税理士事務所M&Aを成功させるためのポイント
それでは第三講座に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。
第三講座は、実際に税理士事務所のM&Aを行っていくうえでの具体的なプロセスを中心にお伝えさせていただければと思っております。
柴田先生の講座の振り返り―成功事例モデル大公開
まず先ほどの柴田先生のお話を聞いていただいて皆様いかがだったでしょうか。私は、改めて先生の具体的な取り組みや思いを聞かせていただいて非常に大きな学びとなりました。
やはり、M&Aを経営戦略の一環として捉えて、それを自社の社員満足度の向上、定着、教育に組み込んで行っている点が素晴らしいと思っております。
また、今回ご参加いただいている参加者の皆様に向けても、自分たちが経験したことのない業務については専門家に任せてやっていきましょうというメッセージもいただいたと思っております。改めまして、柴田先生ありがとうございました。
譲渡検討から基本合意・譲渡契約・引継・成約までのプロセス大公開
それでは具体的な部分に入っていきたいと思います。
はじめに、譲渡を検討する際にはいきなり第三者に譲渡するということではなくて、親族、社内で検討することがあると思っております。その結果、基本的には、我々がご相談を受けるときには、事業承継を考えてみたもののできずに第三者に承継するということになると思いますので、それぞれのメリットとデメリットをお考えいただければいいかと思っております。
私も多数の税理士の先生や経営者様にお会いさせていただいてきましたけども、やはり御親族のお父様、お母様から引き継いで苦労されている先生もいらっしゃれば、うまくいっている先生もいらっしゃいます。また、社内の承継においてはよく言われることですけども、彼は、彼女は、「税理士としては優秀だけどもマネジメントとしての能力はなかなか難しいよね」ということで、第三者への承継を検討しましたというようなお話を聞かせていただくことがあります。そのように総合的なメリット、デメリットを鑑みてM&Aを検討していくことが重要だと思っております。改めて、詳細は画面のテキストをご覧いただければと思います。
先ほど申し上げたように、税理士事務所にとっていきなりM&Aを行うことはハードルが高いのだろうという思いがありますので、私も2019年から税理士事務所、士業事務所のM&Aを検討するときに、業務提携からお手伝いさせていただきましたが、結論から言うと、なかなかうまくいかなかった過去がございます。理由としては、覚悟を決めたときに、最終的な着地点にしっかりと向かっていくほうがやはりうまくいく確率は高まるのではないかと思っております。どうしても業務提携に固執してやっていってしまうと、気持ちの問題や職員様の変化、変更などによって、ご相談時にはM&Aをするには非常に良い状況であったにも関わらず、なかなか次のステップに進むには難しい状況になっているということが私の経験上でもありました。
ですので、こちらのスライドにありますように、事業譲渡のかたちで進めていくのがいいのではないかと考えます。税理士事務所のM&Aを進めてうえでよく聞かれるスキームは私の経験上では事業譲渡が一番多いと思っております。もちろん持分譲渡や合併というかたちもあると思うのですけども、法人が法人として法人を譲り受ける場合には事業譲渡が一般的だと思っております。
そこで、事業譲渡を検討するときに心配される譲渡側の経営者様のお声としてよく挙がるのは、名前がなくなってしまうのではないか、取引先様に対して説明するのはなかなか難しいというお話があるのですけれども、しっかりと引き継ぎしますし、名前に関しても登記上は新しく変わるということになると思うのですけども、屋号としてこれまでの事務所の名前が引き継がれるケースが多いですので、そこはご安心いただけるのではないかと思っております。
また、事務所の譲渡を進めていくうえで重要なことはバリエーションがあります。つまり事務所価値の算定を進めていくわけでありますが、スライドには一般企業が株式譲渡をするときに行うバリエーションのコンテンツになります。また、株価がつかないけれども、事業に魅力があれば事業譲渡、株価も事業もなかなか難しいということであれば不動産設備を譲渡することになるかと思います。今回は一般企業のケースをご説明させていただきました。
この三つが主に要素になると思います。
士業の場合はもう少しシンプルに捉えておりまして、船井総研としては特に税理士事務所に関しては、EBITDAと言われる正常収益力です。(スライド資料27ページ)これは一般企業でもスライドの中央の部分でも見えます。税理士法人の場合は、営業利益率が約20%であれば年商1年分とほぼ同等になると思います。すなわち営業利益率20%であれば掛ける5年分で年商と同等ということです。
では、個人事務所の場合は所長先生のプレイヤーとしての役割比率等もあると思いますので一概には言い切れないですが、大まかに言うと、個人事務所の場合は所長先生の所得とプラス、例えば奥様に給料などがあればこれを足して合わせたものが、EBITDAとほぼ同等と見たてて、3年~5年と見ております。なぜ3年~5年で見ているのか言うと、相続を含めた単発の案件から生まれる収入と顧問収入との比率で見ていくことが一般的かと思いますので、詳細に算定してほしいということであれば個別にご相談いただければと思います。我々も数多くの士業事務所の算定もしてきておりますので是非お気軽にご相談いただければと思います。
そして、バリューが決まって、譲渡契約が決まったとなると、支払いはどうなるのですかとよく聞かれることがあります。これもスライドのように基本的には一括が多いです。ただ、分割を考えるうえでベースとなる考え方として、すぐに契約の引き継ぎができないのではないでしょうかということがあるのですけども、我々が過去3年間やってきた経験上で言うと、譲渡契約が終わって1カ月~2カ月程度で引き継ぎが完了しておりますので、譲渡契約が終わって引き継ぎ完了後のクロージングのタイミングで一括お支払いするケースが多いです。これは、譲渡される側の経営者様のお気持ちを考えても、このようなかたちで進めていくというほうが進みやすいということもありますし、早く新体制のもとお客様にもしっかりと周知して行なっていくためにも、長く引継ぎ期間を持つよりは期間を決めて区切って行なっていくことが重要だと思っております。
ですので、一般的な株式譲渡の流れではこういうふうになっているかと思います。
スライドの右側を着目していただければと思うのですけども、士業事務所の事業譲渡に関しては、譲渡契約を締結してクロージングまでの1カ月間、ないしは2カ月間で引き継ぎを完了させることです。完了したことを確認したうえでクロージング決済を行っていきます。具体的には成功事例の紹介にてご覧いただければと思うのですけども、実際に我々がM&Aをお手伝いさせていただいている案件でも基本的には引き継ぎが非常にうまくいっています。先ほど柴田先生のお話の中にも引き継ぎがうまくいくポイントもあると思うのですけども、このような経緯からこの流れがベストだと思っておりまして、これに沿っていくと一括でお支払いすることが基本的な流れになってくると思います。
続いて、うまくいく事務所とM&Aが進まない事務所の共通点を譲受側と譲渡側で見ていきたいと思います。
まずは、M&Aが成功している事務所の譲受側です。これは先ほども柴田先生の講座でも見ていただいたように、合併したあとのビジョンがあると、譲渡する側は安心してお任せすることができると思います。そして二つ目、細かいことを言わないと書いてあります。これは、失敗している事務所のルール化の3番に顧問先単価にこだわると書いていますが、つまり細かいところに一つ一つ目を配らせてしまうと、譲渡側の経営者とお話をしていただく際に細かいことに質疑が及んでしまいますと、この先生とはうまくいくのは難しいかもしれないと思われるケースが非常に多いです。しかし、柴田先生のお話でもありましたように、細かいことはいくつもありますが、もっと大局的に見てこの事務所は我々の事業計画と一緒に行っていけばこういうふうに成長していくというかたちで、譲渡側の事務所に対してご説明していただくとうまくいくケースが多いのではないかと思います。
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