変化の激しい時代を勝ち抜くための「グループ経営人材育成」の重要性
現代は、人口減少に伴う市場の縮小や、予測困難な環境変化が続く「不確実性の時代」です。こうした厳しい状況下において、中堅企業が持続的に成長を遂げるためには、単一事業への依存から脱却し、M&Aや新規事業開発を通じた多角化と「グループ経営」への移行が強く求められています。しかし、多くの成長企業でボトルネックとなっているのが、経営幹部、すなわち「グループ経営人材育成」の遅れです。
企業の多角化や連続的なM&Aを成功に導くにあたり、最も重要な戦略となるのが、まさにこの「グループ経営人材育成」です。主力事業という既存の枠組みの中だけで業務を完結させていては、グループ全体を統括するような高度な視座は身に着けられません。複数の事業会社を束ね、全体の相乗効果(シナジー)を創出するためには、カリスマ社長一人に頼るのではなく、組織的にグループを動かせる仕組み、そしてそれを担うための「グループ経営人材育成」に早期に着手する必要があります。
本コラムでは、船井総研グループの実績やコンサルティング現場の実践ノウハウに基づき、企業価値を最大化させるための「グループ経営人材育成」の要件定義と、計画的なサクセッションプラン(後継者育成計画)の構築手順を解説します。
管理職とは何が違う?「グループ経営人材育成」で求めるべき要件定義
まず明確にすべきなのは、一般的な「管理職」と、グループ経営を担う「グループ経営人材」との役割の違いです。
管理職のミッションが「担当部門の業績目標達成」や「既存業務の効率的な遂行」であるのに対し、グループ経営人材に求められるのは「グループ全体の企業価値最大化」と「持続的な成長を支える次世代リーダーの輩出」です。 部門最適・中短期的視座で動く管理職を、そのままのキャリアで放置しても、全体最適・長期的視座を持つグループ経営人材には育ちません。したがって、「グループ経営人材育成」においては、従来の延長線上にある管理職ルートとは全く異なる、意図的で計画的な「グループ経営人材育成」のための教育が必要になります
自社における「グループ経営人材育成」を進めるためには、まずは以下のように求められる人材要件を細分化して定義することが大切です。
マインド・資質: 全体最適の視点、チャレンジ精神、大局観、高い倫理観、当事者意識
実務スキル・能力: 戦略構想力、財務・会計(ROIC等の理解)、組織マネジメント力、M&AやPMIにおける交渉・合意形成力
このように「自社が求める経営幹部像」の共通認識を社内で形成することが、実効性のある「グループ経営人材育成」の出発点となります。
サクセッションプランの実践!「グループ経営人材育成」を体系化する4つのステップ
自社に適した「グループ経営人材育成」の仕組みを作るためには、計画的なサクセッションプラン(後継者育成計画)の策定が不可欠です。具体的な手順を4つのステップでご紹介します。
ステップ1:前提条件の整理と目標設計
企業の成長ビジョン(売上300億円、500億円、1000億円などのステージ)から逆算し、どのようなグループ本部機能が必要で、必要な本部機能を担う責任者に求める業務・責任範囲を可視化することで、どのような属性の人間をターゲットとした「グループ経営人材育成」を行うのかという全体方針が明確になります。
ステップ2:ハイポテンシャル人材のノミネーション(候補者選定)
次に、「グループ経営人材育成」の対象となる候補者を選定します。人事評価(実績)や適性検査、360度評価、役職者推薦などに基づき、ポテンシャルの高い「プール人材」を組織的に発掘します。
ステップ3:アセスメント(評価・選抜)と段階的なキャリアパス
選定した候補者に対して、ビジョンプレゼンテーションや実践的な課題評価といった多面的なアセスメントを通じて、適性を慎重に評価し、選抜します。 そして、その後のキャリアにおいて、「事業会社の部長」から「ホールディングス本部の各専門機能」、「事業会社取締役・社長」へと段階的につながる、複数のキャリアパスを設計・運用します。特に事業会社の社長というトップポジションを意図的に任せることが、「グループ経営人材育成」における最大の成長機会(修羅場体験)となります。
ステップ4:実践と座学を両輪で回す「育成プログラム」
選抜したメンバーに対し、体系的な研修(OFF-JT)と実務(OJT)を組み合わせた「グループ経営人材育成」プログラムを実行します。
座学研修(OFF-JT): 経営戦略基礎、財務・会計(財務三表、ROICの理解)、人事・組織開発、法務・ガバナンスなど、経営者として必須の実務スキルを修得させます。
実務研修(OJT): 新規事業開発の立ち上げや、不採算事業の再建といった高難度ミッション(タフ・アサインメント)に意図的にアサインし、実践を通じた「グループ経営人材育成」を加速させます。
経営トップが「本来の役割」に専念できる組織へ
これまで述べてきた通り、「グループ経営人材育成」は一朝一夕に成し遂げられるものではありません。しかし、だからこそ早期に着手しなければ、将来の成長期において「任せられる人材がいない」という重大な成長阻害要因に陥ることになります。
高度な「グループ経営人材育成」が機能し始め、頼れる経営幹部チームが形成されれば、経営トップは日々の事業執行から解放され、グループ全体の将来ビジョン策定や大型M&Aなど「トップにしかできない重要な意思決定」に専念できる環境が手に入ります。
つまり、「グループ経営人材育成」とは、単に後継者を育てる作業ではなく、経営トップのパフォーマンスを最大化し、ひいてはグループ全体の「企業価値」を最大化させるための、最も投資対効果の高い戦略的アプローチなのです。
当社では、貴社の成長ステージに合わせた最適な「「グループ経営人材育成」コンサルティング」を提供しています。人材要件の定義から、サクセッションプランの設計、具体的な研修プログラムの構築まで、中堅企業グループの永続的な発展と「グループ経営人材育成」をトータルでサポートいたします。「次世代の幹部が育っていない」「何から「グループ経営人材育成」の手を付ければいいか分からない」とお悩みの経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
| 執筆者: 株式会社 船井総合研究所 佐野 暢彦 さの のぶひこ |
