経理業務の大転換期
実は今年、2022年が経理業務の大転換期を迎えているということで、経理業務を大きく変えていかないといけない元年になるのがまさにこの2022年なのです。
中小企業経理の実態
まず現状、中小企業の経理の実態がどのようになっているのかを確認したいと思います。
中小企業の経理の課題
まず一つ目は紙での請求書や領収書が多くて入力作業が大変になっていることです。あとは現金出納帳や売掛台帳といった帳票をまだまだ手書きで作成しています。部門別の損益を出したいがそこまで手が回っていない、顧客管理やレジ、給与計算、請求などの各システムは導入しているのですがバラバラになっていて会計と連携しておらず、二重入力、場合によっては三重入力が発生しているということが起きています。それから、拠点が増えると経理の人員を増やす必要があってコストが徐々にかかっていってしまいます。経理業務が属人化していて業務の分担、引き継ぎができない、こういった課題が中小企業の経理では起きていて、要はまだまだ紙中心のアナログで非効率な経理になっているというのが中小企業の経理の課題となっています。
このような現状で、やはりもっと効率化できるはず、ただどうしたらいいのか分からないというのが恐らく経営者の皆様のお悩みかと思います。
現状と目指すべき姿 経営目線
そこで現状と目指すべき姿について少し整理できればと思います。
まず経営者目線で見たときに、この経理というところでどういうことを考えないといけないかというと、五つになります。月次決算がいつ確定するのかということ、そして試算表の精度がどれほどなのかということ、損益のセグメントでどれほどの損益を出せているかということ、閲覧範囲でどの範囲の数字を見ることができるのかということ、そして間接人員にかかるコストがどうなっているのかということです。
多くの中小企業の現状はどのようになっているかというと、まず月次決算が確定するまで大体30日程度かかってしまいます。試算表の精度についてはあまり良くないということで、試算表を見ても実際にこの数字は本当に正しい数字なのかどうかが心配になってしまうというのが多くの企業の課題です。そして損益のセグメントで言うと、全社の損益しか見れません。閲覧しているのは誰かと言うと、主に社長だけかもしくは試算表を出す経理の方のみで、ほとんどの方はこの数字を見ることがありません。間接人員のコストについては、規模が拡大と共に増加してしまうというのが多くの中小企業の現状かと思います。
ここから目指すべき姿としてはどのような形かと言うと、月次決算についてはやはり5日で確定する形にします。更に、試算表の精度が良いので正しい数字がしっかり出てくるということです。損益のセグメントについてはやはり部門別や事業別、場合によっては商品別までしっかり見れるように目指していきたいです。そして閲覧範囲ですが、要はその社長だけが会社の数字を見るのではなく、部門長などもしっかり数字を見れるような組織を作っていくことが必要になってきます。そうすると間接人員のコストについては、規模が拡大していっても同じように増えていくのではない、増えないような形を作っていくというのがやはり経営目線として目指していくべき経理の形だということです。
現状と目指すべき姿 経理業務
それでは、このような目指すべき経理の姿を実現するためには経理業務をどのように変えていかないといけないのかというと、これを五つのポイントで整理しています。一つ目は記帳方法、二つ目が帳票の形式、三つ目が担当者、四つ目がシステム連携、そして五つ目が閲覧権限です。これが多くの中小企業の経理ではどのようになっているかというと、記帳方法についてはまず手入力です。帳票はどのようになっているかというと紙が多いです。担当者というのはどのようになっているかというと、属人化してしまっている、この人しかできないという状況です。そしてシステム連携はなくて、二重入力か場合によっては三重入力が発生してしまっています。そして閲覧権限ですが、この会計から出てくる資料やデータというのをどのように見れるのかというと、基本的には閲覧権限や範囲っていうのがなくて、ある意味全部見れるか全く見ないかというのはこの二択になってしまうというのが今の中小企業の経理の現状としてあります。
これを先ほど出した目指すべき姿に対して、経理としてはどういう姿を目指していかないといけないかというと、まず記帳方法については半自動入力です。全て完全自動ではなく半自動入力で効率化された形で記帳ができるということです。そして帳票の形式については紙ではなくデータ化されているような状況です。担当者については誰かに属人化してしまうのではなくて標準化されている、要は誰でもできる状態です。そしてシステムの連携についてはしっかりシステムが連携されていて、どこかに入力した情報をまたどこかに入力しないといけないので、見たら二重入力がないような状況というのが目指すべき姿です。そして閲覧権限についてはしっかり権限設定ができて、この人にはここまでのデータだけ見れるといった形でしっかりと権限設定できることで情報開示、見て欲しい人に見て欲しいデータを見てもらえるという環境を作ることがこれから目指すべき経理の形になります。
2022年~2023年で経理が大きく変わる
これらの現状と目指すべき姿と、ここのギャップをどう埋めていくのかというのが今後のポイントになるわけですが、そもそもなぜこのように経理を大きく変えていく必要があるかと言うと、冒頭で申し上げた通り2022年から2023年、今年と来年で経理が大きく変わっていきます。これはなぜかと言うと、要は法律の改正や新しい制度の導入が始まりますということで、一つ目は2022年1月に電子帳簿保存法というものが改正されています。そして二つ目は2023年10月にインボイス制度の導入がスタートします。これら二つの法改正と新制度の導入に対応できれば非常に効率的で生産性の高い経理バックオフィスが作れます。一方で、この二つにうまく対応できないと非常に非効率で生産性の悪いバックオフィスになっていってしまうということです。これらにしっかり対応するために紙中心から電子中心の経営スタイルに変えていきましょうというのが今年と来年でほぼ全ての経営者の皆様が取り組まないといけないことになります。
電子帳簿保存法の改正のポイント
この二つの改正と制度の導入ですが、簡単にポイントだけお伝えします。
まず、電子帳簿保存法の改正のポイントです。電子帳簿保存法とは何かと言うと、いわゆる紙での保存義務があるものを紙ではなくデータで保存してもいいですよと、そのための要件や保存の仕方というのを定めているのがこの電子帳簿保存法なのですが、これが2022年1月に改正されました。どのように改正されたかと言いますと、データ保存の仕方をそのまま資料や書類に応じて大きく三つの保存の仕方に分けています。
例えばこの仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳や貸借対照表、損益計算書、領収書に自ら発行した領収書、請求書、発注書など、これらの保存方法は電子帳簿保存という保存方法で定めています。あとは受け取った領収書、請求書、発注書とかはスキャナ保存です。あとは電子決済、メールデータ、EDI取引といった電子取引に係るデータ保存と、大きく三つの保存の仕方というのを定めていて、この電子帳簿保存法とスキャナ保存については今回の法律で非常に緩和されています。要はこれまで非常に使い勝手の悪かった保存の仕方がもっと簡単に、データで保存して紙を捨てられるように法改正されました。そのためこの二つについては緩和されているのですが、皆様が一番気を付けないといけないポイントとしてはこの電子取引に係るデータ保存です。ここが義務化されましたというのが今回の法律の改正のポイントです。要は電子取引に係るデータ保存の義務化への対応が必要になりましたよというのが今の皆様が一番考えないといけないところです。具体的に言うと、例えば紙やメールでPDFデータとして請求書が送られてきました、これを今までは紙に印刷して紙で保存していたというのがほとんどの企業が対応した方法だと思うのですが、これがNGになります。要は違法になってしまうというのが今回の法改正のポイントです。この2年の猶予期間というのが実は年末になってギリギリで出てきたので、とりあえず今年や来年については紙に印刷して保存してもまだ違法にはならないのですが、とはいえ2年以内には対応しないといけないというのが現状です。
電子取引の具体例
それではこの電子取引というのは具体例でどういうものがあるかというと、例えば先程申し上げた電子メールで送られた請求書や領収書、あとはインターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書などのデータです。もしくはホームページに表示される領収書や請求書のスクリーンショット、これを利用するようなものです。あとは電子請求書や電子領収書の授受に係るようなクラウドサービスを利用した場合です。いわゆる電子受発注というものを使ったサービス等がここにはまるということです。あとはクレジットカードの利用明細データや交通系ICカードによる支払いデータなどです。あとはEDIシステムだとか、あとはこのあたりのペーパーリスト化されたファックス機能を持つ複合機を利用した場合とか、あとDVD等の記録媒体を介して受領した場合です。こういったものが電子取引の具体例になります。ですので、このような取引が現状発生している方、経営者については対応を考えないといけないですし、現状このようなものがなくてもこれから間違いなく増えてきます。そのため、特に電子受発注とかは業界によっては徐々に増えていっていますので、これらへの対応というのはいずれの企業もやはり考えていかないといけないというのがこの電子帳簿保存法改正によって起こりましたということです。
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