大規模修繕元請け化戦略

大規模修繕業界は、今、大きな転換期を迎えています。この市場で成功するためのポイントと、船井総合研究所が提唱する「大規模修繕元請け化ビジネスモデル」について、具体的な事例を交えながらご紹介します。
巨大な市場規模と成長期にある大規模修繕ビジネス
現在、大規模修繕ビジネスの市場規模は、分譲マンション、賃貸マンション・アパートを合わせると8,786億円にも上ります。
これは戸建て塗装市場の約2倍にあたる規模で、塗装工事だけでなく、防水やタイル補修なども含まれる広範な分野です。
この業界は、市場のライフサイクルで見ると「導入期〜成長期」に位置しています。
まだ歴史は浅いものの、これから新規参入や元請け化を目指す動きが活発になり、それに伴い競争も激しくなっていくでしょう。
また、消費経済の主役は「作り手・メーカー中心」や「売り手・小売中心」から、「買い手・お客様中心」へと変化しています。
お客様の購買基準も、「新しい/珍しい」から「みんなと同じが良い」を経て、「他人と違うが良い」というように、個性や自分らしさを重視する傾向が強まっています。
このような市場環境の変化を理解し、お客様の視点に立ったビジネスを展開することが、今後の塗装業の経営戦略において非常に重要です。
船井総合研究所が解説する「大規模修繕元請け化ビジネスモデル」
船井総合研究所では、塗装・防水工事業者が大規模修繕の元請けとして成功するための具体的なビジネスモデルを解説しています。これは、日々のコンサルティング活動で培ったノウハウが凝縮されたものです。
大規模修繕の元請け参入を成功させるには、以下の3つのポイントを押さえることが重要だと考えています。
1. ターゲットを絞る
2. マーケティングを確立する
3. セールスを仕組み化する
これらのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.徹底したターゲットの絞り込み
成功への第一歩は、闇雲に市場全体を狙うのではなく、効率的に事業を立ち上げ、成功確率を高めるために特定の層にフォーカスすることです。
船井総合研究所では、賃貸市場に絞り込み、賃貸オーナーをターゲットとすることを推奨しています。さらに、物件規模としては6階以下の中低層マンション・アパート、具体的には1棟20戸以下の物件を所有しているオーナー様に絞り込むと効率的です。
なぜ賃貸オーナーなのかというと、修繕をする際の意思決定者がオーナー様1人であり、成約までのスピードが早くなるためです。分譲マンションの場合は意思決定者が管理組合のため、複数人が意思決定に関わることによって実際に修繕が決まるまで1年以上かかることも少なくありません。そのため、ご自身で修繕業者を選定する自主管理オーナー様や、管理を任せきりにしているものの修繕についてはご自身で判断されるオーナー様が、元請けとしてアプローチしやすいターゲットとなります。
このようなターゲットを絞り込むことで、彼らが抱える具体的な「悩み」や「不安・課題」が見えてきます。ターゲットオーナー様の主な悩みとして、以下の点を挙げています。
● 入居者の減少
● 管理の引き継ぎ
● 建物の老朽化対応
さらに、オーナー様の「客層」を理解し、その悩みをより明確にすることも重要です。船井総合研究所では、オーナー様を以下の4つの客層に分類し、それぞれの典型的な悩みを提示しています。
● A顧客:工事不安顧客(例:見積もりの適正性、施工会社への不信、比較検討したい、工事時期の判断)
● B顧客:こだわり客層(例:入居率を上げるためのデザインへのこだわり)
● C顧客:価格客層(例:できるだけ安く修理したい)
● D顧客:投資目的客層(例:投資目的でのリノベーション)
これらの悩みを解決することが、お客様への「提供価値」となります。ターゲットとするオーナー様の悩みやニーズを深く理解し、それに応える専門的なサービスを提供することで、競合との差別化を図り、より専門性の高い業態を築くことができるのです。
2.安定した集客を実現するマーケティング
二つ目のポイントは、賃貸オーナー向けのマーケティング活動を確立し、安定的な集客を実現することです。
高単価な大規模修繕工事の受注には、お客様が購買に至るまでのステップを計画的に作り上げることが不可欠です。
マーケティングの大前提となるのが「顧客の育成」という考え方です。
一度接点を持ったお客様(情報取得客、失注客、OB客)を自社の「顧客ストック」として管理し、メルマガやDM、感謝祭といった活動を通じて長期的に関係性を構築することで、効率的に見込み案件を増やすことが可能になります。
新規集客の方法としては、様々な媒体を複合的に活用することがポイントです。
船井総合研究所では、以下の集客方法を挙げており、特に「オーナー向けのセミナー」「DM」「WEB」を軸として安定した案件創出を図ることを推奨しています。
● PULL型集客
HP・ポータル、看板戦略、オーナー紹介、ブランディング戦略、オーナー感謝祭、TVCM・ラジオCM、野立て看板、リスティング広告、オーナーズスタイル・賃貸フェアのブース出展。
● PUSH型集客
オーナー向けセミナー、DM反響、DM送付からのテレアポ・セミナー、DMからの診断依頼、テレアポ・訪問。
中でも、オーナー向けセミナーは重要な集客チャネルです。
DM送付(例:1000通で10名集客)を主媒体とし、新聞折込やFacebook広告を補助媒体とすることで集客を図ります。
セミナー参加者10名から5件の現場診断につながり、そこから2~3件の受注(平均単価1000万円)が見込めるとしています。セミナー集客からの現場調査実施率は50%とされています。
WEB(HP・ポータル)からの集客も欠かせません。
オーナー様が検索するキーワードを分析し、有料広告や自然検索での表示順位を高める施策が有効です。
そして、顧客育成やブランディングに有効なツールとして「オーナー通信」があります。
これは、会社の信頼関係構築ツールであり、相談しやすい雰囲気を作ることを目指します。
また、DM(セミナーDM含む)を同封することで、反響獲得にもつなげる優先順位の高い販促手法です。
オーナー通信の構成例として、「〇〇地域」賃貸オーナーのためのお役立ち情報誌という形で、以下のような内容を盛り込むことが推奨されています。
● 編集長のごあいさつ
● 今月の編集スタッフ紹介
● 直接依頼と中間マージンの違いについて
● 今月のコラム:
「資産価値が向上できる診断報告書とは」
診断報告書があれば、修繕費積立がない場合の融資を受けやすくなること、築年数が古くても適切な修繕対応の証拠となり資産価値を上げて高く売却できるケースがあることを解説。
「資産価値を上げるための大規模修繕」
建物調査で発見されたクラックや漏水事例を紹介し、手遅れになる前に早期に診断・修繕することでライフサイクルコストを抑え、建物を長持ちさせ、資産価値を向上させることの重要性を説明。
「入居率が大幅に上がった大規模修繕事例」
実際の物件事例(築37年、工事前入居率4割→工事後10割、家賃2.5万円→3.3万円)を紹介し、大規模修繕(外観塗装・デザイン化、屋上防水、内観鉄骨塗装など)によって入居率と家賃収入が大幅に改善した効果を解説。
● 大規模修繕業者選びのポイント:創業年、施工事例、事務所の所在地、職人体制などを比較ポイントとして提示。
● 運営会社情報:会社名、住所、電話番号、営業時間、HPアドレスなどを明記。
このように、オーナー通信を通じて役立つ情報を提供し、会社の専門性や実績をアピールすることで、オーナー様からの信頼を獲得し、問い合わせや相談につながる導線を構築します。
これは塗装業の経営戦略における効果的なマーケティング手法の一つと言えるでしょう。
3.セールスの仕組み化で成果を出す
三つ目のポイントは、属人的になりがちな営業活動を「仕組み化」することです。
誰が行っても一定レベルの成果が出せるように、営業プロセス、使用ツール、ヒアリング方法などを標準化することが重要です。
営業担当者の「成果」は、「意識×行動×プロセス」に分解できます。より多くの成果を上げるには、意識、行動、プロセスのいずれかを変える必要があります。
また、「営業力」は「知識×ツール×スキル」に分解でき、営業力を高めるには知識習得、ツール活用、スキル習得が必要です。
これらの要素を会社として仕組みに落とし込むことが、セールス仕組み化の本質です。
大規模修繕の営業は、主に以下の4つのステップで進行すると解説しています。
1. 初回面談
ショールームや現場で行い、要望を確認。コンセプトロック、スケジューリングシートなど7点セットのツールを活用。
2. 現地調査
対象物件で行い、現調シートや持ち物リスト、報告書サンプルを使用。劣化状況の確認や写真撮影を行い、オーナー立ち合い時は劣化箇所を指摘する。
3. 2回目面談
ショールームで行い、見積書、現調報告、デザイン提案書など6点のツールを確認。劣化診断結果に基づいた見積提出、デザイン提案、今後のスケジュール決定を行う。
4. クロージング
ショールームで行い、契約書、保証書サンプル、(仮)工程表などのツールを使用。見積・診断結果の振り返り、デザイン最終調整、支払条件確認を経て、契約締結を目指す。
お客様が自社での購入に至らない場合、そこには「7つの阻害要因」のどれかが関係していると考えられています。即決できないのは、購入ニーズを阻害する要因があるからです。船井総合研究所では、以下の7つの阻害要因と、それに対する具体的な対策を提示しています。
1. 金額
予算に合わない、我慢する → 複数プラン提案、小工事対応、将来損失の説明
2. プラン
欲しい物ではない、提案不足 → 工事明確化、大規模修繕・補修の2パターン提示、プランシート活用
3. キーマン
自分で決められない、家族と相談 → 必ずキーマン確認・話す、オンライン活用
4. 時期
今すぐではない、時期不明 → スケジューリングシート活用、放置した場合の損失説明
5. 競合
他社に比べて高い、見積比較 → チェックシートで違い明確化、豊富なツールで圧倒
6. 会社
会社が信頼できない、大手の方が安心 → アプローチブックで会社紹介、ショールームで複数名対応
7. 自分
営業マンへの不安、思いを実現できるか不安 → 自己紹介、身だしなみ、社長・幹部対応
これらの阻害要因を一つずつ解消していくことが、成約率向上につながります。
また、営業の土台となる「ヒアリング」は非常に重要です。自社や商品を売り込むのではなく、お客様の声に耳を傾け、根本的なニーズを引き出すことを意識します。ヒアリングは、アイスブレイクを含む「土台作り」と、以下の3つの「きく」が基本です。
【 聞く 】
不満・不便を確認し、予算、時期、プラン、キーマンなどの基本情報をヒアリングする。
【 聴く 】
切り込んで、予算やプランなどについて深掘りの質問を行い、小さなYESを積み重ねながら主導権を握る「積極的傾聴」を行う。
【 訊く 】
具体化するために、競合に関する特定質問や、比較基準を確認する核心質問を行う。
これらのヒアリング手法や、建物診断、デザイン診断、CF診断といった適切な営業ツールを整備することで、営業パーソン全体のレベルを底上げし、成約率を高める仕組みを作り上げます。
これは塗装業の経営戦略において、安定した収益を確保するための重要な施策となるでしょう。
大規模修繕元請け化の成功事例
船井総合研究所では、実際に大規模修繕の元請け化に成功した事例も紹介しています。
● 株式会社 達美装様
塗装事業で年間6億円を売り上げていましたが、さらなる成長を求めて大規模修繕業態を付加し、年間1.6億円の売上を達成しています。
粗利率40%と高収益化を実現。大規模修繕専門ショールームや専門WEBサイトを活用されています。
● 株式会社 ベストウイングテクノ様
もともと防水工事の下請けをしていたところから元請けへ転身し、今では完全元請のみで大規模修繕事業を行い年間5億円の受注に成功しています。
セミナー、WEBサイト、ショールームを活用されており、年間300件以上の集客を実現しています。
これらの事例は、塗装・防水工事業からの大規模修繕元請け参入が、現実的な経営戦略として有効であることを示しています。
船井総合研究所への経営相談で、大規模修繕元請け化を成功へ
船井総合研究所には、全国の大規模修繕会社様との付き合いを通じて培った、成功のための「ノウハウ」と「答え」が詰まっています。
塗装・防水工事業の経営者様にとって、大規模修繕元請け化を検討する上で非常に価値のある情報源となるでしょう。
船井総合研究所は国内最大級のコンサルティング会社として、長年にわたり多くの塗装・防水工事業様の経営をご支援してきました。
特に大規模修繕ビジネスにおいては、全国の成功事例や豊富なデータに基づいた具体的なノウハウを提供しています。
競争が激化していく大規模修繕市場において、成功するためには確かな経営戦略に基づいた計画と実行が必要です。
本ページで概論はご理解いただけたと思いますが、貴社の現状や地域特性、経営資源などを踏まえた最適な戦略を構築し、実行に移すためには、専門家による個別のご相談が有効です。
船井総合研究所には、塗装業界専門のトップコンサルタントが多数在籍しており、大規模修繕元請け化に関する成功のノウハウを提供できます。
集客方法、営業手法、組織体制など、貴社が抱える具体的な課題解決に向けて、実践的なアドバイスを行います。
もし、内容をさらに深く理解したい、貴社に合わせた具体的な経営戦略を検討したい、大規模修繕元請け化の立ち上げを成功させたいとお考えでしたら、ぜひ船井総合研究所にご相談ください。
詳細については、下記「ご相談の流れ」をご確認ください。
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