新型コロナウイルス感染症の影響
まず一つ目のテーマです。内科クリニックの動向というところで、改めて現在も含めて世界的に大きな影響を及ぼしているこの新型コロナウイルスについて特に内科クリニックが全体的にどのような影響を受けたのかを振り返っていきたいなと思います。
私も辛い時期をお客様と一緒に乗り越えてまいりましたので、その中で得られた教訓だったり、これからのクリニックのあり方といったような全体像をお見せできればと考えております。
それで、只今映していますスライドは去年の内科クリニックの状況を患者様の年代別ごとにまとめたスライドになります。先生方もご承知の通り、大きく影響を受けたのは商品などを扱うファミリークリニックや高齢者が多いクリニックがコロナ禍の影響を受けました。疾患別で見ますと、去年の冬が顕著かなと思いますけれども、急性疾患の受診機会が多くなりました。
一方で減少幅が少なかったのが通院治療の重要性を理解されている生活習慣病の成人の層、あと一部処方箋期間の間隔を延ばしてほしいというニーズもあったのかなと思いますけれどもご自身の病状だったり合併症を早期発見することの大切さであったり、あるいは薬を飲み続けることに対する副作用のリスク等々をある程度理解されている大半の患者様が残ったかなと思いますし、減少幅が小さかったかなというのが特徴でございます。
ここからは余談にはなりますが、成人層の健康意識の拡大がこのコロナ禍で高まっております。そのため、自費領域の需要が拡大したという印象があります。一方で高齢者は緊急事態宣言の外出日会が顕著で、外出は減少いたしました。ただ、高齢者はクリニックは行けないのですが、医療は受けないといけないません。したがって、在宅医療の需要が増えたかなというのがこのコロナ禍の印象でございます。
こうした影響というのはコロナ禍の今だけの話ではなくて、本当にこの後もっと比較的に長い時間が経っていくと考えております。今になって新型コロナウイルスも落ち着きまして患者さんも増えてきてるのかなと感じておりますが、果たして、コロナ前と同じように冬の風邪症状の繁忙期が来るとか、爆発的に受診者が増えるかというと、やはりそうはならないのではないかというように見ております。
世界的にもコロナ後は7割経済と言われておりまして、要は多くの消費者活動が3割減になるのがスタンダードと言われている中で、医療だけインフラの領域だからということでその影響を受けないと言ったところは少し考えにくいかなと思います。また、内科クリニックと一口に言っても、小人、成人、高齢、それぞれの層ごとによってコロナ禍で落ち着いて安定していたか、それとも大幅に減少していたかどうかも変わってきたなというのが今回の印象でした。
コロナ禍でも成長しているクリニック
こちらのスライドを見ていただければと思います。私のお付き合い先の中で三つのクリニック様をピックアップいたしまして去年の最初のコロナの真っただ中の1月から7月という中で対前年度比の医業収入の比較のグラフになっております。当然、3月、4月、5月と一部落ち込んだ部分はございますが、その後は比較的すぐに回復して緊急事態宣言の解除のあと、6月以降はむしろ増収につながっていると思います。
年間を通して見ると、結局これらのクリニックは普段通り10パーセントから20パーセント以上、売上伸長に繋がっております。こういった内科クリニックは共通点があったと考えております。
コロナ禍、医業収入が維持から増収になったクリニックの共通点というところで、三つあると考えております。まず一つ目ですが、レセプトの7割から大体8割以上の大半が慢性疾患の定期通院の患者様であったところです。風邪などの急性疾患は先ほど申し上げました通りやはり患者数が激減したといったところがありました。最近、発熱外来の需要が、この2022年の2月、3月はピークを迎えておりましたけれども、この5月を過ぎてまた減少傾向にあるかなと思います。なので、発熱患者がなかなか安定しにくいといったことが分かるかなと思います。
次に、共通点の2としては、患者教育がしっかりできている、患者向けの情報発信の徹底ができていたかどうかといったところになります。例えばホームページで疾患についてやクリニックの治療方針についての情報発信を行っていて、患者様が来院される前から病気の治療法について理解を促進しているといった取り組みをして患者教育をしていることが挙げられます。そういうクリニックでは慢性疾患の方は外出してコロナになるリスクよりも自分の慢性疾患の症状や診療をさぼって合併症を引き起こすリスクのほうが高いと認識されており、結果的にコロナ禍においてあまり影響がなかったのかなと見ております。
三つ目は外来診療以外の経営の柱ということで先ほど申し上げましたが、在宅診療や自費診療の拡大といったところがありましたので、そこら辺に柱を持って保険診療が落ちた分そこで売り上げを担保したといったところが維持から増収に繋がっているかなという印象です。
変化する時代への対応
ここまで簡単に去年の2020年の振り返りをしましたが、本日のメインはこれからどう経営していくかという展望のところになります。まず前提として少し強めのスライドを書いておりますけれども、私は仕事上、院長先生とお話をさせていただく機会が多いです。院長先生がよく言われるセリフに、「コロナが明けたら」とか「元通りに戻ったら」という言葉があります。ただ、先生方も感じられている通り、このコロナ禍を受けて社会は大きく変わっております。今までの常識は覆されておりまして新しい価値観がどんどん生まれているかなと思います。今このような形でオンラインセミナーを受けているのも一つの象徴ではないでしょうか。
なので、医療業界だけがコロナが明けた後何もなかったかのように元通りに戻るかというと決してそのようなことはないのかなというのが私の見解になります。今回特に変化した点は色々ありますけれども、この殆どが不可逆的で非連続的だということが特にこのコロナ禍の特徴かなと感じております。なので時代は変わっていっていますので、先生方も取り組み、あるいは経営手法を今まで通りではなくて変えていかないといけないのではないかといったところを前提条件としてお伝えいたしました。
それで、変化する時代への対応といったところで、変化していく中で何もしないというわけにはいかないです。変化するといったところを少しお話しさせていただければと思います。こちらは短期的な視点になります。コロナに限らず感染症が無くなるということは考えられないですが、ただ今回浮き彫りになったことがあります。感染症が流行すると医療機関というのはそういう病気を治療する場所である一方で患者様にとっては、感染のリスクが高い場所とみなされる場合があるかなというところです。当然必要な感染予防対策は取っていただいているというのは重々承知ですし、患者様の安心を獲得するにはその取り組みを患者様に能動的に発信していくほうが重要になるといったところになります。
それで、患者様に届ける媒体はホームページになると思いますが、この媒体を持っていることは当たり前で、そもそも先生には当たり前でも患者さんは違うといったところです。ここを意識していただければと思います。
もう1点、クリニックというのは三密になりがちな場所だと言われております。なので患者様のそもそものクリニックの滞在時間を減らすことが、今回のコロナ禍などの感染症が流行した際は重要になってくると思います。例えば、呼吸器内科の場合ですと喘息の患者様が咳をしているというのは、ほかの患者様からすると、風邪なのではないかなという形で見分けがつかない場合で不安を煽ってしまうことがあります。なので、患者様の院内の滞在時間を減らすことでそこが少しでも削減できればと思います。この院内の滞在時間を減らすには、診療効率化が大切になりますが、診療効率化は本日のテーマではないので割愛させていただきます。来週の日曜日、もしくは再来週の日曜日に行われる診療効率化のほうのセミナーでお話しさせていただければと思っております。
続いて少し中長期的な目線でコロナ禍の影響を考えてみると、内科クリニックの当たり前がそもそも変化していくのではないかと思っております。これはまさにコロナ禍でも意識されましたし、令和4年度の診療報酬改定でもなんとなく分かってきたことかなと思います。例えば、慎重だったオンライン診療というのがこのコロナ禍で一気に導入されて、令和4年度の診療報酬改定でオンライン診療が初診だと85パーセント、251点になりました。再診だとそのままオンライン診療でも73点取れるというところです。初診の251点でいくと、コロナの臨時特例として214点にはなっていましたが、そこから更に増えて251点なので、より国としては情報通信機器の診療といったところを進めたいのかなというのが分かると思います。
今回、また令和4年度診療報酬改定で変わった点としては、初診料、再診療それぞれ紐づけて点数をつけてくださいというもの以外に、特定疾患管理料も今までだと100何点かだったのですが、今回、225にほぼ近い196点が取れるというようになっております。医療業界にもITの波は多少なりともきているのではないかとは思います。
そういったところで今後、医療業界はただ薬をもらうだけの通院治療はほかのサービスに代替可能となってしまうかなと考えておりますので、従来の当たり前の枠組みにとらわれず柔軟な変化ができるように情報収集を行う必要があるかなといったところと、患者様にとって必要とされる圧倒的な差別化要素、強みを持っていく必要があるかなと考えております。
強い強みといったところでいくと、令和4年度の診療報酬改定でフリースタイルリブレの算定できる条件が、インスリン注射を1日2回の患者さんから1日1回でいいというところです。要は、枠組みが増えました。基準が少し緩和されたというのが今回の診療報酬改定でありました。なので、今後やはりそういった薬だけではなくて、データをもとにとか、持続的にといったようなことが特にやりやすくなると思いますし、国としてもそれを進めているのかなという印象ですので、そこら辺も含めて検討いただくといいのではないかと思います。・・・▼続きはこちら