児発放デイ事業者の新たな一手!「保育所等訪問支援事業」

障がい福祉業界の厳しい現実
少子高齢化が進む日本では、介護・福祉サービスの需要が拡大の一途をたどっています。しかしその一方で、業界全体は深刻な人材不足に直面し、さらに度重なる報酬改定によって経営環境は厳しさを増しています。
このような状況下で、持続的な「障がい福祉サービス 経営 改善」を実現するためには、以下の取り組みが不可欠です。
・既存事業の質を維持し、さらに向上させること
・新たな事業の柱を確立すること
・事業間の連携を強化すること
単にサービスを提供するだけでなく、経営という視点から事業全体を見つめ直し、戦略的に取り組むことが、今、強く求められています。
船井総研が注目する新事業「保育所等訪問支援事業」
船井総研は、このような時代の変化の中で、特に「保育所等訪問支援事業」に大きな可能性を見出しています。
この事業は、新たな収益源となるだけでなく、既存の児童発達支援事業や放課後等デイサービスとの連携により、事業全体の付加価値を高め、地域社会への貢献度を飛躍的に向上させる可能性を秘めているからです。
この機会に、保育所等訪問支援事業について詳しく解説させていただきます。
保育所等訪問支援事業の概要
船井総研が注目する保育所等訪問支援事業とは、障がいのあるお子さんが保育所や学校などの集団生活の場で安心して過ごせるよう、専門的な支援を提供するサービスです。
■どのような支援を行うのか?
この事業では、現在集団生活の場を利用しているお子さん、またはこれから利用する予定のお子さんに対し、その場での集団生活への適応を目的とした専門的な支援を行います。
お子さんが保育所などで安定した生活を送れるようサポートし、その施設利用を促進することを目指します。
■支援の対象者・対象施設
対象は大きく分けて二つあります。
1.直接支援の対象:児童
保育所、幼稚園、認定こども園、小学校などの集団生活施設に通う障がいのあるお子さん
2.間接支援の対象:施設
お子さんが通う保育所や学校などの施設
つまり、お子さん本人への支援だけでなく、お子さんを取り巻く集団生活の環境、特に施設側の支援力向上や連携も重要な要素となります。
■事業開始に必要な要件
この事業を運営するためには、主に「人員配置基準」と「設備基準」を満たす必要があります。
○人員配置基準
・管理者:1名
・児童発達支援管理責任者:1名以上
※自治体によっては、児童発達支援事業や放課後等デイサービスとの兼務が認められる場合があります。
・訪問支援員:1名以上(常勤)
訪問支援員には、障がい児支援に関する知識と経験が求められます。
児童指導員や保育士の資格を持つ方、または理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職が担当できます。
多様な専門性を持つ人材を配置できるため、提供できる支援の幅が広がると船井総研は考えています。
○設備基準
・事業運営に必要な広さのある区画
受付、相談室、事務室などが想定され、運営に支障がなければ他の事業との兼用も可能です。
・支援に必要な教具や教材などの備品
これらの基準は、事業を安全かつ適切に実施するための最低限のラインとして定められています。
高い収益性を持つ報酬体系
この事業の大きな魅力の一つは、その報酬体系にあります。
■高い基本報酬
令和6年度の報酬単価において、保育所等訪問支援給付費の基本報酬は1,071単位と設定されています。
これは、既存の児童発達支援事業や放課後等デイサービスの基本報酬(187~90単位)と比較しても非常に高く、高い収益ポテンシャルを持つ事業と言えます。
■専門性の高い支援への加算
この事業の収益性を大きく左右するのが、専門支援員が支援を行う場合の加算です。
・障がい児に対する直接支援や相談支援等の業務経験が5年以上10年未満の者が支援を行う場合:700単位加算
・10年以上の経験を持つ者が支援を行う場合:850単位加算
この加算は、専門性の高い支援を評価するものです。
基本報酬に加えてこれだけの単位数が加算されることは、売上に与えるインパクトが非常に大きいことを意味します。
特筆すべきは、この加算が専門職員が直接支援を行う場合に限らず、専門職員の経験や知識を踏まえて他の従業員が支援を行った場合でも、事業所全体の支援の質が高いと見込まれる場合には算定対象となる点です。
これは、専門職員の知見を事業所全体で共有し、チームとして質の高い支援を提供することを促進する仕組みと言えます。
■支援の頻度
支援の頻度は、基本的に2週間に1回程度の訪問、月に概ね2回の支援が想定されています。
しかし、お子さん個々のニーズや状況に応じて、月に2回以上の支援を行うことも可能です。
例えば、以下のような場合にはより頻繁な支援が検討されます。
・初めての利用で関係構築に時間がかかる場合
・環境の変化で集団生活が不安定な場合
・状態が不安定で緊急性が高く、集中的な支援が必要な場合
緊急の場合には、柔軟な支給決定が行われる可能性も示唆されており、個別の状況に合わせた対応が求められます。
■その他の加算も有効活用
基本報酬や専門支援員加算以外にも、いくつかの加算が存在します。
○初回加算:事業の利用開始時に算定できる(200単位)
○家族連携加算:お子さんの保護者への相談援助に対する加算
・居宅訪問の場合:所要時間により200単位または300単位(家族連携加算Ⅰ)
・施設等で対面の場合:100単位(家族連携加算Ⅰ)
・オンラインの場合:80単位(家族連携加算Ⅰ)
・グループでの相談援助:家族連携加算Ⅱ
○利用者負担上限額管理加算:利用者負担上限額管理に関する事務を行った場合に算定できる(150単位)
これらの加算を適切に算定することで、事業所の収益をさらに積み上げることが可能です。
事業開始から成功までのステップ
実際に保育所等訪問支援事業を始めるには、主に以下の4つのステップを踏む必要があります。
1.保護者の利用希望を募る
2.担当の相談支援事業所へ連絡する
3.訪問する保育園等へ説明する
4.支援を開始する
それぞれのステップで重要なポイントがあります。
1. 保護者の利用希望を募る
保護者説明会の開催やチラシでの案内が有効です。保育所等訪問支援の制度認知度はまだかなり低いため、丁寧な説明が不可欠です。この事業を利用するためには、受給者証の取得やお子さん一人ひとりの個別支援計画の作成が新たに必要となります。
保護者には、訪問先の保育園等に事前に連絡することを必ず伝えてください。
2. 訪問先との関係構築が成功の鍵
この事業を成功させる上で、特に重要となるのが、訪問先となる保育所等との関わり方です。
○保護者と保育所等のそれぞれのニーズと懸念
・保護者側のニーズ:保育所での活動の様子を知りたい、活動に参加できているか心配、保育所との連携で子どもの成長を促進したい。
・保育所等側の懸念:福祉サービスについてよく分からない、障がいのあるお子さんへの対応は既に行っている、訪問支援員を信頼できるか、既存の活動計画を崩されたくない。
一方で、障がいのあるお子さんの対応に困っており助かる、保育士も専門知識を学びたい、といった前向きな状況も見られます。幼稚園などでは保護者の希望があっても支援を断られるケースがあることも指摘されています。
○良好な関係を築くためのポイント
このような複雑な状況の中で、保育所等との良好な関係性を構築するためのポイントは以下の通りです。
・保護者のニーズを理解しつつ、保育所等職員の様子・状況・スタンスに合わせて可能な支援を行うこと。やみくもにこちらがやりたい支援を行うのではなく、長期的な視点を持つことが重要です。
・支援開始時は、基本的に保育所等の職員から信頼されていないと認識し、継続的な支援を通じて信頼関係を構築していくことが求められます。
・保育所等の中でされている「進め方・やり方」にしっかりと合わせ、その上で、できることから少しずつ取り組む姿勢が大切です。
3. 支援の内容
支援の内容は、大きく分けて二つの方向性があります。
①「利用者に『関わらない』支援」
主に「見る・記録・伝える」活動が中心です。お子さんが保育所等で活動している様子を観察し、記録して保護者に伝えます。
また、活動中の課題を発見し、それを児童発達支援や放課後等デイサービスの療育に繋げます。
この段階は、保育所等との信頼関係が十分に構築できていない状況でも比較的実施しやすいと言えます。
②「利用者に『関わる』支援」
主に「サポート・記録・伝える+共有」活動を含みます。お子さんが活動しやすいように、訪問支援員が活動に直接参加してサポートを行います。
観察やサポートを通じて得られた記録を、保護者だけでなく保育所等にも共有します(書面での共有に加えて電話での説明なども含む)。この「関わる」支援は、保育所等との信頼関係が構築できていることが前提となります。
○連携の重要性
求められていないのに保育所等の職員に対して一方的にアドバイスを行うことは避け、保育所等の職員から相談や質問があった段階で初めてこちらから支援の提案を行うようにします。
求められた専門的な知識については適切に回答し、双方で連携して支援を行うために情報を共有する姿勢が重要ですす。
4. 支援の展開と継続
支援の継続には工夫が必要です。ただ同じことを継続し、同じことを報告するだけでは保護者のニーズにすべて対応することはできません。
こちらからどのような支援が必要かを検討し、保護者に提案していくプロアクティブな姿勢が求められます。
また、保育所等の職員から「月2回も必要ない」と考えられてしまう可能性もあります。
そのため、訪問支援を行うことで保育所等にも何らかのメリットがあるように支援を設計・実行していく必要があります。
事業成功のための4つのポイント
これまでの内容を踏まえ、保育所等訪問支援事業を成功させるためのポイントは以下の4点に集約されます。
①始め方
やみくもに始めるのではなく、支援を開始するまでのプロセス(保護者への説明、関係機関との連携、事前の調整など)を丁寧に踏むことが大事です。
②保育所等との関わり方
事業所内での療育以上に、訪問先である保育所等との連携、すなわち事業者間の連携が求められます。相手の状況を理解し、信頼関係を構築することが鍵となります。
③支援の内容
単に訪問するだけでなく、「ねらい」を持った支援計画を立て、実行することが重要です。また、保育所等との「信頼関係構築」が、提供できる支援の内容や深さに大きな影響を与えます。
④支援の展開の仕方
案外難しいのが支援の「継続」です。継続的に支援を行っていくためには、保護者や保育所等に対して常に付加価値を提供し、必要性を感じてもらえるような工夫が必要です。
高い収益性で経営改善に貢献
この事業の収益性について補足します。前述の通り、基本報酬1,071単位は他の障害児通所支援事業と比較しても高く、さらに専門支援員加算(最大850単位)のインパクトは絶大です。
例えば、基本報酬と訪問支援員特別加算(専門支援員加算のこと)を合わせた1,071単位+850単位=1,921単位(利用者1人あたり)を想定した場合、月額の売上向上は約43,000円以上になると試算されています。
契約者8名の場合、月額約344,000円の売上向上に繋がる可能性があり、これは既存事業の「障がい福祉サービス 経営 改善」に大きく寄与し得る数字です。福祉・介護職員処遇改善加算(Ⅰ)などの加算も適切に算定することで、さらなる収益向上や職員の処遇改善に繋げることが期待できます。
船井総研への経営相談をお勧めします
ここまで、保育所等訪問支援事業の概要から具体的な運営方法、そして収益性について詳しく解説してまいりました。
この事業が、障がいのあるお子さんとそのご家族、そして保育所等の集団生活の場に対し、非常に価値の高い支援を提供できる可能性を秘めていること、そして事業所経営の視点からも魅力的な側面を持つことについて、ご理解いただけたかと存じます。
しかし、新たな事業を立ち上げたり、既存事業に導入したりする際には、制度理解はもちろんのこと、地域でのニーズの把握、効果的な集客・連携方法、人員計画、収支計画など、検討すべき事項が多岐にわたります。
特に、保育所等との信頼関係構築という点は、この事業独自の難しさでもあり、成功の鍵となります。
船井総研は、障がい福祉業界における「障がい福祉サービス 経営 改善」の専門家として、これまで多くの事業所様の成長をご支援してまいりました。
保育所等訪問支援事業においても、その立ち上げから運営、そして収益の最大化に至るまで、貴社の状況に合わせた具体的なコンサルティングを提供することが可能です。
もし、貴社がこの保育所等訪問支援事業にご興味をお持ちであれば、ぜひ船井総研にご相談ください。
弊社のノウハウと情報力で、貴社の事業成功を力強くサポートさせていただきます。
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