1.不確実性の高い時代にやるべきこと
では早速、本題に入ります。今の時代は不確実性の高い時代と言われていまして、これをVUCA(ブーカ)と呼んでおります。
VUCAとは何かといいますと、まずVですが、これは変動性や不安定さという意味になります。
Uは、不確実性や不確定さを示しています。Cは、複雑性ということで物事が非常に複雑になってきているということです。
Aは、曖昧性や不明確さを示しています。
つまり、なかなか見通しがつかず、予測するのが難しいといったような時代になってきています。そのような中で、計画を立てていくことや見通しを示すことが難しくなってきています。
これをどのようにしていくかということですが、予測が難しいため、とにかく変化に対応するしかないということです。
目の前で起こる変化に対して、素早く対応できるかどうか、ここが非常に重要になってくるということです。
したがって、変化に対応できるような組織や企業を作っていく必要があります。
そのような中で重要になってくるのが、今回のテーマでありますDXです。企業がデジタルトランスフォーメーションを行うことによって、リアルタイムの変化に対応できるような組織体を作っていこうということが重要です。
2.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
そこで、DXの定義とは何かということですが、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念だということです。
これは、スウェーデンの大学の教授が提唱した概念になります。
3.DXに含まれる3つの要素
これは、漠然とした曖昧な概念であるため、もう少し具体的に申しますと、船井総研では、これら3つの要素が入っているものをDXと呼んでいます。
一つ目が、業務の効率化ということでいわゆるデジタル化です。業務にデジタルを使って効率化していこうということです。
これはDXの大前提のような話だと思います。
二つ目が、新しい価値の創造ということで、テクノロジーを使って新しい価値を創造していこうということです。
CXの向上とも書いていますが、カスタマーエクスペリエンスという言葉ですが、いわゆる顧客体験です。テクノロジーを使って、お客様の体験をより良いものにしていくということです。
それによって満足度を上げたり、新しい価値を生み出していくということが二つ目のポイントになります。
三つ目は、業績の向上ということで、テクノロジーをいかにうまく使ったとしても、業績が上がらなければ意味がないため、しっかりと業績を上げようということです。
特に、船井総研では、人時生産性ということを注目していまして、1人あたりの1時間の粗利と考えていただいていいかと思いますが、いかに少ない労働時間で最大の粗利を稼ぐかということをテーマにしております。
この三つが含まれてDXと呼べるのではないかということで、①だけでは、単なるでデジタル化ですし、②③があって、はじめてDXと呼べるのではないかと考えております。
4.デジタル化を阻む4つの壁
デジタル化を進めていくうえでさまざまな壁があると感じております。いろいろなデジタル化の相談がきていますが、大きく分けて四つの壁があると感じています。
一つ目ですが、全体最適の視点で相談できる人がいないということです。
皆さんの会社でも顧客管理システムや会計システムなど入っているかと思いますが、それぞれ得意なベンダーがいらっしゃって、そのような方にお手伝いいただきながら導入しているかと思います。
ベンダーの得意分野はきちんとサポートしてくれますが、会計のベンダーが顧客管理できるかといえば別の話になります。
会社全体の面倒をみてくれる人というのはなかなか存在しなくて、一つの問題になってしまっていると思います。
それ故に、②に続きますが、システムやデータがバラバラになって連携していない状態になるということです。
このような状態になるとどういうことが起こるのかといいますと、こちらのシステムにも入力しないといけないけど、こちらにも入力しなければいけないという二重入力、もしくは三重入力の状態が発生します。
これは、非常に非効率ですし、避けたいことです。
③は、デジタル化を推進する中心人物がいないということです。デジタルを推進するということは、もちろんデジタルにも詳しくて業務のことも理解していなければいけませんが、そのような人はなかなか中堅・中小企業にはいないです。これも課題の一つとなっています。
④は、目的が曖昧なまま進めてしまい、うまくいかないということです。そのため、しっかり目的を設定しようということです。このような四つの課題をクリアしていく必要があると考えています。
5.デジタル化の目的
デジタル化の目的は会社によって違うものだとは思いますが、少なくともこの三つはぜひ意識しておいてほしいことです。
一つ目が、人時生産性の向上ということで、1人あたりの1時間の粗利ということで、これを式にして、売上総利益を総労働時間で割りますと、出てくる数字になります。
普通の会社で目安が約3,000円になります。生産性の高い会社ですと、約5,000円です。一度、皆さん、計算して出してみていただきたいです。つまり、これは何を示しているかといいますと、いかに少ない労働時間で最大の粗利を稼ぐかということです。
この数字が上がっていきますと、やはり給料も上げることができますし、いろいろな教育やデジタルの投資などそういう点にもまわしていけるため、この数字をしっかり上げていこうというのが目的の一つです。
続いて②ですが、今回のテーマでもありますリアルタイム経営ということです。
即時業績管理と書いていますが、つまり「今」の経営状況をお手元のスマホで一目で分かるような状況にしていこうということです。
③の目的ですが、これは②が達成できるとできるようになりますが、データドリブン経営ということです。
ドリブンというのは、駆使するという意味であり、データを駆使した経営ということです。勘と経験も大事ですが、それだけではなく、データに基づいてしっかり意思決定を行うことをやっていこうということです。この三つを目的に見据えておきたいところです。
6.デジタル化の設計図(DX ジャーニーマップ)
そこで、船井総研はどのようなお手伝いをしているかといいますと、われわれはDXジャーニーマップと呼んでいますが、まず、デジタル化の設計図を作ろうということです。
家を建てるときも設計図を描くと思いますが、デジタルも複雑なため、設計図作りをしてから取り組もうということです。
ちなみにこれは土地家屋調査士という業種のDXジャーニーのサンプルです。
どのようなことが書かれているのかといいますと、一番上にKGIとありますが、Key Goal Indicatorといいまして、目的やゴールのことです。ここに人時生産性が入ったりします。その下が、プロセスですが、いわゆる会社の業務プロセスが入ってくるということです。土地家屋調査士の場合ですと、自宅の測量依頼があって、事前調査をして、現地測量をして、作図して、お客さんと打ち合わせをし、立会いをして、書類作って押印、登記、申請、成果物を作り、納品、請求、そして行政管理という一連の流れを整理しています。
その下にKPIとありますが、いわゆる重要なプロセス指標です。各プロセスで押さえとかないといけないような指標があると思いますが、それをピックアップしています。
そして、リアルタイム経営で重要なことは、KPIをリアルタイムに把握できるようにしておくということです。つまり、KPIは業績につながる予兆みたいなものです。例えば、健康診断もそうだと思いますが、数値が出て、良し悪しの結果で健康状態が把握できると同じように、KPIを見て会社の業績が把握できるという重要なポイントになります。
四番目には、デジタルツールということで、社内にはいろいろなデジタルツールがあります。どのようなツールがあり、どのようなプロセスのときにどれを使い、どのように連携させていくか、これをしっかりと整理しないといけません。例えば、ツール同士が重なったり、連携されていないとなると、非効率だからです。
最後、新たなCXと書いていますが、カスタマーエクスペリエンスです。デジタル化するということは、業務を効率化するだけではなく、お客様により良い体験をしてもらうということで、そのような視点を入れていこうということです。このように、最初にデジタル化の設計図を作ることがポイントになります。これを業種ごとに作っていきます。
こちらは、注文住宅会社向けのDXジャーニーマップです。
こちらは、製造業向けのDXジャーニーマップです。
このように業種によっては、それぞれ業種プロセスもKPIなども違いますし、業種に応じて作成するというかたちになります。
改めて、DXジャーニーとは何かといいますと、業務プロセスに沿って、導入すべきデジタルツールと追うべきKPIを整理したものであり、われわれはデジタル化の設計図と呼んでいます。まずこれが必要になってくると思っています。
DXジャーニー作成の注意点ですが、全体最適の視点で設計するということです。全ての業務プロセスを一気通貫で俯瞰してみられるようなかたちにしようということです。あとは、KPIを改善すれば、目的達成であるKGIにつながるような設計をしていく必要があると考えています。
図に表すとこのようになります。一番上に実現したいゴールや目的があって、そしてプロセスがあって、そして業務プロセスごとに把握しておくべきKPIがそれぞれ何個かあり、そして業務プロセスごとにどのようなデジタルツールが入っていて、線でつながっているのは連携しているという意味ですが、こちらが理想であるため、そういったものを全てしっかり整理しておくべきことです。
そして、最後は、デジタル化することで、どのような新しい顧客体験を提供するかということです。このようにまとめたものがDXジャーニーマップとなります。
6.デジタル化の設計図(システム連携図)
次に、このようなシステム連携図を作っていきます。
先ほどは、デジタルツール同士が連携するということでしたが、それをさらに詳しく表したものが、こちらです。今どのようなシステムが入っていて、どのようなツールで、どのような手段で連携させたのかが分かる図です。全てではなくても必要なものだけ連携させていくことです。
緑色でAPI、オレンジ色でRPA、紫色では機能と書いていますが、これはどのような手段でシステム同士をつなげたのかを表しています。そして、真ん中に、Googleデータポータルと書いていまして、いわゆるBIツールでして、Business intelligenceというのですが、データの可視化ツールです。
必要なデータは…