■100億企業化に求められるDX・AXの要件とは?
今、国の施策もあり「100億企業化」を目指す会社が増えています。その中で最近増えている経営相談のテーマが「100億企業化を実現する為のDX・AX戦略」について、です。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)というテーマは、ここ5~6年ほど語られているテーマですから、本コラムをお読みの皆様も認識はされていると思います。
※DXとは:デジタルを活用してCX(顧客体験)を変革し、高収益企業を目指す変革のこと。
それに対してAX(AI・トランスフォーメーション)とは、“AIを活用して自社のビジネスプロセス(=仕事の進め方)やビジネスモデル(=利益を生み出す仕組み)そのものを見直す変革”のことです。クロードやChatGPTあるいはジェミニといった生成AIが驚異的な発展を遂げた今、あらゆる企業にとってDXだけでなくAXの実行も、絶対に必要な経営テーマであるといえます。
では、「100億企業化」を目指すためのDX・AXとは、どの様な姿なのでしょうか?
それは次の10項目の要件を満たすことが求められます。
<「100億企業化」に求められるDX・AXの要件>
要件1)20億×5事業に対応するERP
要件2)全社横串の統合顧客基盤(CRM)
要件3)全社事業情報データドリブン環境(KPI把握)
要件4)タレントマネジメントシステム(HRシステム)
要件5)最適な顧客接点とニーズ把握基盤(MA・ソリューションサイト)
要件6)フロントオフィスのデータ管理(SFA・見積書管理)
要件7)拡張可能なワークフロー
要件8)生成AI・AIエージェント活用を前提としたデータ基盤
要件9)M&A(グループイン)や拠点増大(グローバル含む)に耐える拡張性の高いシステム
要件10)IPO・グローバルにも耐えるセキュリティ・コンプライアンス対応のシステム
それぞれの項目について、簡単にわかりやすく解説したいと思います。
■要件1)20億×5事業に対応するERP
年商100億円を達成するためには、いくつかの「事業」が必要です。
例えば、年商20億円前後の事業が5つあれば、100億企業化を実現することができます。
あるいは「年商10億円×10の事業」かもしれません。
いずれにせよ、100億企業化の為には複数事業が必要であり、ERPも複数事業に対応するシステムが必要になります。ここでERPとは“エンタープライズ・リソース・プランニング”という意味ですが、要は「販売管理システム」のことです(正確には“販売管理システム・生産管理システム・人事・会計といったミドルオフィス・バックオフィスを網羅したパッケージのことをERPといいます”)。
販売管理システムは、“受注”した後の“手配(社内・社外)”“請求”“債権管理”“在庫管理”等を行います。いわば業務の中枢といえますが、多くの場合販売管理システムは「パッケージ」です。
ところが中小・中堅企業の多くは“ニッチ”な事業を手がけているケースが多く、この「パッケージ」が適用されないケースが大半です。
ましてや5~10の事業を同時に手掛けるとなると、なかなか自社に合ったERP(パッケージ/販売管理システム)が見当たらないのは当然のことであり、カスタマイズ性の高いローコード・ノーコードといわれる、システムの活用が前提となってきます。
■要件2)全社横串の統合顧客基盤(CRM)
さらに事業が5~10と分かれてくると、これら全社の事業に横串を通す“統合顧客基盤(CRM:カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)”が必ず必要になってきます。
なぜなら複数事業を行っているということは、多くの場合事業間にシナジー効果があるはずで、例えば
・住宅事業
・リフォーム事業
・不動産事業
・その他事業
を手がけている会社であれば、「家を建ててくれたお客様にはリフォームを提案」「そろそろ買い替えを検討しているお客様には不動産を提案」といったアップセル・クロスセル(=既存のお客様に別の商品・サービスを提案すること)が求められるはずです。
このクロスセル・アップセルを効果的に行うためには、全社統合のCRMが必須になるのです。
■要件3)全社事業情報データドリブン環境(KPI把握)
特に複数事業を行っていると、多くの場合、各事業で使用している販売管理システムが異なるため、各事業を統合した数値管理(KPI把握)が困難です。
どの事業がどれくらい儲かっているのか・あるいは儲かっていないのか、儲かっている(儲かっていない)要因が何なのか、リアルタイムで把握ができ、かつ経営判断に結びつけるデータ管理(データドリブン:データに基づく意思決定)が必須になります。
■要件4)タレントマネジメントシステム(HRシステム)
100億企業化を目指すということは、社員数も100~300名を超える規模になります。
人事の世界でいわれるスパン・オブ・コントロール(管理の限界)によると、組織論の基本は次の様なことです。
<スパン・オブ・コントロール>
・10人を超えたら1人の監督者では管理できない。
・30人を超えたら、制度無しに納得性の高い評価ができない。
・100人を超えたら、社員の顔と名前が一致しないケースがでてくる。
従って、100億企業化を目指す会社には「タレントマネジメントシステム」が必要になります。
タレントマネジメントシステムとは、「誰が」「どんなスキル」「経歴」を有しており、「どの組織・部門」に所属しているのか、また評価の為の目標設定や、評価そのものを行うプラットフォーム(システム)のことを指します(あるいはHRシステムといいます)。
■要件5)最適な顧客接点とニーズ把握基盤(MA・ソリューションサイト)
顧客接点の代表的なものとして、小売業であれば「店舗」であり、セールスの会社であれば「営業担当者」そのものが顧客接点となります。
こうしたリアルな顧客接点のことを「ハイタッチ」といいますが、現在のDXあるいはAX時代に求められるのはデジタルな顧客接点、いうならば「テックタッチ」です。
テックタッチの代表例として、
・メールマガジン(メール)
・ライン
・ソリューションサイト(オウンドメディア)
・アプリ
・その他
を挙げることができます。
こうしたデジタルな顧客接点を持つことにより、既存顧客あるいは見込み客(=ハウスリスト)に対して効果的かつ継続的な情報発信が行えるだけでなく、MA(マーケティング・オートメーション)を駆使して、顧客ニーズを事前に把握することも可能になります。
その結果、営業の生産性が劇的に向上することになります。
■要件6)フロントオフィスのデータ管理(SFA・見積書管理)
多くの会社が「受注後」の管理はできています。なぜなら多くの会社には前述の販売管理システムは最低限導入されており、「受注後」はシステムへの入力が必ずなされるからです。
ところが、大半の会社が「受注前」の管理がほとんど行えていません。
「受注前」の管理とは、
・日報(行動管理)
・商談管理
・見積書の作成・管理
・その他
といった管理のことで、多くの会社がエクセルでの管理になっています。
特に見積書の作成をエクセルで行うと、受注できた案件は自社の販売管理システムにその後入力されるのでデータとして記録が残りますが、失注した情報はデータとして記録に残りません。
商談のうち7割ほどは失注しているはずで、こうした“失注した”見積りデータも、しっかりと情報として残して分析を行っていく必要があります。
また、こうした見積りデータを蓄積していくことが、今後のAI活用の貴重なデータソースともなるのです。
■要件7)拡張可能なワークフロー
ワークフローというのは、様々な承認フローや、メインのビジネスプロセスから外れたところにある様々な付随業務のことを指します。
具体的には下記の様なことです。
<ワークフローの例>
・見積書の押印承認
・与信管理
・旅費精算
・営業車の管理
・会議室の予約管理
・社員の弁当の予約管理
・備品の在庫管理
・その他
こうしたワークフローを構築するための専門ソフトは世の中に多数あります。ポイントは拡大する自社の事業を前提に、拡張性が高いシステムであること。またワークフローの作成・管理等が統合的に行えることに加え、外部からの不正アクセス等に耐えうるセキュアなシステムであること。
また自社の基幹システムや統合顧客管理システム(CRM)等と、必要に応じて連携ができるシステム選定を行う必要があります。
■要件8)生成AI・AIエージェント活用を前提としたデータ基盤
生成AIやAIエージェントなど、AI活用を行うためにはデータ基盤が必要です。
ここで押さえておくべきキーワードはMCPという概念です。
MCPとはモーダル・コンテクスト・プロトコルの略語で、API(アプリケーション・プロトコル・インターフェース)に近い概念です。APIはソフトウェア同士を連携させるためのコンセントの様なものです。APIというポート(=出入口)があることにより、APIを持つソフトウェア同士を連携させることができます。
MCPは、データソースとAI(生成AI)を連携させるためのポートのことです。つまりMCPに対応したデータソースにデータを蓄積することによって、AIを正しく駆動させることができるのです。
MCPにきちんと対応したCRMやSFAのデータを生成AIに接続すると、その生成AIは「AI営業部長」の様な働きをします。同様にMCPにきちんと対応した人事評価システムのデータに生成AIをつなげば、その生成AIは「AI人事部長」の様な働きをするのです。
なお、前述の様にMCPに対応したAIを駆動させることができるデータソースのことをラグといいます。
■要件9)M&A(グループイン)や拠点増大(グローバル含む)に耐える拡張性の高いシステム
100億企業化を考える上で、M&Aは欠かせない選択肢です。
同時に拠点を増大させていくことも選択肢であり、国内だけでなく海外を視野に入れていることもあるでしょう。
この時、自社システムがクラウドをベースとしたプラットフォームであれば、M&Aにより事業所が増えても容易に対応することができます。
また連携に強い統合顧客基盤(CRM)をつくっておけば、M&Aを行った先の事業所のシステムとすぐに連携を行い、CRMを統合することも可能になります。
さらに多言語対応や多国籍通貨に対応しているプラットフォームであれば、日本国内で使用しているシステムを、そのまま海外で使用することも可能になるのです。
■要件10)IPO・グローバルにも耐えるセキュリティ・コンプライアンス対応のシステム
IPO(株式公開)を視野に入れるのであれば、自社のシステムがITガバナンスに耐えうる、セキュアなシステムである必要があります。
またコンプライアンスの観点でいくと、欧州の個人情報保護規制(GDPR)や、米国カリフォルニア州個人情報保護規制、さらにはISO、SOC1といった各種認証規格にも対応していることが求められます。
実は、こうした10の要件を満たす数少ないシステム(プラットフォーム)の一つがZoho(ゾーホー)です。船井総合研究所は国内唯一(2026年10月現在)のZoho最上位ランクパートナーであるプレミアムパートナーであると同時に、800社を超えるZohoの導入実績があります。
Zohoの導入については、ぜひ、下記URLから詳細をご確認ください。
| 執筆者: 株式会社船井総合研究所 片山 和也 かたやま かずや |
FDE(Forward Deployed Engineer:フォワード・デプロイド・エンジニア)とは何か?
顧客データを「資産」に変え事業を加速させる2026年のCRM活用法
