持続的成長企業に絶対に外せないのは、「代替わりできる組織になる」ことです。
その代替わりに向けて、将来的に、ご子息・ご息女への事業承継をお考えなら、
最初に任せるべき役割は「営業責任者」でも「新規事業責任者」でもありません。
それは「人事責任者」です。
なぜか?
それは、創業オーナーのようなバイタリティと求心力で人を惹きつけるスタイルを、
そのまま二代目・三代目に求めるのは酷だからです。
次世代経営者の求心力は、「競争力あるビジネスモデル × 魅力ある理念体系」という掛け算によって決まる。
だからこそ、人を惹きつけ、組織を巻き込む力を養うために、「人事」というポジションは最適なのです。
▼事業戦略は“本気”、人材戦略は“片手間”になっていませんか?
多くの会社では、事業戦略を立てる際、専任人材を配置し、綿密な計画を立て、月次・週次で進捗をレビューしながら、経営者自らが深く関与します。
ところが、人材戦略になるとどうでしょうか?
多くの企業では、兼務の人事担当者が片手間で運用し、明確なKPIや中長期計画すらない。
その結果、「事業がスケールしない」「幹部が育たない」「組織がついてこない」といった事態に陥ってはいませんか?
このように、“戦略的な人材マネジメント”の不在が、次世代経営を阻む“見えない壁”になっているのです。
▼だからこそ「人事」を承継の入口にせよ
ご子息・ご息女に「経営」を任せる前に、まず「人を動かす仕組み」を担わせること。
それこそが、理念・組織・人材を通して経営を学ぶ、最も本質的で実践的なプロセスです。
▼人事の経験は、経営を前に進めやすい“組織の土台づくり”につながります。
Step1:理念や価値観の浸透
組織のマインドセットを整える
Step2:配置・評価・幹部育成
機能するマネジメント基盤をつくる
Step3:戦略と連動した組織改革
ビジネスを加速させる“動ける組織”へ
このプロセスを通じて、将来自分が経営者になったとき、
「想いが伝わる」「人が育つ」「変化に強い」──そんな組織状態を先に整えておくことができるのです。
▼まずは“肩書”だけでも構いません
実務を全て任せる必要はありません。
「人事責任者」というポジションを与えることで、
“人を見る視点”と“組織を動かす視点”が養われます。
「営業責任者」や「新規事業責任者」を任せて、うまくいかなかったら・・・
組織の信頼感を高め、さらなる飛躍のきっかけとなる人材施策を人事責任者として任せる。
そのバックアップこそ現社長の役割です。
事業承継は“株や資産の引き継ぎ”だけではありません。
本当に引き継ぐべきは、“人と組織を動かす力”。
その第一歩として、
ぜひ「人事責任者」に任命することを、検討してみてください。
それが、未来の経営者を育てる“最短ルート”です。
執筆者: ヒューマンキャピタル支援部 ディレクター 中川 洋一 なかがわ よういち |