当時の課題
港町の空洞化
かつて三津浜地区は、松山市の海の玄関口として多くの人や物が行き交う、地域のにぎわいの中心地でした。しかし、人の流れの変化とともに港の役割は次第に変わり、町のにぎわいも徐々に薄れていく傾向にありました。
特に大きな課題として表れていたのが、商店街の空洞化でした。
シャッターが閉まったままの店舗が増え、空き家や空き店舗が目立つようになり、「昔は栄えていた」という記憶があるからこそ、現状との落差がより大きく感じられる状況にありました。
もちろん地域・自治体側も手をこまねいていたわけではなく、三津浜地区では地域のさまざまな団体が立ち上がり、それぞれに活性化へ向けた取り組みを続けていました。
それでも確かに前進している感覚はありながら、決定打になる成果にはあと一歩というところでした。
すなわち課題は、地域への思いが不足していたことではなく、その思いをどう成果に結びつけるかという戦略面にあったと言えるでしょう。地域資源は確かにある。しかしそれをどのように使い、伝え、人を呼び込むか。その道筋が必要な局面に差しかかっていました。
依頼の理由
外部リソースを活用して突破口を探す
そうした中で、松山市が次の一手として選んだのが、外部の知見を取り入れることでした。
地域の中で議論を重ね、活動も続けてきたからこそ、内部だけでは見えにくい視点や打ち手を具体化するための整理が必要で、そこで活用されたのが、地域再生マネージャー事業の短期診断です。
外部の視点で地域の資源を見直し、「何から着手すれば地域に変化が起きるのか」を整理することが、この時点で求められていた役割だったといえます。
特に担当としては、その短期診断の中でご提案いただいた『食のブランド化』が、三津浜地区の活性化を進める最初のきっかけであると捉えています。
地域活性化というテーマは論点が広がりやすく、総花的な議論になりがちですが、三津浜地区には古くから親しまれてきた食文化があり、その象徴として三津浜焼きという分かりやすい資源がありました。
これを“まず最初の突破口”に据える提案は、自治体側にとっても地域側にとっても納得しやすいものでした。
実際、現在の松山市の公式サイトでも、三津浜地区では「古民家」「食」「港」「人」といった地域資源を活用しながら新たなにぎわい創出に取り組んできたことが紹介されています。
中でも「食」は、地元の方にも来訪者にも伝わりやすく、地域の個性を最も体感しやすいテーマです。
支援依頼の背景には抽象的なまちづくり論ではなく、地域資源を活用して戦略化したいという実務的な思いがあったと整理できます。
船井総研の選定理由
食から始める段階戦略
支援先を選ぶ上で評価した点は、単純に「地域を盛り上げましょう」という抽象論ではなく、着手順序まで含めて現実的に整理された提案だったことです。
特に、総花的なアプローチではなく、まずは『食のブランド化』に焦点を絞って着手し、そこから『空き店舗対策』、最終的に『海洋資源の活用』へと段階的に広げていくフェーズ分けた提案が、具体的で説得力がありました。
自治体や地域団体が動くには限られた人員や予算の中で、優先順位をつけて合意形成していく必要があります。その意味で何を最初の一歩にするかを明確に示した提案は、地域にとって実行しやすい計画でもありました。
そして、今、三津浜焼きは後年、文化庁の「100年フード」に認定されるなど、地域の食文化として広く認知される存在へと成長しています。
地域資源を新しく“つくる”のではなく、すでにある価値を見出し直し伝わる形にする。
そこにこの提案の本質がありました。
支援内容
三津浜焼きが開いた道
特に印象に残っている取り組みとして挙げられるのが、三津浜焼きのブランド化プロセスです。
三津浜地区の活性化を進めるにあたり、地域に根付いていた食文化を見直し、三津浜焼きを地域の象徴として外部に発信できる形へ整えていったことが、大きな転機になりました。
具体的には三津浜焼きの定義づけを行ったうえで、ロゴやのぼり、ポスターなどの広報ツールを整備し、地域内外に向けた情報発信の基盤を構築しました。
さらに、公式ホームページでの発信やスタンプラリーの実施などを通じて認知度向上を図り、その流れの中で日本初の「ご当地こなもんサミット」の開催へと展開していきました。
地域の参加者も、そこから発展した『ご当地こなもんサミット』の一連の取り組みが、最も象徴的で大きな成果として強く印象に残っていると思います。
初開催時には想定を上回る来場者が集まり、大きな反響を呼んだことから、三津浜焼きはご当地グルメの枠にとどまらず、地域の誇りや一体感を生み出す存在へと発展しました。
こうした一連の支援は、地域資源をわかりやすい価値として再編集し、にぎわい創出へ結びつけた象徴的な事例だったといえます。
プロジェクトの進め方の評価
現場伴走が生んだ推進力
今回の取り組みを振り返る中で高く評価できる点は、提案内容そのものだけではなく、プロジェクトの進め方に実務性と納得感があった点です。
地域活性化の取り組みは、方向性が正しくても、現場で実行されなければ成果にはつながりません。
特に自治体、地域団体、事業者、住民など、多様な関係者が関わる案件では、計画の完成度だけでなく、関係者が同じ方向を向ける進め方であるかどうかが重要になります。
その点、今回の支援は助言や分析の提示にとどまらず、現場に入り込みながら一緒に動く伴走型の支援として機能していたことに大きな価値がありました。
構想の提示にとどまらず、現場の実情に寄り添った支援をしていただけたことで、地域としてもスムーズに具体的なアクションへ踏み出すことができました。
また実行段階での支援姿勢についても、抽象的な提言にとどまらず、現場での立ち会いや結果の検証を経て、次回に向けた具体的な改善アクションまで整理するアプローチは、実務的かつ実効性の高い支援でした。
地域プロジェクトでは、次にどうつなげるかが極めて重要なポイントです。
イベントや施策の結果を踏まえ、何が成功し、何が課題で、どこを修正すべきかを整理し、関係者に共有するプロセスがあることで、施策が単発で終わらず、地域全体の学習資産として蓄積されていきます。
今回の支援がアイデア提供型ではなく、実行・検証・改善までを視野に入れた運営支援であったことがうかがえます。
三津浜焼き
外部視点の価値
説得力の補完
進め方の評価に加えて特に大事なポイントは、外部視点が入ることによって生まれる説得力でした。自治体が地域活性化を推進する場合、「内部の論理」や「従来の延長線上」で議論が進みやすくなる傾向があります。
そうした中で第三者が入ることは、地域の価値を外から見直し、優先順位を整理し、関係者に伝わる言葉へ置き換える役割を果たします。
自治体単独のアプローチでは浸透しにくい場面においても、外部専門家による客観的な知見が加わったことで、地域住民の皆様の捉え方や納得感に大きな変化が生まれたと実感しています。
さらに地域活性化のように明確な正解がなく複雑なテーマだからこそ、外部の客観的な視点を交えて議論する意義を強く実感しています。内部だけでは見落としがちな課題や可能性を洗い出し、優先順位を整理できたことは、非常に大きな成果となりました。
全国の自治体の担当者様へのメッセージ
最初の一歩は相談から
地域にはそれぞれ固有の資源がありますが、それをどう生かすかは整理の仕方次第で大きく変わります。まずは何を地域の核に据えるのかを明確にし、小さくても成果の見える形で動き始めることが大切だと思います。
地域活性化を進める際に、最初から大きなテーマを広く扱いすぎず、まずは地域の強みを見極めたうえで、着手しやすいテーマに絞り込むことが重要だと感じています。
実際に三津浜地区でも、食文化という切り口から取り組みを始めたことで、地域内の共通認識をつくりやすくなり、その後の展開にもつなげやすくなりました。
自治体だけで完結しようとするのではなく、地域の実働メンバーと実行可能な形に落とし込むことが必要であり、それを実行する際に外部の力を借りることも選択肢の一つだと考えます。
ご相談の流れ
- 以下の流れにて、まずはお気軽にお問い合わせください。
貴社からのお問合せ
コンサルタントからご連絡
※目安1~3営業日以内無料相談
※45分~1時間程度