従来の融資モデルの限界と「金利ある世界」における現場のリアルな悩み
日々の渉外活動において、地域の優良企業から「今は手元資金が潤沢にある」「新たな投資先が見つからず、事業が停滞している」といった声を聞く機会が増えていないでしょうか。「金利ある世界」への本格的な移行や、生産年齢人口の減少といった避けられない構造的な変化の中、従来の預金獲得競争や不動産担保に過度に依存した融資モデルは、いよいよ限界を迎えつつあります。
現場の第一線で活躍する担当者は、他行とのわずかな金利差を巡る激しい競争に巻き込まれ、疲弊してしまうケースも少なくありません。また、地域金融機関の経営層や部門責任者においても、「先細りする金利収益を補う非金利収益の柱をどう構築するか」「メインバンクとしての確固たる求心力をいかに維持・向上させるか」という極めて深刻な課題に直面していると考えられます。もはや、単に受動的に資金を供給するだけの従来型機能では、成長意欲のある顧客企業からの真の信頼を勝ち取り、強固なリレーションを構築することは難しくなっているのが現状です。
金融庁が求める「事業者支援の徹底」と「価値創造モデル」への転換
こうした厳しい経営環境を背景に、金融行政においても地域金融機関の果たすべき役割の再定義が急務とされています。
近年の金融庁による金融行政方針等では、金融機関に対して「事業者支援の徹底」が繰り返し強く求められるようになっています。
具体的には、経営者保証に依存しない融資慣行の確立や、事業者の実態・事業性評価に基づく付加価値の高い支援の提供です。
これは、金融機関が単なる資金の出し手から脱却し、顧客企業の持続的な成長を中長期的な視点で伴走支援する「価値創造モデル」へと抜本的に転換しなければならないことを意味しています。
しかし、実務の最前線からは、「コンサルティング機能を提供できる専門性の高い人材が圧倒的に不足している」「顧客企業に対して、具体的にどのような成長シナリオや事業計画を提案すべきか分からない」といった切実な悩みが数多く聞かれます。
理念や方針としては理解できても、それを具体的なソリューションとして顧客へ届ける手段に欠けていることが、変革を阻む大きな障壁となっていると考えられます。
資金供給とコンサルティングの融合による「100億企業化」支援のポテンシャル
この閉塞感を打破し、地域金融機関の新たな成長軌道を描くための強力な鍵となるのが、地域経済を牽引する中核企業に対する「100億企業化」へのコミットメントと支援です。地域の優良な中堅・中小企業が、現状の規模から売上高100億円規模へとスケールアップすることは、地域に良質な雇用を新たに生み出し、サプライチェーン全体を活性化させる「地方創生2.0」の要となります。
一般的に、企業が売上高100億円の壁を超えるためには、既存事業の延長線上における細かな改善だけでは不十分です。
M&A戦略による事業ポートフォリオの再構築、新規事業の創出による多角化(地域コングロマリット経営の推進)、全社的なデジタル変革(DX)の断行、さらには次世代の経営幹部育成や高度な人材採用など、非連続な成長に向けた経営の抜本的なアップデートが不可欠となります。
ここにこそ、地域金融機関にとって最大の機会領域が存在します。
企業が目指すべき未来から逆算した「成長ロードマップ」の策定に初期段階から深く関与し、資金供給というハードウェアと、経営戦略というソフトウェア(コンサルティング)をシームレスに融合させることで、潜在的な前向きの資金需要を金融機関自らが創出することが可能になります。
解決策としての「金融アライアンス」と持続可能な収益基盤の構築
とはいえ、上記のような多岐にわたる高度な経営テーマに対し、深い専門知識を持ったコンサルティングノウハウと実効性のある支援体制を、金融機関単独で迅速に構築することには、時間的にもコスト的にも物理的な限界があります。そこでおすすめしたいのが、外部専門家との「金融アライアンス(協業)」による戦略的かつ機動的な展開です。
ある地域金融機関の事例では、外部の専門コンサルタントと連携することで、地域企業を対象とした「成長戦略・100億企業化セミナー」を共同開催し、潜在的な経営課題を抱える経営者層への効果的なトップアプローチを実現しています。専門知見を有するプロフェッショナルが商談に入り込むことで、融資先企業が抱える本質的な課題がスピーディーに可視化され、結果として大型の設備投資や事業承継、M&Aといった具体的なアクションへと導くことに成功しているケースが多数見られます。
船井総合研究所との協業においては、「専門知見の圧倒的な補完」「スピーディーな実行支援」「全国の成功事例の地域への横展開」という3つの強みを最大限に活かすことが可能です。さらに、相互出向や実践的な同行訪問を通じたOJTにより、行内のコンサルティング営業力を着実に底上げしていく効果も期待できます。単独では難しかった高度なソリューション提供を早期に実現する金融アライアンスは、地域社会の発展、顧客企業の成長、そして金融機関の非金利収益拡大という「三方よし」を持続的に実現する、最も確実な打ち手と言えます。
![]() | 執筆者: 株式会社 船井総合研究所 宮本 賢一 みやもと けんいち |

