2030年に向けて2023年に取るべきアクション
坂田:
早速ですが、2023年に経営を変革するポイントとして、2030年に向けて取るべきアクションについて遠藤さん教えていただけますでしょうか。
遠藤:
では、私からお話させていただくと、自動車業界非常に大きな変換期と言われていまして、100年に一度の様に言われているのは皆様ご承知かと思います。その中で2030年に向けて、特に今年我々が勉強会の皆様にお伝えさせていただいているのが、大きくこの四つでございます。一つ目が、新たなエコシステムを構築していくということ。今までは商品の価格の戦略競争で勝負してきた会社様が、特に大手向けも含めて多かったと思うのですけれども、それ以上に新たな収益モデルや相乗効果を得られるような事業のきっかけを作っていただきたいというのが一つ目になります。二つ目は、よりリカーリング型の事業モデルへの転換といったところで、リースやサブスクなどの積極展開も含めて、次世代に向けてお客様に継続的な価値を提供することで長期的に車屋さんとして収益を得ていけるようなモデルへの転換、付加も含めて是非やっていただきたいということです。そして三つ目が、顧客中心思考に基づく事業戦略と先手経営。多くの顧客を抱えている車屋さんが非常に多いと思いますが、そのお客様向けに自動車事業ももちろんなのですけども、コングロマリット化・多角化経営といったところで、ほかの価値提供や商品サービスの提供にチャレンジしていただきたいです。そして四つ目が、そういったところも含めて、新たなことをやっていく時の、既存事業の生産性向上や社員さんの早期戦力化など。省人化が進められることは、実際我々の勉強会の会員様の中でも多く取り組まれていまして、そういったところのデジタルをしっかり導入していただきながら、よりオペレーションの強化、省人化を含めて進めていただきたいと考えております。こちらが今年2023年に是非取っていただきたいアクションでございます。
坂田:
なるほど。今のお話を伺うだけでも、経営がより複雑化していき、それに対応するためにやるべきことがたくさんあるような感じがしますが、次にどうしたことをやっていったらいいのか具体的にお伺いしてまいりたいと思います。
新たなエコシステムを構築していく
坂田:
まず一つ目が新たなエコシステムを構築していくということなのですけれども、具体的にはどういったところがポイントになるのでしょうか。
遠藤:
はい。キーワードとして特化、拡張、多角化、新たなニッチ領域を挙げさせていただきました。特化というのは、改めて皆様が取り組まれているど真ん中の勝てる本業の事業ですが、より専門化していくことが必要になってくると思います。そして我々の勉強会の会員さんでも自動車だけではなくて、ガソリンスタンドを付加するなど、そういったところにチャレンジされている会社様もいらっしゃいますけども、そのように拡張して、より一拠点で大きくしていくといったところも一つのキーワードになっています。それが関連性の高い周辺事業でやれるといいなというところが二つ目(拡張)。三つ目(多角化)が、自社の顧客や強みにあった別事業も付加していくというところです。そして、新たなニッチ領域というところは、未来を見据えた、小さくていいので皆様の商圏の中で競合のいない事業に触っていくということ。こういったところが相乗効果という意味でのエコシステムを構築していくための足掛かりとなり、それを作っていただきたいなというところをここで挙げさせていただきました。
坂田:
ありがとうございます。
坂田:
どれを選択しても、スピーディな決断が必要になってくるということなのですよね。遠藤:はい。そうです。自動車業界、今非常に変化の激しい中でいくと、小さな一歩でもい
いので、とにかくスピードをもってやっていくことが必要かなと思います。今までのようにドンピシャのビジネスモデルを一つ立ち上げてすぐに結果が出ることよりも、リアルな数値を常に見える化しておくということも書いていただいていますけども、それにプラスして、仮に失敗をしたとしてもスピーディな決断をして、よりブラッシュアップしていくことが必要になってくると思います。
坂田:
なるほど。より早く社長が動いていけるためにも、まずは動くということを決めるということと、もし失敗した時もすぐに「じゃあこれやめよう」という判断ができるように、失敗しているのか成功しているのかを何となくの感覚ではなくて、数字で確認できるようにしておくことが重要になってきますよね。
遠藤:
そうですね。やはりリアルで数字も見えていないと判断することも遅れてしまう、逆に言うと、一歩目を踏み出せないのもそもそもの経営数値が見えていないということで、チャレンジしていいのかどうかの判断も付かないと思います。ですので、やる、やめるも含めて、よりスピードある決断をしていくことが必要になってくるかなと思っております。
坂田:
なるほど。まず試算表がすぐに出せていないという会社様はそういったことからスタートすることがポイントになりそうですね。
遠藤:
おっしゃる通りかなと思います。
坂田:
さらにもう少し具体的にどういった考え方をしていくべきなのかというところをお伺いできればと思うのですが、いかがでしょうか。
遠藤:
まず足元のお話をさせていただければなと思うのですけども、やはり自動車事業に関しては、車検、保険、鈑金などありますけれども、とにかく販売で台数を伸ばしていくことが重要となります。我々は昔からボーリングのセンターピンは何かという話をさせていただいているのですけども、どこまでいっても顧客を増やすのは本業で言えば車販事業ということで、それをどうやって伸ばすのかが重要です。これは川上ビジネスということで書かせていただきましたけども、それがある車種専門店なのか、軽自動車専門店なのか、軽自動車の中でもどういった価格体の専門店なのかなどを含めて、自社の強みや自分たちが何屋さんなのかを見直ししていただくことが第一歩だと思っております。
坂田:
なるほど。ありがとうございます。
よりリカーリング型の事業モデルへの転換
坂田:
それでは、経営を変革するポイントその2ということで、よりリカーリング型の事業モデルへの転換という話です。今画面に出ているのが10年間の自動車の価格変化とですが、どういった特徴があるでしょうか。
遠藤:
これは、顕著に出ているかなと思うのですが、軽自動車をはじめいわゆる輸入車と呼ばれるものを含めて車本体の値段がこれだけ上がっているのです。軽自動車ですら140%近い、もっと言うと、今後さらに10年間で見てもおそらく上がり続けていくことが間違いないです。このようなことから今日本の世帯年収がそれほど上がっていないにも関わらず車の価格がこれだけ上がっているので、今までの商品をただ買ってもらうということだけでは我々は逆に長生きしていけないだろうなと思っています。現実的に10年間、これだけの価格が上がっているところが一つのポイントかなと思います。
坂田:
確かに車を持つのが当たり前ではない世の中になってきているのは専門外の私から見ても感じているところではございます。
坂田:
こちらは新車、中古車、自動車整備費、保険料の推移なのですが、こちらはどのような特徴がありますでしょうか。
遠藤:
はい。これは月平均の2人以上の世帯支出額を出させていただいていますけど、そもそも車の値段が上がっておりますので、車に対してはお金が上がっています。ただ一方で自動車の整備にかけるお金や保険料は、この画面では赤印で右下にさせていただいていますけども、実は横ばいからやや少し下がってきているのが特徴になると思われます。
坂田:
なるほど。そうしますとトータルで見ると、それほど変わりがないというところでしょうか。
遠藤:
そうなのです。商品価格は上昇を続けているのですが、整備、保険を含めた世帯支出額、支出の予算は実は10年でほとんど変化がないのが実態かなというところです。
坂田:
なるほど。そうした中で今後どのようなことを押さえていくべきなのでしょうか。
遠藤:
はい。先程のところからお伝えしたいこととしては、消費者のニーズでいくと、より所有から利用へといったところが都心部をはじめ進んでいくと思いますので、サブスク・リース領域も、今までチャレンジしていなかった会社様も間違いなく必要になってくると思います。また、ここで書かせてもらっているサブスク・リースは単なる定額払いを提供する事業ではなくて、こういった新たな買い方や使い方を商品として付加していくことで、本業の車の販売という意味で、よりお客様の数を増やすことが車屋さんにとって一番重要です。顧客データやニーズの確実な取得機会をしっかり作っていき、より新たなサービス提供や事業展開のチャンスを生み出していく、一時の収益が減ったとしてもより長期的かつ継続的にお客様とお付き合いしていくことができる、これがリカーリング型の事業モデルへの転換ということです。完全にこちら移行してくださいという話ではないのですけども、そういった付加というのは避けて通れない道かなと思われます。
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