年商5億〜100億規模の企業を育て上げ、会社にはしっかりとキャッシュが積み上がっている。業績も安定している。それにもかかわらず、実績に対して「経営者個人の資産が意外と積み上がっていない」というケースが数多く見受けられます。
「これだけの会社を作ってきたのに、なぜ?」と思われるかもしれませんが、実はこれには明確な理由があります。本コラムでは、日本の経営者が個人資産を増やせない「構造的な理由」と、インフレ時代において失敗しないための「資産形成の鉄則」について解説します。
経営者の資産が増えないのは「意志」ではなく「構造」の問題
会社の業績が良いにもかかわらず、個人の資産が積み上がらない最大の理由は、「業績に見合った役員報酬を取っていないから」です。実際、5年、10年と役員報酬を上げていない経営者の方は少なくありません。
理由を伺うと、多くの方が次のように答えます。
「報酬を上げても、半分は税金で持っていかれてしまうから。」
「自分より社員に還元したい。今の生活で十分だから。」
これは日本の経営者らしい素晴らしい美学でもあります。しかし、厳しい現実として、この考え方が結果的に経営者ご自身を追い込んでいるケースを何度も目の当たりにしてきました。
役員報酬を上げず、会社の経費で活動を続けてきた経営者がいざ引退を迎えた時、会社の経費という後ろ盾が消え、「経済的な余力がなく、引退後の生活が描けない」という事態に直面します。「引退したいけれど、お金の心配があってできない」と、70代、80代になっても現役を続けざるを得ない経営者は意外なほど多いのです。
そうならないために、適切な資産形成の考え方を知っておく必要があります。
所得税、住民税、社会保険料を合わせると、役員報酬の40〜50%が差し引かれます。単純に「報酬を上げれば資産が増える」わけではありません。資産が増えないのは経営者の能力や性格の問題ではなく、資産形成の仕組みや合法的な節税方法を知らないという「構造」の問題なのです。
資産形成の方程式は「収益型」×「守りの節税型」の掛け算
では、具体的にどのように資産を増やしていけばよいのでしょうか。
ポイントは、「資産増加(攻め)」と「節税対策(守り)」の2つの軸を掛け合わせることです。
資産を上手に増やしている経営者は、この両輪を巧みに組み合わせています。
① 資産増加(収益型)
代表的なものは、国内不動産や株式投資です。例えば、表面利回り5〜7%の国内の一棟アパートに投資し、安定した家賃収入(キャッシュフロー)を生み出すことで着実に資産を拡大させます。
② 節税対策(節税型)
役員報酬を上げた際にかかる多額の税金をコントロールする「守り」の施策です。ここで多くの富裕層が活用しているのが「米国不動産」です。
日本の不動産と異なり、米国不動産は建物割合が高く(約80%)、短期間で大きな「減価償却費」を計上できます。この減価償却による会計上の赤字と、本業の役員報酬(黒字)を相殺(損益通算)することで、支払った所得税等の大きな還付や住民税の軽減効果を得ることができます。
毎年繰り返すことで、数年間で1,500万〜2,000万円規模のタックスメリットが積み上がることも珍しくありません。さらに、個人の所得税率が高くなる場合は、「プライベートカンパニー(資産管理会社)」を設立し、法人税率の低さを活かして資産を集約していくことも有効な手段です。
これは決してグレーな手法ではなく、税法で正々堂々と認められている制度を活用しているに過ぎません。しかし、この正しい情報を知り、適切に実行できている経営者はほんの数パーセントに留まっているのが実情です。
「ハッピーリタイア」から逆算する法人・個人両輪の資産形成
資産形成を始めるにあたり、最も重要なのは「積み上げ」ではなく「逆算」で考えることです。
「いつか会社を引退した時、どんな暮らしをしたいか?」
「そのために、いくら必要なのか?」
日々の業務に追われる現役経営者は、この「引退後の姿」を想像する時間をなかなか持てません。しかし、目標が定まらなければ、現役時代に何をすべきかの逆算もできません。
経営者が個人資産をしっかりと作ることは、決して「わがまま」ではありません。後継者に安心してバトンを渡し、会社を存続させるための「責任」でもあります。経営者自身が経済的に自立していなければ、スムーズな事業承継は成り立たないからです。
30代・40代でセカンドライフを想像して役員報酬の設計を見直し、50代で本格的な承継対策やプライベートカンパニーの設立に動き出す。そして60代・70代でハッピーセカンドライフを実現する。
年代ごとのフェーズはありますが、資産形成を始めるタイミングに「遅すぎる」ということはありません。
ご自身のハッピーリタイアを実現するため、そして会社と社員の未来を守るためにも、まずは現状の役員報酬と個人資産のバランスを見直してみてはいかがでしょうか。
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![]() | 執筆者: 株式会社 船井総合研究所 坂田 知加 さかた ちか |

