「自分が指示を出さないと、現場が止まってしまう」
「管理職は育ったが、経営の話ができる“右腕”がいない」
「結局、会社の将来を本気で考えているのは自分ひとりだ」
もし、このような「社長依存」の状態に危機感をお持ちであれば、御社はいま、組織成長における最大の壁に直面しています。
多くの企業が、売上数十億円の壁で成長が止まります。
その原因の多くは、「優秀な実務家(管理者)はいるが、経営幹部が育っていない」ことにあります。
本日は、社長が現場を離れ、組織が自走するために不可欠な
「経営幹部育成の考え方と、今やるべき打ち手」についてお伝えします。
◆ 幹部は「新しいチャレンジ」をさせて初めて育つ
経営幹部は、研修や経験年数だけでは育ちません。
育つのはただ一つ、新しいチャレンジ(=ゼロからイチをつくる経験)を任せたときだけです。
・前例がない
・正解がわからない
・失敗すれば責任を取らなければならない
こうした修羅場を通じてこそ、視座は「現場」から「経営」へと引き上がります。
◆ 幹部育成=成長戦略である
では、なぜ幹部育成が成長に直結するのか。
その関係性を整理したのが、下記の図です。
この図は、企業の成長戦略と幹部育成が、同時に進む構造を示しています。
〇既存顧客 × 既存商品― 幹部人材輩出(社長依存の脱却)
まずは既存事業で成果を出してきた人材を、「現場のエース」から「組織を任せられる存在」へ引き上げるフェーズです。
ただし、この段階ではまだ、成長は大きく跳ねません。
〇新規顧客 × 既存商品― 幹部育成改革(客数UP)
幹部候補に、新市場・新顧客の開拓を任せるフェーズです。
ゼロイチ経験を通じて、幹部の視座が一段引き上がります。
〇既存顧客 × 新規商品― 幹部育成改革(客単価UP)
新商品・新サービスを任せ、事業そのものを設計させるフェーズです。
利益率・付加価値が大きく伸びていきます。
重要なのは、成長ゾーンに展開していくためには、幹部育成なしでは進めないという点です。
◆ なぜ多くの会社は、幹部に新規チャレンジを任せられないのか?
理由は明確です。
幹部に新しい挑戦をさせる「余力」がないからです。
・エースが抜けると既存事業が回らない
・収益性が低く、失敗を許容できない
・配置転換による離職リスクが怖い
この状態では、幹部育成=成長戦略に踏み出すことはできません。
◆ 幹部育成の前に、社長が今やるべきこと
だからこそ、幹部育成の前に必要なのは、「幹部を修羅場に送り出せる状態」をつくることです。
具体的には、次の3点です。
・既存事業の収益性を高める
⇒エースが1人抜けても耐えられる事業構造をつくる。
・若手でも一定の生産性を出せる育成を行う
⇒属人化を排し、早期戦力化の仕組みを整える。
・戦略的配置転換に伴う離職リスクを管理する
⇒異動の目的・評価・フォローを事前に設計する。
これができて、はじめて幹部育成に本気で注力できる状態が整います。
◆ これを統括するのが、社長直轄の「戦略人事部門」
これらを現場任せ、人事任せにしてもうまくいきません。
なぜなら、これはすべて経営判断だからです。
・誰を、いつ、どこに動かすのか
・今は「育成」を優先するのか、「安定」を優先するのか
この全体をつかさどるために必要なのが、社長直轄の「戦略人事部門」です。
幹部育成(攻め)と、現場安定(守り)を同時に成立させる。
そのためのコックピットが、戦略人事なのです。
◆ 幹部育成とは、「未来の売上」をつくる経営判断である
幹部育成は、人を育てる話ではありません。
未来の成長曲線に、会社を乗せるための経営判断です。
御社はいま、先の図のどの象限にいますか?
そして、次にどこへ進むべきでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
| 執筆者: ヒューマンキャピタル支援部 ディレクター 中川 洋一 なかがわ よういち |
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