けないということを避けられると思いますので、冒頭に申し上げましたが、メリットは単純に手書きがなくなるだけではございませんので、このようなタブレットや記録ソフトに付属している機能を最大限に活かしていただきたいと思っております。
50名定員の特養でのICT化による記録時間短縮事例―現状の記録内容でどれが必要か整理する
それから、導入を進めていく際には現状の記録内容でどれが必要かを整理する必要があります。実際に自分たちが使っている帳票を一覧化していただいて、現在使用している帳票と転記が発生している帳票の整理をして、タブレット導入後は一体どうするのか等を整理しないと職員としては何が残って何が残らないのかという心配が生まれますので、それを確認する必要があります。確認する際のいい聞き方としましては、この帳票のこの項目は何のために記録をしているのか等は必ず質問していただきたいです。
記録する際には職員も時間をかけています。これは紙であってもタブレットであっても同じで、入力や記録には時間がかかりますし、時間は無制限ではありませんので、必要な情報を絞るために記録する目的のない帳票やあるいは記録する目的のない項目は不要ですので、そこを逐一確認をしていかなければ記録する帳票が増え続けてしまいます。
そして、目的は大きく分けて二つあります・・・