【2026年4月のコーポレートガバナンスコード改訂案は攻めのESG】
2026年4月にコーポレートガバナンスコード改訂の最新案が発表されました。内容を見ていくと、狙いとして「攻めのガバナンス」への移行を強く感じた次第です。2015年施行から、2018年2021年と改訂されてきましたが、そもそも上場企業が透明で公正な企業統治を行うための行動指針としての存在として、企業の中長期的な持続的成長と企業価値の向上を目的としてきましたので、攻めのESGとなることは想定通りであったかもしれません。
【コーポレートガバナンスコードとESG】
コーポレートガバナンスコードとESGの関係は深く密接で、ESGを求める世の中の要請に応える為に、コーポレートガバナンスコードの仕組みを使って会社をコントロールするものでもあります。そして「サステナビリティの対応」は、5つの基本原則の中にある「3」にある通り、「企業は、環境・社会問題等のサステナビリティを巡る課題について、中長期的な企業価値の向上の観点から、積極的・能動的に取り組むべきである」として明確に組み込まれています。そして具体的には「多様性の確保」について具体的な方針や目標の開示、そしてプライム上場企業には、気候変動が自社のビジネスに与えるリスクや機会を分析し、情報開示することを求めています。
コーポレートガバナンスコード 5つの基本原則
これらに共通していることは、「投資家(特にお金を運用する機関投資家)の目線」で作られていることでもあります。投資家は、コードの遵守による不祥事を起こさない仕組み、ESGの視点において環境や社会問題に対して問題が無いかと非財務情報を厳しくチェックしています。それ故、企業はコーポレートガバナンスコードを厳守して経営の透明性を高めること、ESGの課題に取り組むことは、投資家からの信頼を得て、中長期的に生き残る為の必須条件にもなります。
つまり、E(環境)やS(社会)の取組みが嘘にならないように監視するブレーキと本気で推進するアクセルの役割がコーポレートガバナンスコードとも言えるでしょう。
【2026年4月改訂案のポイント】
今回の改訂案は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた本質的な取り組みに注力できるよう、後押しする観点となっております。
コーポレートガバナンスコードは、企業におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった「守りのガバナンス」だけではなく、むしろ健全な企業家精神の発揮を促し、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼を置いています。会社の意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断な意思決定を促すことを通じて、企業の「稼ぐ力」の向上に向け、いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すものとされています。そして形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家の双方の取組みにおけるコーポレートガバナンス改革の実質化が重要であるとの指摘も出ていることから、改訂案では、成長投資等の経営資源の適切な配分をはじめとして、企業が中長期的な価値向上に向けた本質的な取組みに注力できるよう後押しする観点から、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象となる原則の内容を抽象的かつ概念的なものに限定し、各原則の実効的な実施を支援するための具体的な内容や趣旨・背景を記載した「解釈指針」を新設しました。今般の改訂は、コード策定時のプリンシプルベースの精神に立ち返るためのいわば「コードの実質化」を狙いとしており、上場会社において、自社の置かれた状況に応じ、各原則の趣旨・精神に沿った実践を行うことが期待されています。上場会社には、各原則の趣旨・精神に照らしてコンプライ又はエクスプレインを選択するとともに、このいずれを選択する場合であっても、自らの取組みについて丁寧に説明することが望まれています。
【攻めのESG】
今回の改訂は、従来の「不祥事を防ぐための守りのガバナンス」から、「リスクを取って持続的な成長と企業価値向上を牽引する攻めのガバナンス」への転換を明確に打ち出している点が最大の特徴です。
1.人的資本・環境対応は攻めの経営へ
従来のESG対応は、「環境破壊をしない」「労働問題を起こさない」というリスク管理(守り)の側面が強調されがちでした。しかし、今回の改訂案ではこれらを「企業の稼ぐ力を高めるための投資(攻め)」として位置づけています
(1)無形資産への投資促進
人的資本(人材育成、多様性の確保)や知的財産への投資を単なるコストではなく、将来の成長に向けた「経営資源の配分(投資)」として取締役会が主導することを求めています
(2)経営戦略とEとSの同期
サステナビリティ(ESG)の課題を経営戦略の根幹に組み込み、それを実行することで如何に他社との差別化を図り、収益を上げるかという「攻めのシナリオ」の策定を促して
います。
2.取締役会の役割を「監督と後押し」へ
ガバナンス(G)の面でも、経営陣のブレーキ役(守り)から、適切なリスクテイクを支えるアクセル役(攻め)への変化を求めるようになっていきます
(1)過度なリスク回避の是正
取締役会に対し、不祥事防止だけでなく「資本コストを上回るリターンを上げられているか」「成長投資が適切に行われているか」を厳しく検証する責務を課しています。
(2)経営陣の背中を押すガバナンス
経営陣が迅速かつ果断な意思決定を行えるよう、環境を整え、中長期的な投資判断を後押しすることが取締役会の重要な役割とされています。
3.「建設的な対話」による中長期資金の呼び込み
「攻めのESG」を実現するには、目先の利益ではなく、中長期的な成長投資を評価してくれ
る投資家との関係が不可欠です。
(1)有価証券報告書の総会前開示
株主総会の3週間前までに詳細な情報を開示することで、投資家が企業の「攻めのESG戦略」を深く理解した上で対話できるようにします
(2)形式から「対話の質」への転換
「コードの原則を形式的に守っているか(コンプライ)」ではなく、守れない場合でも「自社の成長のためにあえて別の選択をしている(エクスプレイン)」という合理的な理由があれば、投資家はそれを評価し、中長期的な資金を投じます。これにより、企業は安心して攻めの投資を行えるようになります。
今回の狙いは、目指すべき企業価値の向上としてESGが、企業の持続的な成長(稼ぐ力)に直結する投資・経営判断のツール」として再定義したことでもあると感じております。
サスティナビリティへの取組は、リスク対応から価値向上への機会となること、そして攻めのESGについて意識を大きく変える必要があると読み取っております。是非、ルール変更を成長に活かして頂ければと思います。
| 執筆者: サステナビリティコンサルティングチーム/ 金融機関アライアンス室 ディレクター 貴船 隆宣 きふね たかのぶ |
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