調剤薬局のビジネスモデルの変化
まず、調剤薬局のビジネスモデルの変化についてお話しさせていただきます。これはライフサイクルというものですが、各業種業界またビジネスモデルという観点で見たときに一定程度の修正を繰り返すという流れがあります。
スライド上から見ていただきますと、導入期、成長期とあり、導入したときはライバルも少なく、時代に合ったかたちで時流に乗っていくと伸びていきます。しかし、競合も増えてくる中で成熟期のトップまで行くと、生き残れる会社やビジネスモデルなどが限られてきます。そうすると衰退期に入っていき、一定程度シェアを取っていたり、力を持っている会社様しか残れないという流れになっていきます。
実際にこれを薬局業界に当てはめてみると、まさにこの成熟期から衰退期というところにさしかかると言えるのではないかと思います。導入期、または成長期では、かつては門前で薬局を出せばある程度の利益が見込めました。そこから、やはり薬局数が増えてきます。また、今、国の政策である医療費の抑制が相まって、弱い薬局さんという表現をすると大変失礼かもしれませんが、時代に合わせて淘汰されていきます。
成熟期、衰退期に入る際、何をしなければならないかというと、単純に門前で同質化するのではなく、地域に根ざしたかたちや時代の変化に合わせて、薬局対薬局といったところで差別化を図っていかなければなりません。
そして、今までやっていた業務に上乗せして、いろいろなサービスも含めて付加していかなければなりませんし、組織としても大きく組織立って動いていかなければいけないタイミングにさしかかっています。
薬局のあるべき姿
続いて、2020年の調剤報酬改定のメッセージということで、私もいろいろな薬局さんを尋ねさせていただいています。やはり、今の薬剤師の方は薬剤師としての仕事のみをやっていればいいという考え方の人が多いです。
2020年の調剤報酬改定のタイミングで出たメッセージでは、皆さんもうお分かりの通り対物業務評価の見直し、対人業務の評価、かかりつけの推進、減薬への取り組み、在宅・地域医療連携、地域貢献の取り組みということで、今までは処方箋をさばくだけでいい働き方でしたが、現代の薬剤師の皆様に求められている役割は大きく変化しています。
そのため、端的に言えばこれに対応していけない薬局の方はなかなか難しいと思います。
薬局のあるべき姿というところで、過去の薬局と未来の薬局を見比べてみたいと思います。まず、薬局へのニーズでいきますと、過去の薬局はどちらかと言うと門前に立地を位置して、処方箋の受付と調剤業務を一定程度行っていればそれで済みました。
必要とされる人材も、業務が早く正確にちゃんと安心して投薬できればよく、採用の考え方も薬剤師という資格があれば大丈夫で、教育も現場が回ればいいということで、ある程度現場任せだったと思います。
評価についても、評価制度も作らず、代表のどんぶりというところでつけていた会社様も多かったのではないかと思います。そして、給与についてです。少し前は、かなり薬剤師が足らなくて、薬剤師の方々の給与相場が高騰していました。そのため、言ってしまえば買える金額で買える人材をというかたちで揃えていったところがあると思います。
また、組織化の度合いとしても現場中心でかなり低く、あとは薬剤師さんの利益の意識、数字への意識も希薄だったと思います。
そこから、未来の薬局で何が求められているかということですが、薬局のニーズからいきます。地域連携とありますが、今までの門前で処方箋をさばいていればいいというところから脱して、新しい価値をきちんと提供していかなければなりません。それが地域に対する貢献です。
私もこの薬局業界に関わるようになってから自分自身で処方箋をもらって薬局に行ったときにどうしても接客を見てしまいます。本当にぶっきらぼうにばっと出す方もいれば、親切丁寧に体調を気遣ってくださる方もいて、薬局個店個店でだいぶ違うということを肌で感じています。
しかし、このあと必要となってくる人材で言うと、もちろん安定した専門業務はできつつも対患者様に対する対人的な能力、そして薬局業界を取り巻く環境が厳しいということを意識して理解した上で、各店舗で数値に繋がることを意識した上で取らなければならない行動は何かというところで、一定程度の経営力、営業力といった数値理解力がある人材が必要になってきます。
そして、採用も人材採用というところで、会社を今後発展させていける人材で、それを言いかえるならば、特に薬局業界においては、会社の方針に従ってしっかりとやるべきことをやってくれる人材を採用していかなければなりません。また、教育の考え方というのも同様に、会社の方針に従ってくれる方、そういったことがきちんと浸透できて実行できているかが重要になってきます。
評価についても、今日このあとゲスト講座でお話しさせていただきますが、評価といったものをしっかりと作って会社の基準を定める必要があります。
また、給料についても、能力または役職に応じた給与を出す必要があります。いろいろな薬局さんでお話を聞きます。「あのときは薬局長だったら800万円でないとうちの地域だと買えなかった」という話を聞いたが、実際は残業ばかりして、全然マネージメントしない方々の給与を今すぐに下げられるかというとそれは非常に難しい部分ではあります。しかし、やはり一緒に働く社員さんが納得するようなかたちで給与設計を行っていくべきです。そのため、そういった仕組みを用意していく必要があります。また、組織化の度合いとしても今まで以上に組織化されたかたちで上から下までしっかりと指揮命令系統が機能することが重要になってきます。
やはり、利益に関する意識は高くないです。多くの薬局さんで、例えば、昨年度のコロナのタイミングで、3月からかなり売上が下がり、多くの小売店では7月の賞与をカットしたり、少なくしたり、または4月の給与改定を見送ったりする措置を取られる小売りや飲食などの業界が多かったです。薬局もそうすべきだということで、業績に応じたかたちで賞与を下げました。そうすると、挙がってくる声としては「何で下げられるんだ」ということで、それに対して「利益がこうで営業利益はこうだ」と言っても理解してもらえませんでした。
いくら医療業界と言っても、会社ということを考えると、業績というのは非常に重要です。業績があるからこそ皆様のお給料が払えますので、そういった原理原則については理解していただく必要があると思います。
こちらもよく話すことですが、経営者の皆様が経営の実態を薬剤師の方に言ってこなかったということや儲かっているときは言わないほうがいいというところも正直あると思います。
しかし、今は厳しくなってきています。そのため、しっかりと数字や趣旨背景などを理解して、組織化の度合いや利益の意識を高くしていく必要があります。環境変化が進む中で強い種族が生き残るのではなく、変化対応できるところが生き残るとダーウィンが言っています。まさに、そういった状況になってきておりますし、非常に厳しいですが、逆に言うと、やることは見えているので、そこの部分をしっかりとやっていけるように準備をしていくことを考えていただくことが重要になってくると思います。
薬局が直面する問題
続きまして、皆様が直面する問題をいくつか挙げさせていただきました。今後、処方箋枚数は減少していくだろうと予想されています。特に処方箋日数が長期化していたり、常に来ていただいた患者様が老人施設に入居されたり、門前でやっている医院さんに後継者がいなくて、あと何年持つか分からない状況になっていたり、コロナによる受診抑制やドラッグストアが進出してきたこと、東京以外のところは人口が減少していくといった問題があります。
今日のゲスト講座でお話いただく中央調剤さんは新潟県の上越市に位置していますが、まさにこれが眼前に突きつけられた状態になっています。
合わせて、売り上げ・利益の減少というところで、薬価改定も令和3年度から毎年やっていくという話ですが、かなり薬価差が取れなくなってきています。薬価ダウンによって売り上げが下がってきたり、後発品が推し進められていたり、医科向けの薬品の値引き率が減少していて、仕入値引きがかなり厳しいことがあると思われます。
次に、地方調剤薬局のM&Aによる大手に買収されて、大手の調剤薬局が出てくるということもあります。
そして、設備費の上昇というところで、一包化や粉砕調剤などによる手間の増加、一包化向き分包機の導入などがあります。今、ICTをするにあたっても費用がかかってきます。
そして、やはり多くの会社様に人事の側面で言われていますが、薬剤師がなかなか取れないタイミング、特に地方では過去にかなり高い年収で買ってしまった中途の社員がいるが、全然言うことを聞いてくれないし、会社に足を向けているという方が結構多く、大体そういう方々が薬局長や漢薬兼薬局長といったかたちでされていて、何も改革が進まないことがお悩みとしてあります。
私が担当している東京の会社様で、大体30歳くらいで経験2、3年ぐらいの薬剤師さんでいくと、中途で入ってくる相場が500は切りません。500から520、530というところで大体募集が来るといったところです。そのため、今、世の中の変化に伴って、薬局というのが閉まってきている中で薬剤師さんが溢れてくるような傾向にはなっています。
しかし、やはり人の少ない愛知の地方などでは、まだまだ薬剤師を獲得するのは難しいですが、首都圏部においてはある程度の水準で、薬剤さんの値段は下がってきていますので、正直、入れ替えることも必要なタイミングになってくると思います。
大手調剤薬局の状況
ちなみに、大手調剤薬局の状況というところで共有させていただきますと・・・