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IPOに向けてのスケジュール感
IPO準備いつから始めるべきかをご存知ないケースが非常に多いです。
極端な話、来年上場したいんだという会社様もいらっしゃれば、
10年後上場したいんだ、という会社様もいらっしゃればということで、
上場準備にかかる準備期間をどれくらいと見積もるのが良いのか、
イメージのつかない会社さんが多いのではないでしょうか。
下記の図では、IPO準備に関わる関係機関として
監査法人、証券会社との関わり方と合わせてスケジュールを書かせていただいてます。
1. 監査法人と監査契約して監査証明を出してもらう
まず、監査法人監査法人と監査契約をして、
「御社の決算は適正ですよ」
と監査証明を出していただく必要があります。
このためには2年間監査を受けて、その適正意見を出していただかなくてはいけない、
と決まっていますので、TOKYO PRO Market以外の市場では最低限この2年間がIPO準備期間になります。
したがって、この2年間の監査の期間を考慮すると、
2023年に3月決算の会社が上場を目指したいと思った場合は、
一番早く上場できたとしても、2025年3月期が最短ということになります。
いきなり来年上場しようと思ってもできない理由は、このためです。
2. 証券会社と主幹事契約を結ぶ
もう一つ、上場準備始めるにあたり証券会社さんに相談する、というケースは多いと思います。
証券会社さんと契約を結ぶタイミングは、監査法人さんとの契約の後です。
ですので証券会社さんに早いタイミングでコンタクトを取っても、
あまり真剣に取り合っていただくことができない可能性が高い、
と認識しておいてただければと思います。
例外として、よほど業界でも認知度が高く新進気鋭の会社で
メディアでも取り上げられているような会社の場合は、
証券会社さんからぜひうちで上場支援させてください、とお話が来るかもしれません。
そうではない一般の会社の場合は
様々な案件を扱っている中の一社として取り扱われますので、
本当に上場する可能性が高くなってきた時に、
証券会社さんが本格的に本腰を入れて契約してくれるというのが実情です。
ですので、最近の傾向で言うと、証券会社に最初に打診するとした場合、
証券会社に質問されるケースでは、
「いつ頃を目指してますか?」
「どの市場を目指してますか?」
「監査法人決まってますか?」
と、聞かれます。
その段階で監査法人がまだ決まっていない場合、
「先に監査法人を決めて監査を受けて監査契約しましょう。
そこから本格的にうちと契約するかは検討しましょう」
と、言われてしまうのが実際でしょう。
証券会社さんと早めにコンタクトを取ることは決して悪いことではありませんが、
全体的なスケジュールの流れを把握された上で、アプローチしていただければと思います。
我々が今ご支援させて頂いてる会社さんは、
早いタイミングで一度、証券会社さんにお会いだけはしていただきます。
証券会社さんの担当者レベルでも関心度というのはありますので、
何社かの証券会社さんにお話を聞いていただいて、
そのタイミングで先方の関心度、そして、会社さんの証券会社に対する印象を含めて、
2社ほど、ある程度候補に絞っておきます。
その段階で次に、監査法人を見つけるというところです。
監査法人も我々がアレンジさせていただいて、きちっと監査契約を結びます。
そして監査を始め、ある程度進んだタイミングで、
もう一度証券会社さんに「この会社さんは監査法人と監査契約を結んで順調に進んでいるので、そろそろ主幹事証券として契約を検討していただけないか?」とアプローチするという流れでスケジュールを組んでいます。
したがって、この辺の手順も社内に詳しい方がいらっしゃらない場合は、
我々にご相談いただければと思います。
ただし、今お伝えしたスケジュールは、本当にスムーズに順調にいったケースです。
順調に行く会社さんは本当に少なく、実際は1年延び2年延び、その後上場するという会社さんがほとんどです。
私自身も10年かかりましたので、上場準備を始めて10年かかって上場するという会社も決して珍しくはありません。
ですので、2年間の準備が必要なのであれば、2年後の上場を目指せば良いという訳ではなく、やはり準備期間という意味で、3年から5年のIPO準備期間を想定しておいていただくのが良いでしょう。
「キリが良いから今から2025年のIPOを目指したい」というのは、実はもうかなりスケジュールはタイトです。
本当に頑張って2025年目指すのか、少し先だけれども2030年というところを一つ目安にし、一つでも前倒しできるように準備を進めるのか、そういったところも長期的な会社の事業計画と合わせて組んでいただく必要があるでしょう。
今からならいつIPOできるのか
それでは、今からならいつIPOできるのか、ということですが、
3月決算の会社さんが今最短で上場を目指す場合は、2025年の3月が最短ということです。
結構先に感じられるのではないでしょうか。
今年、上場承認が降りた会社さんは、
概ね3年から5年前には上場準備を始めていた会社さんです。
急に上場準備を始めて上場承認された会社ではない、と捉えていただくようお願いします。
より早い上場を目指すならTokyo Pro Market
ただ、もっと急いで上場したいという会社さんには
TOKYO Pro Marketという選択肢があります。
TOKYO Pro Marketだけ、少し変わっています
東京証券取引所にある市場、いわゆる第五の市場と言われるところですが、
ここ以外は、基本的に地方の市場、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所
あと、東京証券取引所です。
基本的には監査の期間は2年間必要となっているのですけれども、
この東京証券取引所の中の一部「TOKYO Pro Market(TPM)」の場合だけは
実は監査契約、監査期間が1年間で良いとされています。
したがって、3月決算の会社さんの場合、2023年から最短で上場したいという場合は、
2024年3月期の上場というのもスケジュール上は可能ということになります。
マザーズ、JASDAQを目指す場合の3年から5年の準備期間というのは、
会社として結構負担になるのでもう少し短いスパンで目標を設けたい、
という経営者さんの考え方の方もいらっしゃいますので、
そういった会社さんの場合は、このTOKYO Pro Marketにまず上場して、
その後、他の市場、東京証券取引所とか、名古屋証券取引所市場に上場する、
という選択肢を選ばれるケースもあります。
実際にそのようにTOKYO Pro Marketに上場してから、その後他の市場に上場したケースも
少しずつ出てきていますので、そういった事例も参考にしてください。
東京証券取引所の4つの市場の変化
実は、東京証券取引所自体が、2022年4月から市場が大幅に再編される予定になっています。
(編集注:2022年4月4日に再編が完了しています)
ポイントだけお伝えしますと、今、東京証券取引所は第一部、第二部、JASDAQ、マザーズ
という4つの市場プラス、TOKYO Pro Marketですが、この4つの市場の名称が変わります。
今4つある市場がプライム市場、スタンダード市場、グロース市場という
3つの市場に再編されます。
ですので、今から上場を目指している会社さん、ないしはもう今準備中の会社さんも
2022年4月以降の上場というケースの場合は、「マザーズやJASDAQに上場する」ではなく
「スタンダード市場に上場する」「グロース市場に上場する」と捉える必要があります。
市場の変化に伴う上場基準の変化
では、市場が変わることによって、何が変わるのでしょう。
上場の基準も実は若干変わります。
特に新興市場という位置づけにある、新規上場がよく行われるJASDAQ、マザーズという市場は、
それぞれスタンダード市場、グロース市場と変わります。
そして、すごくざっくりとお伝えすると、
若干上場の基準が高くなる、ハードルが高くなるという印象です。
特にJASDAQを目指してた会社さんは、スタンダード市場に変わることによって、
求められる時価総額の数字が若干上がります。
今までJASDAQの基準であればクリアできてたけれども、
スタンダード市場の基準だとクリアできないだろう、という会社さんも実際出てきています。
ですので、これから目指そうとする会社さんは、その基準も改めてきちんとご確認ください。
そうでないと、上場に向けて動き出す直前になって
自社が基準を満たさないことが分かった、となってしまうと非常に辛い思いをしてしまいます。
またマザーズも当然成長性が求められる市場ですが、
おそらくグロース市場と変わることにより、
企業の成長性をより厳しく見られることが想定されます。
実はこのグロース市場に変わることによって、求められる資料が少し増えます。
成長性に関する資料をきちんと提出しなければいけなくなりました。
今までは成長可能性に関する資料は任意で提出するものだったのですが、
これからは必須として提出しなくてはいけません。
さらに、その提出する必要項目もかなり細かく定義されていますので、
結構ハードルが高くなっているのではないかと思います。
今後想定されることとしては、
今までの水準でJASDAQ、マザーズを目指していた会社さんが、
新しい基準でそのままスタンダード市場、グロース市場に目標を変えて上場を目指した場合、
もしかしたら中には新しい基準だと上場するのが難しいと言う会社さんが出てくる可能性が非常に高いです。
では、そういった会社さんはどうしたらよいのかというと、
先ほどお伝えしたTOKYO Pro Marketへの上場を目指すというのも一つです。
TOKYO Pro Marketへ一旦上場して、そこでまた新しい企業の成長の形、
ないしは内部統制、管理体制の構築を形を作り、
次にステップアップとしてグロース市場、スタンダード市場を目指すというのも一つの道です。
またもう一つの流れとしては、地方市場です。
名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所、
このような地方の市場に上場を目指すという会社さんも増えてくることが想定はされています。
当然地方の証券取引所の場合は、若干上場に対する基準というのが異なりますので、
もしご関心がある会社さんは、各証券取引のホームページに
それぞれの上場の基準が掲載されていますので、そちらをご覧ください。
札幌証券取引所は、札幌に何らかしらの縁があるというのが条件であったりします。
その一方、名古屋の証券取引所は、そのようなエリアに関する条件というのは全くありません。
地方市場だと、その地元の会社さんしか上場できないのではないかと思われているのですが、
名古屋の証券取引所に関しては、そう言った条件は全くございませんので、
全国どこにある会社さんも上場を目指すことができます。
札幌に関しても、決して本社が札幌になくてはいけないというわけではありません。
例えば主要な取引先が北海道にあるなどのケースもOKとされる可能性もありますので、
何かしら北海道にゆかりのある会社さんは札幌証券取引所で上場を目指すというのも
一つの選択肢として考えていただくのも良いでしょう。
かなり情報をまとめるのは大変かと思いますが、
東証の再編の新しい情報や地方証券取引所の情報、
さらにTOKYO Pro Marketの情報を整理して、
自社にとってどういうストーリーで上場していくのが良いかというのを
一度まとめられるのが良いでしょう。