今回は、船井流ライフサイクル論をご紹介します。
船井総研のコンサルタントはライフサイクル論を多く用います。
一般的には、プロダクトライフサイクル理論のことです。
マーケティングを学ぶ方はご存知の理論だと思います。
「船井流ライフサイクル理論」は、これを発展させたものです。
プロダクトライフサイクルの概念
図は一般的なプロダクトライフサイクルです。
メーカーで良く使う、製品寿命のことです。
ある製品が開発されて、市場に導入される、そして成長します。
ところがある程度まで伸びると、やがてピークアウトします。
ピークアウトの主な原因は、2つです。
①次の買い替えまでが長く、売れなくなる
ある程度市場に広まると、様々な理由から簡単には壊れなくなります。
すると、買い替えが遅くなり、1人あたりの購買頻度が下がります。
②ライバルが類似商品を出す
市場に広まると、当然ライバルも増えます。
以上から、だんだんと市場が成熟し、衰退します。
最初は需要が多く、供給量が少ないため売れます。
しかし、次第に需要と供給が反転します。
最初はパンフレット代わりに、
「こんな市場を見つけた」
「こんな画期的なものを作った」
と世に出ます。
この時、早くマーケティング理論でお客様を早く見つけて、ライバルが出るまでにどんどん売ります。
そして、ライバルの攻撃を受けて利益を獲得しながら成熟期に向かいます。
しかし、成熟期にもライバルの攻撃は激しく、市場の伸びも限界が見え始めると、生き残りをかける衰退期に突入します。
1980〜90年代のデジタルカメラが一例です。
かつて一世を風靡しましたが、スマホのカメラ機能搭載などから衰退しました。
衰退期のポイントは、損しないような形で、生き残りを図ることです。
衰退とは「売れない」「儲からない」「伸びない」ことです。
衰退して0になる市場もありますが、小さく残る市場があります。
マニアックな顧客や保守的な顧客など、少人数だけど欲しい人もいるためです。
ライバルはそのうち消えます。
すると、残存者メリットが生まれます。
・需要と供給
・ライバルの数、攻撃量
に合わせて製品やサービスが陳腐化し、利益が減ってきます。
昔の日本の大手の家電メーカーは、計画的陳腐化をしました。
毎シーズン新製品を出しますが、性能などの進化は少しずつです。
少しずつ変えることで、都度新しいものが良いとマーケティングを展開します。
各社「ウリ」を作るため、計画的陳腐化もいとわず、新商品を発売し古い商品を守りつつバランス取りながら展開しました。
プロダクトライフサイクルはアメリカの古典的な理論です。
衰退期の後がありません。
衰退期以降の研究をしている人もいません。
ライフサイクルミックス
プロダクトライフサイクルと形の似た、ライフサイクルミックスがあります。
例えば市場にMDプレーヤーが出た後、MP3プレーヤーが出ました。
新しいものへの乗り換えや上乗せを示したものです。
ファッション業界は、新ブランド展開を次々にします。
ブランドの寿命の人気は30年持たないと言われています。
特に日本は狭い市場のため、お客様を集めようとブランドと製品が増えます。
狭い市場で多品種少量の形を続けると、通常無理が生じます。
しかし、市場が無限に伸びるならば、成り立つという理論です。
ライフサイクルと船井総研の歴史
下図の船井流のライフサイクル理論は、少し船井総研の歴史とも関係しています。
船井総研の歴史をライフサイクルミックスに書いてあります。
元々、創業者舩井幸雄は、1970年の創業当時、繊維業のコンサルティングが得意でした。
しかし、周りでは量販店、大型店が伸びていました。
当時衣料品は、小さな衣料品店か、スーパーの2階などの小規模販売でした。
百貨店などは、元々衣料品、化粧品、宝飾品の比率が高いです。
きらびやかな買い回り商品、特に洋服が商売の主軸です。
利益が多く出るため、服飾雑貨も売りながら次々と衣料品の大型店を作りました。
その一方で、当時の船井総研役員コンサルタントが、食品と飲食のコンサルティングを始めました。
そしてだんだん豊かになると、消費が増えてきました。
重視していく順番は、衣・食・住です。
一見食が大事かと思いますが、違います。
古代から権力者が権威を象徴するため、身だしなみを大切にしています。
もちろん食も、お腹を満たすことから、食を愉しむにシフトしました。
服も食も満たされると、家の中が寂しいと、住関連に興味が向きました。
そこで住関連のコンサルティングが始まりました。
衣・食・住が満たされると、物は要らないと、リサイクルショップを展開します。
そして、コト商品、いわゆる行為に対して行う商品です。
経済のサービス、ソフト化、サービス経済化です。
旅行やキャンプ、バーべキューなどで、あれほしい、これやりたいとなります。
その時にサービス業が出てきて、旅行代理店が普及しました。
お困りごとの括りで相続、納税、企業の労務問題などを、専門家に任せる人が増えます。
基本的な衣・食・住が豊かになったからです。
今は金融や情報が必要な時代になってきました。
船井総研のコンサルティングはライフサイクルミックスをして、生き残りました。
さらに新しい業界や、伸びる業種も提案してきました。
今でもアパレルや、食品のコンサルティングもしています。
その上で次々とボリュームが拡大するようなセグメントへのコンサルティング手法を開発し、そこのお客様を大切に対応してきたからです。
船井総研がお客様に提案すると同時に、船井総研自身も実践してきました。
下図が、船井流ライフサイクル論です。
細かいですが、タイミング毎に
・どういう商品
・どういう価格戦略
・どういう品揃え
・どういう売り方
・どういう店づくり
・どういうサービス
を中心に力のメリハリをつければ、勝ちやすいかを説明しています。
船井流ライフサイクル理論はプロダクトライフサイクルと視点が違います。
・プロダクトライフサイクル:メーカーがものを売る時の視点
・船井流ライフサイクル :お客様がどう買うかの視点
お客様はメーカーと違い、買い続けるため、衰退の後消滅しません。
プロダクトライフサイクル論のように、成熟期を迎え、ピークアウトして需要と供給が逆転し、マーケットが縮んで衰退すると捉えません。
ボリュームがある程度落ちた後、安定期第一期、第二期、第三期と考えます。
中身は時代に合わせてアップデートし、より洗練され、より競争に勝ち残った素晴らしいシステムや業態が勝ち残る考え方です。
右肩上がりの青い線はモノ中心です。
お客様の購買欲はあるが、市場にものがありません。
大量に作って、拠点を増やしながらどんどん売りたい状態です。
モノの作り方、さばき方、売り方を考えれば良いわけです。
これで総合的に一番になります。
この時、力で圧倒します。
船井幸雄がメインでコンサルティングをやっていた時代です。
そして、右肩上がりの後、ピークアウトしています。
しかし、急に方向転換できないため、しばらくは同じ路線です。
今まで作ってきた商品と雇ってきた従業員がいるからです。
バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍などです。
しかし、さすがに方向転換する時期がきます。
それがパラダイムシフトです。
専門店に商品を納品する時、在庫をお店に出したら、お客様が即買っていました。
「なんでもいいからほしい」と言い、買っていきました。
入れ食い状態です。
船井総研には3回安定10回固定の法則があります。
10回お店に足を運べば、大体そのお店のことがわかり、自分好みのお店かわかります。
20回、30回行くならば、非常に気に入っている、自分の価値観に合っています。
このように自社のファンを増やしながら商売をしています。
しかし、そのようなお店は多数あるため、自社の強みを切り出しお客様に魅力的な提案が必要です。
例えば、アンティーク時計を日本一多く置いているお店はお客様が来ます。
属性をある程度明確化し、さらに狭属性化させます。
小さくてもいいから、そこできちんと利益を出します。
併せて、属性を絞り込むと、ターゲットも明確化されます。
ターゲットと商品が明確化すると、その個人がどういうものを、どういうことに使っているのかが見えてきます。
パーティーにはこのドレス、父兄参観日にはこのドレスと、機会毎に提案します。
ピークアウト後は、専門性を持った商売や業態、専門性に対応できる販売員を増やします。
それを続けると、さらにお客様に刺さるような商品、つまりコンセプトを明確化して、お客様の心を引き寄せられます。
独自の企業が持つ魅力を大切するのが、船井総研のライフサイクルです。
これからは
・社会と共存していくビジネス
・持続性があるビジネス
・より本物化・一流化していく
ことで権威を高めていく企業が求められます。
以上が、船井総研のライフサイクル論になります。
ほかにも創業者船井幸雄の言葉や船井流についてご紹介していく予定です。
楽しみにしていてください。