建設業界における人手不足の実態―建設業を取り巻く環境について
まず、こちらは建設業を取り巻く環境ということで、業界にいらっしゃる皆様に関しましては釈迦に説法かと思いますが、改めて建設業の業況についてご確認いただければと思います。
建設業に関しましては、初めにコロナというところで大きなダメージがあったかと思います。いわゆる工期が伸びてしまった、本来あったはずの工事が延長になってしまった、もしくは案件が取り止めになってしまった、そういう形で仕事がなくなった、伸びたというような話もあったかと思います。ただ、これもアフターコロナという形で少しずつ戻ってきているところがあります。また、日本の中では公共事業や災害対策関係などは当然、国も力を入れているところですので、公共・インフラ関係は堅調に推移されていると言えます。
ただ、コロナ禍において、都市部と地方での動向はどうしても格差が生まれてきています。そして、一番大きい資材の高騰です。エネルギー高騰、資材高騰によって工事単価が徐々に減ってしまっているというところです。よくお聞きするのは、公共関係の工事で本来入札するはずもない大きな工事会社様が入札されていて、中堅である中小企業様はなかなか入札が取れないといったお話も聞いていて、受注低迷や利益率が下がっているといったお話も聞いております。ですので、この業況におきましては、独自の受注基盤をしっかりと構築する、公共であれば公共だけではなく民間で、民間の中でも下請けの仕事だけではなく自ら元請けとなって取るような、そういった受注基盤を作っていくことが当然求められるかと思います。ですので、対応力や技術力といったものがより求められる時代になってきているかと感じております。
続きましてポイント2に関しましては、働き方改革への対応ということです。建設業におきましては2024年までの猶予期間がありましたが、非常に迫っております。このように残業関連の対応をそろそろ本格的にしていかなければいけないということです。ただ、その中で対応に苦慮されているであろう4週8休の確保や工期の適正化に関しては非常に厳しいということも聞いております。その中で多くの企業様がいわゆるデジタル化、まずは業務の中でデジタルにできることは変えていこうといったところ、それに伴って生産性を上げていこうというDX、そういったところを取り組まれている方々もいらっしゃるかと思います。この働き方に関しましては労働環境の適正化を進めること、そしてデジタル化による生産性の向上を積極的に進めなければいけないということが、今の建設業に求められることになります。
ポイント3につきましては今回のセミナーのテーマでもありますが、人不足問題の解消、継続が必要かと思います。コロナ禍でも建設業の有効求人倍率は高いままです。これはなぜかを紐解いていくと、そもそも求人数や求職者の数というところはあまり変化がなかったのです。コロナ禍においてもやはり人が必要な会社様は多くいらっしゃったので求人は減らないし、逆に休職者の方々に関しましても、コロナに入った、コロナがだんだん明けてきたという状況を見ても、建設業に志望される方々や実際に就職される方々の数はあまり変化がなかったのです。そういうことから、コロナ禍でも建設業に関する求人の動きに大きな変化は見られなかったのです。その中で団塊や団塊ジュニア世代の方々は、2040年頃までを考えたら引退によってかなりの方々が離脱していく状況でございます。ですので、多くの企業様では技術の承継といったことに取り組まなければいけないのですが、そもそも教えたい新人がなかなかいないから困っているという話も伺っております。そういった若い建設人材の不足、そして仮に入ったとしても定着しないか育成が難しいなどの課題がありますので、この人不足問題に関しても企業のブランディングが重要です。ブランディングと言うのは簡単ですが、企業価値をどのように求職者に伝えられるかということ、そしてそこには人材の計画、人事の戦略そのものを今一度抜本的に見直す必要もあるのではないかということです。こういったことが建設業全般の企業様を取り巻く環境として挙げられます。
建設業界における人手不足の実態―建設業就業者の減少
より詳しく見ていきます。これも多くの方々がご存知かと思いますが、建設業の就業者の数です。ここに関してはずっと減少か横ばいということで、人が増えていない状態が継続しています。
建設業界における人手不足の実態―建設就業者の高齢化の進行
そして、その中で就業者の高齢化が徐々に進んでおりまして、全業種の高齢者の方々の数と建設業における高齢者の数というのは大きな差が開いています。このように真ん中の小さなグラフと外枠に書いている赤と青のグラフ、これがそれぞれ建設業か真ん中の全業種かという差が開いていますが、これだけ大きな差が開いております。これだけ高齢化が進行している状況は肌身でも感じていたと思われますが、データでもこのように出ております。
建設業界における人手不足の実態―建設業就業者、大量離脱の将来
さらに細かく年齢別で分けていきますとこのようになっております。60歳以上の技術者が全体の約4分の1を占めているというところです。ですので、この方々は当然10年以内に離脱されていく、従業員の4分の1が減っていくと考えると非常に恐ろしいです。
建設業界における人手不足の実態―有効求人倍率と求人広告数の上昇
皆様はそういった中で求人を出されているかと思いますが、求人の倍率と求人の件数との関係性を見ていただきますと、求人メディアは現在コロナが明けてきている状況も含めて非常にウハウハな状態です。求人メディアも軒並み最高益というように、一時期のある特定の業種や業界に関しましては求人をそもそも出さないことになりましたので、コロナ禍においては落ち目の部分もありましたが、今はまた徐々に増えてきています。例えば、ある大手求人検索エンジンでは、今年に入ってからこれまでの求人の掲載企業数が過去最高になったと聞いております。今はそれほどに求人、求職ということで求人広告が出ているということで、メディアの方々は非常に良い状態になっています。ただ、裏を返せば、求人が増えれば増えるほど、掲載している企業からすると人が採れないのではないかという問題があります。そもそも人口が増えていない状況、そして少子高齢化が進んでいる状況で働ける人間の数が減っているのに求人の数が増えていけば、自ずと採用できる可能性は徐々に減っていきます。ですので、この状況は継続して起こっているということを今一度ご確認いただきたいと思っております。
▼続きはこちらからダウンロードいただけます