はじめに:コンタクトセンター歴史的転換期における経営層の責務
近年、生成AIをはじめとするテクノロジーの進化は目覚ましく、コンタクトセンターを巡る環境は激変しています。これまでの「自動化による効率化」を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)のフェーズから、新たなテクノロジーを本格的にオペレーションへ組み込む「実装・拡大フェーズ」へと移行しつつあります。
こうした歴史的な転換期において、コンタクトセンターのグローバルマネジメントモデルである「COPC規格」が約5年ぶりに大刷新され、最新規格『COPC Release 8.0』が発表されました。本規格は、これからのAI時代において企業がどのように顧客接点を管理し、価値を最大化すべきかを示す世界最高峰の基準書です。
本解説では、最新のCOPC Release 8.0の思想に基づき、これからのコンタクトセンターが目指すべき次世代の顧客体験『VX(Value Transformation:バリュー・トランスフォーメーション)』の本質と、経営層・管理者層が今取り組むべき組織変革について解説します。
1. DX、CXのその先へ:提供価値を根底から変革する「VX」
これまでコンタクトセンター業界では、IT・デジタル技術による効率化を図る「DX(Digital Transformation)」や、顧客中心のサービス設計を行う「CX(Customer Experience)」が叫ばれてきました。しかし、AI活用が前提となるこれからの時代に、経営層・管理層が目を向けるべきは、その先にある「VX(Value Transformation)」です。
VX(バリュー・トランスフォーメーション)とは
企業や組織が提供する「価値」そのものを根本から刷新し、新たな顧客体験やビジネスモデルを創出すること。
単に「チャットボットを導入して呼量を削減した」「オペレーターの手間を減らした」という基盤・自動化の話(DX)にとどまらず、AI活用との融合によってコンタクトセンターが創出する「提供価値そのものを再定義」することこそがVXの核心であり、新しいCOPCの思想が目指すゴールでもあります。具体的には、以下に示す3つの進化が企業にもたらされます。
① 「VOC(顧客の声)」を「経営の資産」に変える組織へ
日々蓄積される顧客の生の声を単なる苦情処理で終わらせず、高度なAI活用によってリアルタイムに分析します。商品開発やサービス改善の具体策として、経営陣や他部門へ能動的に提案する「経営の羅針盤」へと拠点を変革します。
② 受動的なサポートから、能動的な「サクセス支援」へ
顧客からの問い合わせ(問題発生)を待つ受動的な対応から脱却します。データをもとに顧客のつまずきを先回りして解決する「プロアクティブ対応」を行い、LTV(顧客生涯価値)の最大化に貢献します。
③ファンを増やす「ブランドの体現者」への進化
あらゆる手続きがデジタルで完結する時代だからこそ、人と人が直接会話する「コンタクトセンター」は極めて貴重なリアル接点となります。マニュアル対応を超え、自ら企業の魅力を体現して熱心なファンを増やすブランディング拠点へと進化させます。
2. 新規格「COPC Release 8.0」が示す、AI前提のマネジメント
このVXを確実に起こすための実践的なフレームワークとして、新たにアップデートされたのが『COPC Release 8.0』です。
これまでのCOPC規格は、人間中心のオペレーションにおける品質や生産性の管理に強みを持っていましたが、今回のRelease 8.0からは「AI活用を前提としたセンターの設計・運用」が明確に組み込まれました。これからのセンターマネジメントは、従来の「Plan(計画)」「Design(設計)」「Manage(管理)」「Measure(測定)」のサイクルを、人間とAIが高度に融合した形に最適化していく必要があります。
顧客対応・非顧客対応におけるAIとヒトの融合
COPC Release 8.0の世界観では、業務をタスク単位で分解し、品質と効率を両立しつつ、各タスクに最適な「人間のリソース」と「AI能力」を配置します。
領域ごとの具体的な役割とAI・ヒトの融合プロセス
フロント(対顧客)
AIが「本人確認」や「属性変更」「資料請求」などの定型的な無人対応を完結。解決が難しい複雑な応対は「無人・有人振り分け」を経てオペレーターへと転送されます。有人対応中も、AIがリアルタイムで「FAQ表示」や「発話提案」「感情・リスク検知」を行い、人間を強力にサポートします。
バックヤード(非顧客対応)
応対後の「対話記録の整理」や「VOC要約・入力」といった事務作業支援、さらには通話ログからの「ナレッジ自動生成」、音声評価や感情分析を用いた「モニタリング」「育成(AIロープレ)」にいたるまで、生成AIが全面的に介入します。
このように、COPCが定義する新しいマネジメントは、AIを単なるツールとして部分最適するのではなく、組織全体のパフォーマンスを最大化するための補完関係として位置づけています。
3. マネジメント層が押さえるべき、AI時代の3つの本質
コンタクトセンターの担当役員やセンター長をはじめとするマネジメント層が、今後のグランドデザインを描く上で、COPC Release 8.0が提起する外せない「3つのポイント」があります。
① AIを「使う」から「共に働く」へ(Working with AI)
これまでのチャットボットは人間からの指示を待つツール(使う対象)でした。しかし現在は、AIが自らタスクを分解し、関係者への連絡やデータ処理を自律的に遂行する「AIエージェント」の自律化が進んでいます。
まるで組織の一員(同僚)のようにAI活用が組み込まれるため、ヒトの役割は「作業」から解放され、AIが提示した複数の選択肢から「判断と承認を行う役割」や、より「戦略・創造性に特化する役割」へとシフトしなければなりません。
② 人間中心のAIとガバナンス(Human-Centric AI & Governance)
技術が進化するからこそ、「信頼」と「倫理」が企業の競争優位性を左右します。AIのデータ出力における「バイアス排除」や「意思決定の透明性」を確保するためのルール整備(ガバナンス)が必要です。
また、AI活用の推進によって生まれた余剰時間を、従業員のエンゲージメント向上(EX向上)や、より付加価値の高い「顧客への提案型サポート」「イノベーション」に充てるという、人間中心の設計(Human-Centric)の方針が重視されます。これはCOPCが一貫して提唱してきた「人財の重要性」の高度な進化形と言えます。
③ 変化への適応力とリスキリング(Change Fitness & Reskilling)
テクノロジーの進化スピードが速すぎる現代においては、特定のシステム操作やスキルを教えるだけでは追いつきません。組織そのものに「変化し続ける能力(Change Fitness)」を根付かせることが最優先となります。
現場のスタッフには「AI活用をマネジメントする力」に加え、人ならではの「共感力」「批判的思考」「問題解決力」を身につけさせるリスキリングが求められます。業務プロセス自体も、単なる効率化ではなく「AIの介入を前提とした業務プロセス」へと根本から作り直すことが、COPC Release 8.0への準拠において主流となっています。
4. 経営層が今、決断すべきグランドデザイン
AI活用を前提とした価値変革(VX)をどう描き、どのような次世代CX(顧客体験)を提供するか――。
これこそが、AI時代にすべてのコンタクトセンター、そして経営陣に問われている本質です。
従来のコストセンターとしてのマネジメント指標から脱却し、企業価値を高めるプロフィットセンター、そしてブランディング拠点へと進化するために、グローバルスタンダードである「COPC Release 8.0」のフレームワークを軸とした、新たなグランドデザインの構築を今すぐ始めましょう。単なる現場の業務改善ではなく、経営戦略の柱としてこのCOPC規格を活用することは、激変する市場を勝ち抜くヒントや武器となるでしょう。
5. 最後に:変革を成功に導くためのサポート
船井総合研究所では最新のグローバル規格を学ぶことのできる研修だけでなく、コンタクトセンターにおける課題解決に向けた「万屋(よろずや)」として各種豊富なコンサルティングメニューをご用意しております。
最新版のグローバル規格「COPC Release 8.0」研修につきましては5月下旬よりお申し込みも開始いたしました。ぜひこの機会に、経営視点・管理者視点から最新のコンタクトセンターマネジメントを学び、実践する機会としてご活用ください。
最新版「COPC Release8.0」研修の詳細・お申し込みはこちら
最新の規格書ダウンロードはこちら
https://proseed.co.jp/category_documents/copc/
本件に関するお問い合わせはこちら
![]() | 執筆者: プロシード事業部 マネージング・ディレクター 野村 昇平 のむら しょうへい |

