〇はじめに
今回は、「差別化」についてのお話をさせていただきます。
タイトルにあるように、非代替性が高い魅力を進めていこう(キラー化)という発想です。
船井総合研究所のマーケティングは、競争がどんどん激しくなり、市場がどんどん成熟していく中で、どう打ち勝つかという発想とともに、どう負けないか、お客様をどう引き付けるかということ、それからお客様をどう集めるかということ、タイミングに合わせてどう変化させていくかということ、が非常に重要だという考え方を持っています。
根底にあるのが、他所と同じ、人並みではお客様を取ることはできないという考え方です。
つまり、差別化をしていく必要があります。
これは、世界的マーケティングの考え方の中ではノーマルな考え方、いわゆる差別点を作ること「make the difference」です。
アメリカのウォールマートなどでもかなり強く言う言葉で、世界最大の小売店であっても「make the difference」という言葉を使っています。
〇差別化をはじめるには
どのようなかたちで違いを作るかというと、初期段階では力があまりありませんので、いかに「お、変わってるね」と言われるような魅力を作るかということが重要になります。
多くの場合、例えば、投資コストがかかることはなかなかできないので切り口を変えます。
切り口に関しては、
・商品の見せ方、店の見せ方を変えることと同時に
・他所がやってない時期にやる
・やりたくないことをやる
といったかたちのずらしが非常に大事になるわけです。
このようなかたちで、低コストで、主に一番効果的なのは、いわゆるカスタマージャーニーです。
船井総合研究所では、三位一体、四位一体といいます。
販促をして、お客様が売り場にやってきて、商品を触って、接客を受けて帰っていくという顧客設定においては、当然、お客様がお店の存在や商品の存在を知って、初めて動機づけが少しできて、そして動く、というかたちになります。
WEB上であってもリアルであってもまずは見つけてもらって、足が止まり目につく状態を作らなければなりません。
主に販促の力が効果的で、アテンション、インタレスト、デザイア、メモリー、アクションのAとIが大事です。
Aがアテンションです。
「お、なんだ、これは」という話です。
インタレストは「あっ」と思っても「もうええわ」と思われたら困るので、興味を引けるものでないといけません。
「見たこともない」「何が動いているんだ」ということが非常に重要なかたちで、ここから入ってお客さんを一旦引き付けます。
〇差別化の途中、スペシャリティの必要性
そういうテクニック論だけでやっていっても、お客さんは固定化しないし、飽きていきますから、これをどういうふうなかたちでビジネスに磨いていくのか、といったかたちで次の段階になるわけです。
要は「変わっているね」というのは変わっているだけです。
だから、ぽっと出でぽっと消える可能性もあります。
変わっている状態を「好き」とか「いいね」という状態にする必要があります。
専門化ということは、専門以外の人から見ると興味がないということになります。
いわゆるある一定のニーズや思考をもっている人たちが見続けてくれるようなファン化が大事です。
ファンを引き付けるだけのスペシャリティな製品、もしくはサービス、スペシャリティな販促、スペシャリティなプロモーションといったようにスペシャリティが大事です。
スペシャリティというのは普通のレベルではできない、知らないことで、この深みが非常に大事になります。
例えば、普通のお茶のお店からフレーバーティーの専門店をやってみようという話といったように深く掘り下げます。
この辺りでやっていても、またまた商売は競争が厳しくなってきます。そうすると、もう突き放さなければなりません。
喧嘩ではないので、ビジネスで突き放さないといけません。
これはダントツ化を図っていくということです。ダントツ化はどうやって図るかというと、独自性で図ります。
他とは少し違う、ほかにはない、オリジナリティがあるということで、ぐっと注目されるようになります。
だから、例えば、フレーバーティーの専門店があったとして、どんなフレーバーティーの専門店かということが大事になってきます。
この辺で「どんな」が突き進んでファンを魅了します。こういう状態になってくることが非常に重要になります。
この辺りにくると「すごいね」と思われるようになります。
この辺りの心の動きや消費者の心理をついたビジネスをやっていくことが大事になります。
〇経営者の哲学、理念、ビジョンそれを目で見える差別化につなげていく
船井総研は、差別化と独自化のようなことを多くの業種でやっています。
恐らく先進的な企業やこれからの社会の主流になってくるのは共生化だと思います。いわゆるサステナビリティという話です。
社会にご迷惑をかけないこと、例えば、人間も動物も健やかに暮らせる状態になっていきたいということです。
ここまでいくと、相当突き抜けていますから、権威が出てきて本物といわれるようになります。
日常のビジネスをやっていると、人間は習慣の動物なので大体毎日朝起きて、毎日同じ行動をして、毎日同じように寝るということを社員も経営者もやりがちです。
昨日と同じ作業をマニュアルやルーチンを作ってぐるぐるPDCAを回しながらやるという話だけでは進化がありません。
経営者の役割というのは、専門性を高めるということです。
野球選手でも同じで、野球がうまいからプロ野球球団に入団しますが「私はバントがうまいです」「私は盗塁がうまいです」といったように何かがないといけないはずです。
この辺りの話は、いわゆるタレントのプロモーションでもすごく考えられていて、特にAKBを生み出している秋本康先生は一人一人の個性を非常に高めていくことを主軸にしています。
こういうことで、独り立ちさせていき、個性も発揮させていきます。
メラビアンの法則というものがあります。
社会というのは情報の発信や受信というところでいろいろなものが出されていき、入ってくるわけですが、受信能力の中で視覚情報や聴覚の情報は比重が高いです。
一番高いのは視覚情報です。目で見える差別化というのが一番効果的ということは間違いありません。
五感で分かること、第六感で分かること、なんとなく分かること、いろいろと差別化はあります。
ビジネスの差別化で非常に重要なことは、経営者の哲学や理念、ビジョンで、これが商売の元々の動機になっています。
それを突き詰めて実践していくために、今の商売をいろいろな社員さんと経営者の方がやっています。
これは、根底にあるものです。
例えば、お客さんはお店でおいしい料理やドリンクを飲んで、おいしいということが五感で分かります。
しかし、メニューブックに書いてある料理の原料や加工に関してものすごくこだわっていること、しっかりとした理念や考え方をもってやっていること、基本的には無農薬の物を使っているといった情報は、そのメニューブックを読まないと分かりません。
いわゆる、目で見えるところの差別化を最大限にしようと思うと、相当頑張らないといけません。
頑張り続けたり、バーを下げずに一定規模でやり続けたりするためには、従業員が365日24時間、基本的にクオリティを下げないといったかたちで、表面化で特徴を出していったり、魅力を伝えていったりするわけです。
ベースは哲学や理念、ビジョンが大事です。
〇バックヤードの効率化と、お客様の関係
差別化を有効活用しようと思うと、基本的にマーケティングや経営によく出てきますが、お客さんの目に触れるところに関しては、手厚くします。
バックヤードは粗末でもいいとか、小さな本社とか、簡素なものでやっていくのが筋だろうという話です。
これは難しい話ですが、全面目で見えるところを差別化して、良心的なところほどバックヤードなど無駄なものは削って、しっかりとお客様に還元できるようにするという考え方を持っているからです。
この考え方が無かったら、バックヤードも豪華にしてしまいます。
それは、自分が気持ちいいからです。
社長室を豪華にし、従業員のスペースも豪華にして、お客さんよりも従業員が喜ぶ状態にします。
そうなると、そこにコストがかかってしまい、差別化が小さくなります。
もちろん、効率化も差別化もできればいいですが、それは難しいです。
しっかりと効率化することはなかなかお客さんには見えません。
仕入れの効率化、例えばワークスケジューリング、シフトの効率化など、やろうと思ったらできるけれど、できないと、結局お客様には不利益なものが還元されていきます。
この辺の考え方、お客様の体験、価値を最大限にすることが、ある程度理念とビジョンに含まれていて、それが実行されているのが、いい形だと思います。
だから、哲学や理念に関しても、お客様に向けてすべきことがはっきりしているほうが、差別化が発揮しやすくなります。
〇お客様満足と、従業員満足の関係
豊かな顧客体験の話がよく出てきますが、これは流行りの言葉です。
少しずつコンセプトや捉え方が変化してきました。
昔は、カスタマーエクスペリエンスの前にCSみたいな発想がありました。
そのあと、いろいろな切り口があって、カスタマーデライト、お客様を歓喜させることが非常に重要ではないかということを言ってきて、今時は体験というかたちで表現されることが非常に多いです。
つまり、お客様が喜ぶということ、お客様が楽になったり、楽しくなったり、お得になったりといった形で愛用してくれる状態を作ること、使用者満足を獲得するということです。
これ自体をやるときに、昔からの経営の課題になっていますが、顧客と従業員がいます。私は、経営の目的は顧客と社員を両方幸せにすることと定義しています。
顧客満足が先か、従業員満足が先かといったような話がよく出ますが、冷静に考えたら分かります。
従業員が満足したり、サービスの価値を腑に落として理解したりしていないとお客様に提供することはなかなか難しいです。
特に、今時は、お客様を大喜びさせるということをマニュアル以上の行為によってさせる、いわゆる想定されていない場合であっても最高のパフォーマンスを発揮することをどの企業も求めています。
この状態にしようとするときに、重要なことは、従業員自体がお客様に差別化の行為や、最高の体験をすること自体が楽しい、働いている社員が「うちの商品やサービス、めちゃめちゃ良いです。
私もよく使うんです」と言うくらいになってくれたほうがいいです。
これは昔から理想論として言われています。
給料が高い、安いというのは、ある局面においてはどんなビジネスでもあります。
それはそれとして、いろいろな問題を解決していくことは非常に重要なことですが、お客様を最高の状態にするためにキャストや社員、クルーが最高の状態でパフォーマンスを発揮できるようにし、それをするためにバックの人間が支えることを会社は目指しています。
この辺は、ディズニーランドさんでもそうですし、星野リゾートさんでもそうです。体験をある程度意識したビジネスをしているところは、理論上は相当昔から経営の理論の中ではやっています。
バックヤードはできるだけ効率化しながら、店頭で従業員が全面に出て、わくわくを提供しています。
従業員がわくわくしながら仕事をすると「こんなにストレスがなく、こんなに従業員が楽しそうにやっているということは、変なことはしてないな」とお客さんに思ってもらうことができ、実は付加価値が高まり、値切らなくなります。
「こんなレベルなら安くて当然だ」という話もありますが、従業員が楽しそうに働いているところは、お客さんも信用できるので安心します。
このようなかたちで利益を獲得するときに、人しかできないサービス、製品の提供、販売によってお客様に喜んでもらうことがビジネスの基本、社会の基本的な成り立ちです。
これは理論上はそうで、ただ、コンセプトとしては効率的な経営ということを考えたときに、バックヤードをできるだけ小さくすること(逆さまのピラミッドと言われていますが)ではなく、お客様中心にして、本部が偉いのではなくお客様が偉い、という信念で、最大限喜ばせて顧客を獲得していき、企業が成り立つようなかたちにしていくことが言われています。
これをやるのはなかなか難しいですが、昨今の状況は少し変わってきています。
〇バックヤードの効率化と、DXの本来の目的
なぜ変わってきたかというと、ロボットやAIやビックデータの活用というものが、ある程度研究されて実用化してきたからです。
つまり、今までは、全面に人手をかけて、とにかくお客様サービスをよくするとなるとバックヤードは効率化していて小さな本部を肥大化する傾向にありました。
しかし、最近は新しいシステム、技術を利用することにより劇的にバックヤードが効率化できるようになりました。
駄目な会社は、デジタルトランスフォーメーションの考え方でも一緒ですが、効率化だけや低コスト化だけで喜んでしまいます。
しかし、それは、狭義のDXの目的です。
そうではなくて、お客様の体験価値を高めるところに全面的に入っていくことが大事です。
ということは、AIやロボット、ビックデータで大体的なサービスや業務に関して、人の魅力満載でやっていきます。
できるだけバックヤードは無人化で、お客様対応に関しては充実した体制になっているという状態を作っていき、人は人らしい仕事をすることによって差別化を実現していく方向にあると思います。
この差別化の今の時流を理解してもらったうえで最初のほうに戻ってもらい、それも、単なる「変わっているよ」とか、「ちょっと楽しい」では駄目です。
我々しかできないこと、我々だから現場でお客様にこの体験を提供できるということ、これはなかなか同業者が食らいつくことは難しいです。
このような人の動きを瞬時に判断しながら、提供されるサービスの差別化、こういうものを高めていくと非代替性が高まります。
「もう私はほかのところに行きたくない」「あそこはもう全部分かってくれて気持ちよくやってくれる」というような状態になりやすいです。
これを我々は目指してダントツ化させていきます。
さらに、自分たちだけではなくて、周辺の業者にももっともっとお客様が大喜びになるようなかたちで、いろいろなビジネスの組み換えや考え方の転換をやっていくかたちで、社会的影響力を高めていくぐらい目標となる企業になっていくということが共生化につながっていくのだと思います。
そういう意味で、先進的な企業はようやく社会の中で少しずつ発生していると私は考えています。
本日は差別化のお話をさせていただきました。次回の記事もお楽しみにしていてください。