【講師】船井総研ホールディングス 経営統括本部
事業開発室 執行役員 岡 聡
【司会】株式会社 船井総合研究所 宮井 亜紗子
宮井:今回、岡さんにお聞きしたいのは、船井総研は経営コンサルティング会社ではあるのですが、経営者コンサルティング会社でもあると思うのですけれども、この違いについて教えていただきたいです。
お願いします。
〇経営コンサルティングと経営者コンサルティング
岡さん:一般的に、経営コンサルティングという職業は、仕事柄、いわゆる企業のある部門もしくは、会社全体の戦略立案とか、課題解決とかいう話でいろいろです。
大きな会社であれば、各事業部の担当部署、また、中堅や小さな会社であれば、場合によっては経営者の人と幹部の人が一緒になって、今後どういうふうなかたちで、企業の運営や事業を推進していくかということをお話します。
それに対して、我々はアドバイスをしたりサポートをしたり、何かツールを提供したりして、改善とか推進をしていくということです。
経営者コンサルティングという言葉は、船井総合研究所のグループの中では非常にポピユラーなのですけれども、普通は、世の中では言われないはずです。
この経営者コンサルティングというものに関しては、船井幸雄がいう企業は99%トップで決まるという考え方をもって、特に中小企業の場合は、オーナーが自分で決めてやらせるというようなかたちで実施している会社が多いわけです。
経営者の影響力が非常に大きいという中で、これは経営者の経営判断なのか認識の仕方、企業の運営管理の仕方が間違ってしまうと99%の影響があるわけですから、大きく間違えてしまいます。
間違った判断をしてしまうと、結果もすぐ出てしまって、間違った結果しか出ないです。
ですから、一番あるべき姿の経営をしようと思うと、経営者コンサルティングをして、経営者の人に直接お話をして経営者の方の悩みだとか夢だとか将来の希望であるとか会社をどうしたいとかなど、こういうことに合わせてこういうふうなかたちがいいですよとお話します。
すると、「なるほど、そうか」と、経営者も腑に落ちます。
さらに、経営者の方が組織内に自分の戦略だとか思いを浸透させていくというときに、上手にしゃべれる方とか上手に推進される方とそれができない方がいらっしゃるわけです。人によっていろんなタイプがあります。
また、自分はこういうふうに思うのだけど、社内に誰も相談する人がいない、経営者は全員が部下ですから、部下に自分の悩みをあまり赤裸々に語るのもよろしくないですから、社長同士のネットワークの中で相談を他社の社長さん、お友達の社長さん同士も多いのですけれども、普段は自分一人で考えて自分で決めて進めるため、不安もあるのです。
ここに対して、経営者に寄り添って、「こういうふうなかたちでやっていきましょう、なぜならば、、、」というふうなかたちで現在と未来に対して、ある程度調和していくようなかたちで経営の推進をするということです。
経営者に自信を持って頂く、経営者に正しいということに関して「やはりそうだったのか」と確認してもらいます。
その後、さらに先ほどお話ししたように、下に落とすのが下手な方には、「社長はこういうような思いでこのようなかたちで進めて、会社をよりよくしたいのだけど、皆さん分かりますか」と、経営者の代わりに、経営者の言葉を代弁して、コンサルタントとして社内を動かし、その調整もしていくので、社長の右腕でもあるし、分身でもあるということです。
会社が大きくなってくると、経営者の方は有能な分身だとか右腕、左腕を作るわけですが、この辺りのことができなければ、それを代行するという要素を持っています。
また、できる方がいらっしゃる体制でも、経営チームというものがあって、ある程度ご機嫌な状態になっていただいて、自信を持って事業に取り組んでもらう、このようなかたちが正しいのです。
また、どうしても部署の中での課題解決になると、部分最適になってしまって、部署の責任者の方の立場上の問題、会社の中での人間関係や求められている役割とか現状の課題の中で、いろいろなしがらみのある中での判断なのです。
その辺に関しては、本来は経営戦略と社長や経営者の思いは反映されたものにならなければならないのですが、必ずしもそうならないということです。
ですので、船井総合研究所では、経営コンサルティングをしている場合には、本来は経営者コンサルティング、経営陣たちが納得して後押しをするかたちで、その体制を作っていくことの力になりたい、ということを考えているのが経営者コンサルティングと経営コンサルティングの違いであり、関係性です。
宮井:ありがとうございます。
船井総研では若手や新卒採用を100人くらいされている中で、経営者に対峙するのはなかなか難しいと思うのですが、特に若い方たちはどういう所に気を付けて経営者コンサルティングに取り組めばいいののでしょうか?
〇若手コンサルタントが意識すべきこと
岡:経営者コンサルティングのベースというのは、経営者の人としての生き様であり、思いであり、いわゆる、哲学(philosophy)と言われるものです。
これを抑えていないと、経営者の方に若手が上から「こうですよ、社長。」と言っても聞いていただけないことが多く、あまりよろしくないです。
経営者の方に寄り添って、経営者の後押しをしたり、引っ張ったりすることで企業を大きく成長させるということに私たちは挑戦していますが、経営者の方にお話しする時に、目線は上でも下でもいけないということです。
経営者と対等なパートナーとしてお話し頂くためには、起業から現状まで、自分が会社を引き継いでから現状まで、初心も含めて現在の思いも含めて、いろいろな時系列の中でいろいろな感情や思いがあるので、そこも含めて、コンサルタントは知る必要があります。
要するに、なぜこの事業を始めたか、自分がこの会社を継いだとき、生んだ時に何を思ったのか、何をしてみたかったのかという創業の精神であるとか、自分自身が事業を引き受けたときの思いとか、初心ですかね、思ったときのスタートラインを共有する必要があります。
そして、何が将来してみたいのか、経営者の夢です。
元々の問題意識、過去に思っていた熱い想いや未来に向かって何をするかという双方を理解しておかないといけないと思います。
さらに前に目線を置きますと、会社を起こしたとき、引き受けたとき以前の問題があり、自分の生まれてからの育ちだとか、過去の経験だとか、学生のときだとか、前職への思い、そのときに感じた理不尽なこと、これは絶対したくないなどのルーツの問題です。
その方が何を大切にしていて、何を良しとするのかしないのかなど、是々非々、価値観、価値基準を知っておいたほうがいいと思います。
例えば、我々は経営コンサルティングで限られた時間の中で仕事しています。
すぐ仕事に入りましょうとなる場合もありますが、仕事が始まる前、お食事の時間にそのようなお話をお聞きしておく必要があります。
特に、ファーストコンタクトがあり、仕事を依頼したい、お願いしたい、こういうときに充分にヒアリングする必要があります。
関係部署のヒアリングもですが、一番重要なのは経営者のヒアリングです。
先ほどもお話しましたが、経営者自身がどういう問題意識をお持ちで、将来何をしたいのかを知り、その路線にあうようなかたちで経営のアドバイスをしていきます。
何が重要かと言いますと、経営アドバイスにはいろいろな手法があります。
例えば、病院の場合、外科的手法で激しくする方法もあれば、内科的治療みたいにじわじわと組織の体質改善からするなどいろいろあります。
その他にもテクニックや新しい武器を投入したりなどいろいろ仕方はあります。
これは、有機体的な存在である企業においていろいろな関係性とかしがらみがある中で、経営者としては舵取りしています。
そこに対して、どういう手法を持ち良い結果を出していくかに関しては、その方の体質や体力の問題です。
良い提案でも、経営者の想いと合致しない、そういう方法はとりたくないという思いがありますと、例えば手術をしようとすると後々問題になります。
ですから、体質と体力や組織自体の今現状のスキルや戦力、戦意、戦うことに関して士気が上がっているのか、ダウンしているのか、経営者は士気が高くても、組織の士気が低いとなかなか良い状態になりません。
経営者と組織との間にミスマッチが起こってしまいます。
この辺の全員ご機嫌、経営者もご機嫌、中間管理職もご機嫌、現場もご機嫌というような状態にするためには、一番影響力が高い社長がまずご機嫌でないと、下がご機嫌ではなくなるわけです。
ですから、一番影響力の大きい社長から、まず始めるというのが経営者コンサルティングの前提です。
それができたあとは、幹部、下の方にも社長の思いと齟齬があるだとか、それから、思い違いだとか、まだそこまで力が足りない状態だとかいろんなことがあると思うのですけれども、その状態を確認しながら進めていくというのが経営者コンサルティングです。
経営者コンサルティングと言うと、組織のピラミッドでいう経営者の思いというところから現場までずっと違和感なく組織内を浸透させるような戦略の落とし込みのことです。
だから、経営コンサルティングよりはもう少し大きな概念でふわっと全体を見ていたり、部分を見ていたりするのですけど、経営者コンサルティングという言葉を見たら分かるのですけれども、経営者一人だけではやっぱり99%無理なわけで、事業が進まないので、経営者の想いをどういうふうなかたちで下に浸透させるかという視点で、船井総合研究所では語られています。
そのためには、いわゆる自己開示、経営者のことを知らないといけないし、知ろうと思ったら、若いコンサルタントが経営者と対峙するときは、自分自身が自己開示できていることが必要です。
お互いがオープンマインドになれて、何でも相談できるという状態を作っているかというところがスタートラインとしてとても重要です。
船井流のコンサルティングがなかなか思うように前に進まないという状態は、要は一人の人間として経営者と対峙している状態になってないということです。
つまりは、御用聞きや便利屋みたいなところに入ってしまっているから、経営者コンサルティングにたどり着かないということだと思います。
宮井:だから我々は、経営者さんとの打ち合わせというのをすごく重要視しているということなのですね。
〇月次支援型コンサルティング
岡:その通りです。
普通の会社のヒアリングより、そうとうウェイトが高いです。
これも独特なのですけれども、毎月私どもが月次コンサルティングという手法を取って、会社に個別コンサルティングを展開しています。
この個別コンサルティングのウェイトの中で経営者だとか、経営者が頼りにしている幹部の方と、かなり影響力のある話、大きな課題な課題について本質的な話をしている時間のウェイトが、たぶん普通のコンサルティング会社よりも大きいです。
普通の会社のコンサルティングは、Do HowだとかHow Toとかを現場のほうに導入していってPDCを回す、こういうようなかたちで中企業の経営コンサルティングを進めている会社が非常に多いと思いますけど、我々はそうではなくて、重視しているのは、経営者からの理解と、その方のエネルギーを組織内にズドンと落としていく、理念を中心に組織浸透させていくところにエネルギーをかなり使う、こういうことです。
宮井:ありがとうございます。
今回は岡さんに経営者コンサルティングと経営コンサルティング違いについて、お聞きしました。
ありがとうございました。
岡さん:ありがとうございました。