これまでの調剤薬局のビジネスモデルの限界
「これまでの調剤薬局業界のビジネスモデルの限界」ということで、本当に昔から経営されている方はよくご存知のことかと思いますが、「売上=処方箋枚数×処方箋単価」というシンプルな公式があります。店舗あるいは会社の業績は処方箋枚数と処方箋単価の掛け算で売上が決まりますというお話です。それで、初期のほうから薬局の医薬分業が起きて、初期から特にされていた方々からすると、大事なことは処方箋枚数をどれだけ増やしていくかということで、これが従来の調剤薬局のビジネスモデルだったかと思います。処方箋単価というものは基本的には国で決められているものですので、あまりいじることができないという観点があります。とはいえ医薬分業ということで保険ということも相まって、処方箋の単価が結構高い、元々そこそこ高いということもありまして、処方箋枚数をいかに増やすかが特に大事になっていた経営の状況が一昔前にあったかと思います。処方箋枚数を増やす為に基本的にはやはり新規出店、どんどんと店舗数を増やしましょうというところから、開業のドクターを探して「先生、是非うちと連携しましょう」ということで開業のお手伝いをしたりしながら連携をしていくこと、当然薬剤師さんがいなければ処方箋が来ても処理できない、基本的には1日40枚までという規制もありますので、薬剤師さんの採用、薬剤師さんさえいれば店舗が出店できる状況だったりします。そういう時代においてやはり大事なのは処方箋をさばくことであって、クレームが起きないように本当に調剤ミスや調剤過誤などのミスが起きないように、早く正しく調剤することが求められていた時代が今まであったと思います。ただ、このスライドの一番上にも書いてある通りなのですが調剤薬局をとりあえず出店して早く正しく出していれば業績が上がるだろうという時代のビジネスモデルが限界をむかえています。
これまでの調剤薬局のビジネスモデルの限界―処方箋受取率の年次推移
それで処方箋受取率の年次推移ということで、少し古いデータにはなってしまいますが、ここにお示しいたします。平成30年時点で処方箋発行枚数約8億枚で処方箋受取率が74%になっています。処方箋受取率、医薬分業率とも言われていますが、ここの伸びは徐々に成長が止まってビジネスモデルとしてもこれ以上伸びるのがなかなか厳しくなっている時代になってきたというところです。
これまでの調剤薬局のビジネスモデルの限界―医薬分業に伴い、薬局数・技術料も上昇
そして、医薬分業に伴って薬局数と技術料、こちらもいわゆる薬局の利益につながるところですが、これらが伸びてきていることから薬局の数が今では6万を超えている状況になってきています。そんな中で調剤技術料自体は大幅に伸びてきていますが、来たる2025年問題、医療費問題に向けて考えると、これ以上ただ単に薬局数が伸びて処方箋枚数が増えて技術料が伸びていく状況ではなくなってきていると言えます。医療費の限界がそろそろ来ておりますので、処方箋一枚あたりの単価がこれから徐々に下げられていく時代が予測されています。
これまでの調剤薬局のビジネスモデルの限界
調剤薬局業界のいわゆるライフサイクルも、細かくは今日は省略させていただきますが、ライフサイクル上における臨界点、転換点をむかえて、そろそろこちらのスライドの図で言うと成熟期から転換期を迎えて、2025年には調剤薬局自体の業界がかなり厳しくなっていくとも言われています。それで今までのように出店さえしておけばいいという時代、まさにこのライフサイクルで言うところの導入期、成長期がありましたが、この時代は需要が大きく、供給する店舗が少ない、まだまだ薬局の店舗数が少ない時代でしたので、とにかく出店さえすれば処方箋が集まっていました。
なので、先程お見せしたこちらのスライドからもわかる通り、とにかく出店をしようというビジネスモデルでまだまだ業績が伸びていた時代から、今はもはや成熟期から転換期に向かっているという最中のところにあります。高齢者の数は増えていることから処方箋の枚数という意味での需要は伸びていますが、医薬分業で保険の点数による限界、医療費で出せる範囲の需要金額が限界をむかえてきている状況になっていますので、金額ベースでの需要は落ちてきている中で供給する店舗数は今では6万軒を超えているということで供給する店舗が増えてきていることから、そのようなビジネスモデルではなかなか成り立たなくなってきているようになっています。そこで求められる要素として、まさに差別化、組織化とありますが、ほかの薬局とのサービスの違い、価値の違いというものを提供していかないと、今までの調剤薬局のモデルでは生き残れなくなってきていることを共通の認識ポイントとして持っていただきたいです。薬局数の増加、まさに供給の増加と医療費抑制、需要のダウン、この二つのポイントからまさに調剤薬局業界そのものは転換点を越えてきている状況ということで、新しい波に乗っていかなければいけないというところが皆さん共通でご認識いただけるかと思います。
その上でもう3年程経ちますが、新型コロナウイルスによって状況が変わりました。こちらのデータはレセプト枚数のデータですが、それに合わせて処方箋の枚数というものも大きく激減してきている状況になっています。今、3年経っても当時ほど処方箋枚数は落ちてはいないものの、長期処方化が進んでいたり、ほかにも無駄な病院通いを減らそうといった観点から薬局業界としては処方箋枚数もここ2、3年で見るとかつてに比べると少し減り気味な傾向にあります。
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