【インタビュイー】株式会社船井総合研究所 財務支援部 石田武裕(以下:石田)
【インタビュアー】株式会社船井総合研究所 女性社員(以下:船井)
倒産廃業、3年ぶり増加
倒産件数が3年ぶりに増加し、前年同月比も10ヶ月連続で増加しています。
本記事では、物価高騰などで今後さらに倒産廃業が増加すると言われる今、利益が十分に出ていたり、安心経営ができている企業以外がすべきことについてご紹介させていただきます。
倒産廃業増加の要因
船井
企業の倒産件数が増加しているのはなぜでしょうか。
石田
2つ要因があります。ヒト・モノ・カネのうち、
・人材不足
・資金不足
の2点です。
今回は、お金の部分の話をさせて頂きます。
資金不足の理由とすべきこと
石田
資金不足の理由は、
・コロナの影響
・融資の影響
の部分が大きいです。
2023年に入り、ゼロゼロ融資を返済している会社が増えています。
以前まで銀行に月額100万円の返済があった会社では、ゼロゼロ融資の返済がスタートすると200万円になり、倍になります。
差額年間1200万円分を確保することに課題を抱える会社は多いです。
船井
ゼロゼロ融資で企業が保たれたが、しわ寄せが今表れているのでしょうか。
石田
はい、返済問題が顕在化しているのです。
船井
企業の倒産リスクがあることは大問題ですが、自分の企業が危ないと見極めるポイントはありますか。
石田
今のビジネスモデルのまま続けていったとして、半年後にお金が無くなるような資金繰りならば、黄色信号が点いています。
船井
そうなった場合は何をすべきですか。
石田
資金繰りの確保が最優先であり、お金を借りる必要があります。
もう融資が出ない場合では、自社で対策を打つしかありません。リストラや利益確保の計画を立てるフェーズになります。
その上で止血をしてください。銀行側に対して返済のリスケジュールを依頼します。税務署に対しては納税を待ってもらいます。
例えば消費税の支払いがあるのですが、待ってもらわないと会社が回らないので、という止血が必要になるのです。
船井
そのような依頼は聞いて頂けるのですか。
石田
はい。ただしいつまでも無策のままではいけません。計画性が必要です。
税務署には、あまり厳しい計画は求められないかもしれませんが、銀行に対しては計画を持っていつまで返済を止めるのかということは示す必要があります。
船井
返済を待って頂くことにも、新たに資金を借り入れする場合も、経営が危ない会社には金融機関もお金を貸しにくいです。
なので計画を立てて提示することが大事になりますが、どのように計画を考えることが大事でしょうか。
石田
単年度の計画ではなく、少なくとも三ヶ年の計画を見せ、浮上できることを外部の方に示すことがポイントだと思います。
船井
半年後が危ないとなった時に、三年後の計画を作るのですか。
石田
はい。税務署や銀行も、まずは止血をする必要があるという方には応じてくれるのですが、止血をしている間にきちんと計画を立てるよう必ず言われます。
そこから少なくとも三ヶ年、単年度ごとに今の進行期はこういう政策にします、とそれぞれ計画を立てる必要があります。
船井
進行期ごとの政策はどう立てれば良いですか。
石田
短期でできる政策では、固定費の削減を一番に実施します。
例えば、役員報酬を下げます。「銀行にも税務署にも待ってもらっているので、社長の私は給料を貰いません」という覚悟をステークホルダーに見せます。
それ以外の無駄なコストが流出しているのであれば、費目を絞る必要があります。
中期的なものでは、本業の部分で売り上げを伸ばすための施策を模索しましょう。
半年かけて新規で営業をかけなければいけないのか、または単価を上げなければならないのか、という回復の計画を立てます。
倒産の危機になる前に
船井
倒産のリスクが生まれる前に事業計画を立てる必要がありますが、やはり中小企業にはリソースや人員も少ないため、アドバイザーが必要ですか。
石田
自社だけで完結するのがベストです。
ただ、末端の従業員にこのようなセンシティブな話は知られたくないでしょう。
船井総研が再生支援の現場に入る時は、部門の責任者の方と売上や収益を改善するための施策のディスカッションをします。
部門の責任者を巻き込んで、社内で巻き込む人を絞ってKPIを作成し、KPIを達成できているかどうかを、3か月or1か月おきにPDCAを回す必要があります。
そのような計画でないと銀行にも認めてもらえません。
船井
例えば10項目のアクションプランがあったとして、責任者が全て社長だとすれば、その10個は全て社長が行うのですか。
石田
これは石田部長が行う、これは船井部長が行う、これは社長が責任持って行う、と どの階層、レイヤーの人が責任者となってやり切るのかを決めて行うのが良いです。
利害関係者である銀行や税務署にも認められる蓋然性の高い計画になります。
船井
事業計画はとても大事なのですが、実際に危険信号が出てから軌道修正ができた社長の共通点はあるのですか。
石田
今は外部環境によって落ち込んでいるが、絶対この事業は回復するという強い思いと、確固たるビジネスモデルがある会社は必ず回復します。
反対に経営者の意思が中途半端で、再生した経験はほとんどありません。
経営者の意思と、伸びる事業を見極められるかもポイントになります。
そこで伸びる事業を選択し、いらない事業はフェイドアウトさせるなど、選択と集中が再生の局面では多いです。
船井
倒産の危険信号が出ないように、常日頃から財務を見ること以外にするべきことはありますか。
石田
資金繰りの予定は、状況が厳しくなってから作ることも多いです。
半年後にお金が無くなる可能性のある状態ではなく、常に自分で資金繰りの予定が立てられる状態にすることが大事だと思います。
リアルタイム経営やリアルタイム財務という形で標榜して常に数字を確認できるよう、投資や人員配置をしましょう。
その状態は投資できる余地があるという経営判断に繋がります。数字を可視化することが大切です。
他にも、最新の業績アップ事例を踏まえて、事業に役立つ情報を発信していく予定です。
楽しみにしていてください。