「顧客から調査のようなものが届いたのですが、どうしたら良いでしょうか?」
この数年、製造業や卸売業を中心に多く相談を受けることに、顧客からのESG調査についての回答への不安の声でした。
「何も取りくんでいないのだけど、どうしよう」
「そもそも、質問の内容が理解できない」
「答える必要があるのか?」
そして、もっとも多い質問は
「取引に影響するのか?」
ということになります。
その答えとしては、既に取引先選別要因に使われている会社もあり、そして中期的には影響が想定される会社も多く、取引に影響すると言わざるを得ません。外資系の会社によっては、新規口座開設時に必須になっていること、そして半ば強制の要素になっていることも出ています。今は取り組んでいなくとも、いつまでに達成させるのか、コミットメントをさせられているケースも多く確認しています。
【ESG調査の例】
ESG関連といっても、質問の種別は幅広く、その目的や評価対象によっていくつかの種類に分類されます。近年は国際的な基準の共通化が進んでいますが、大きく分けると「① 国際的な評価プラットフォーム」「② 特定の業界基準・イニシアチブ」「③ 個別企業の独自調査」の3つに分類できます。
③の独自型では、バイヤー企業が自社の「サステナブル調達ガイドライン」や行動規範に基づき、独自に作成した質問票です。Excelや独自のWebフォームで届くことが多く、その企業のビジネス特有の懸念事項によった質問で構成されています。
現在は上記のEcoVadisやRBAなどの共通プラットフォームへの移行が進んでいますが、中小企業向けの簡易的な確認や、バイヤー独自の強いこだわりがある分野については、現在も個別のアンケート形式で要請されるケースが多々あります。
内容としては、
労働と人権尊重
内部統制
サプライチェーン管理
グリーン調達
温室効果ガス排出
カーボンニュートラルへの取組み
情報セキュリティ
BCP
RBA行動規範
紛争鉱物
と多岐に渡ります。
私のコンサルティング先でも、100社/年は調査を貰う企業も多く、その対応だけでも楽ではありません。更に近年では、REACH規制やCBAM対応もあり、業種や顧客層によっては調査範囲も広がっています。
【SSBJだけでなく、OECDから始まっていた】
これら調査が拡がる背景には、SSBJ基準の対応もありますが、OECD(経済協力開発機構※民主主義と市場経済を共有する先進国を中心に構成される国際機関。加盟38か国)の指針から始まっています。
企業の社会的責任に関する世界初の包括的な政府間合意が1976年にOECD多国籍企業行動指針で示され、その後2011年の改訂によって、現在のサプライチェーン管理責任の決定的な国際基準となりました。
OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針内にあるサプライチェーンDDの概要は以下の通りとなります。
これらの拡がりはシンプルであり、環境(E)における温室効果ガスの排出(Scope3)も、社会(S)における人権リスクも、その大部分は自社内ではなく供給網の上流に存在しています。そのため、投資家やステークホルダーは、企業の評価において「サプライチェーン上のリスクをどこまで掌握し、改善できているか」を最重要視する為でもあります。
要請してくる顧客の先の顧客が求めることも然りであり、投資家から求められていることからでもあります。多くのものがサプライチェーンで繋がっており、スペックインされる製品等になれば、それこそ多岐に渡る要請が出てもおかしくなりません。
【ESG調査要請はチャンスでもあり】
一方で、このESG調査要請が来るということには、良い一面もあります。
サプライヤーとして重要と認識されており、だからこそ調査対象に入っています。
勿論全調査をする会社もありますが、取引数が膨大となれば、その影響度が高い会社から選定されている実情があります。だからこそ、それに応えられないことはリスクにも繋がっていきます。
例えばSCOPE3の開示となれば、もし顧客の仕入先としてシェアを占めていた場合は、その開示も当然ながら、削減が出来ないことは顧客自身がサプライチェーンや株式市場で不利にもなってしまいます。そうなれば、出来ない会社よりも、対応出来る会社に頼らざるを得なくなってもしまいます。
リスクで考えれば顧客を失うこととなりますが、機会で考えれば、顧客を獲得することも出来るものとなっていきます。リスクの最小化で先ずは考える必要はありますが、ビジネス視点を持てば、出来る会社になることで機会が拡がっていきます。
【ESG調査が届いたら】
EcoVadisやCDPの要請、調査票について、リスクと捉えて戦々恐々としていたり、手間を避けたいと思うことに陥りやすいと思います。しかし一方で、これも機会だと考えてみてください。
特にEcoVadisではESG全体を網羅しており、スコアリングされていけば、自社の不足箇所も明確になっていきます。それについて、自社のペース内で取組みの優先度を決めていっていただければと思います。
届いたあとは
①社内の各所で各質問の情報を集める。その際に、エビデンスは明確にさせる
②要請先と質問内容と回答を社内でデータベース化させていく
③取組みの為の優先度を決める(EcoVadis等ならば、分野から項目に落とし込んで決定)
④自社のリソース(人的、金銭的)にあわせて、単年度に捉えず、複数年での取組みのロードマップを策定
⑤PDCAを繰り返していく
繰り返しになりますが、ESG対応はリスクではなく機会です。それ故、先ずは競争環境で不利にならないことを優先としながら、そして競合他社の状況も調査を進め、新たな顧客を獲得するチャンスとして活用頂ければと思います。
| 執筆者: サステナビリティコンサルティングチーム/ 金融機関アライアンス室 ディレクター 貴船 隆宣 きふね たかのぶ |
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