100億企業化プロジェクト責任者の鈴木圭介です。2025年も残すところ二ヶ月を切りました。 2025年の年間業績予測が出つつありますが、全体としては、利益率の側面で苦戦をされている企業様が多い印象です。前回に続き、今回も高収益化の手段についてお話をさせて頂きます。
成長戦略は単なる売上拡大に留まらず、持続的な「高収益化」を戦略に組み込むことが重要です。売上高100億円というマイルストーンは、地域経済を牽引し、賃上げや積極的な投資を継続する中堅企業へのステップアップを意味しますが、これを達成した企業の多くは、成長過程で経常利益率を向上させているという明確な特徴があります。
ここでは、100億企業への道のりにおいて、どのように収益構造を変革し、成長を加速させたのか、具体的な事例に基づきお話をさせて頂きます。
1. 既存ビジネスの「精緻化」による利益体質への転換 多くの企業が同質的な製品・サービスによって価格競争の罠に陥る中、成長企業はまず既存事業の徹底的な見直しから着手し、利益率を改善する土台を築いています。
最も重要な一手は、取引関係の再構築(顧客選択)です。収益性の低い取引は思い切って断ち、自社の強みを活かし、価格以外の「価値」を感じてくれる「真の顧客」に経営資源を集中投下します。例えば、温浴施設を運営するA社は、既存の銭湯を引き継ぐにあたり、徹底した業務改善を通じたコスト削減を実現しました。
この「精緻化」のフェーズで、将来の成長のための自己資本を積み上げることが極めて重要です。節税や目先の業績意識から利益をゼロ近辺に維持しようとする行動特性が見られますが、これが自己資本の積み上げを妨げ、長期的な投資と成長を阻害する要因となります。収益性の高いビジネスモデルを確立したら、迷わず利益を出して自己資本を厚くすることが、次のステージへの推進力となります。
2. 独自価値創造による価格決定力の獲得 既存ビジネスの土台が固まったら、次に目指すべきは競合他社が模倣できない「独自価値の創造」です。これは、顧客が「これくらいなら払っても良い」と考える支払意思額(WTP)を最大化する「顧客歓喜」に焦点を当てる戦略です。
具体的な手法として、ストック・ビジネスへの転換が挙げられます。例えば、運送業のB社は、一時的な売上を生む取引ではなく、定期的な輸送が必要な継続的な取引の関係を構築することで、収益予測とスケールメリットを享受しました。
さらに、事業を周辺領域へと拡張する「ビジネスモデルの補強」により、差別化を圧倒的なものにします。電子商取引プラットフォームのC社は、請求書サービスから、全業界向けの受発注サービス(トレード)へと補完財を開発し、主力サービスを強化しています。また、B社は、家具や航空貨物など様々な荷物が運べる「マルチトラック」を開発し、核となる技術を内製化することで独自の強みを構築しています。
3. 成長を加速させる「両利きの経営」と外部知見の活用 売上高が拡大する過程で、経営者には「深化」(既存事業の効率化)と「探索」(新規事業の推進)という相反する活動を両立させる「両利きの経営」が不可欠となります。統計分析の結果、両利き性を有する企業は、売上成長率(中央値13.8%)と営業利益率(中央値2.5%)のバランスが最も良いことが示されています。
この両利き性を高める上で、「社会関係資本」(経営者ネットワーク)が極めて強い影響力を持つことが判明しています。多様な地域や業種の経営者とのネットワークは、資源や協力を獲得し、成長に向けた気づきを得るための基盤となります。
また、成長投資の資金調達においては、負債の積極的な活用が成長を加速させます。負債比率の伸びは将来の売上成長と正の相関関係にあり、自己資本をテコに借入れを増やし、有形固定資産などへの戦略的な投資を行うことが、非成長企業との決定的な差となります。新たな挑戦には、エクイティ・ファイナンスやメザニン・ファイナンスといった資本性資金の活用も有効です。
最後に、組織基盤の整備として、経営者の他社での管理職経験が、財務管理、採用と研修、戦略的計画といった仕組みの導入を早期に促進する要因となります。自社にない能力を補完するため、外部の専門家や右腕人材(CFO人材など)を登用し、組織が未成熟な段階(従業員30人超)から、予算計画、経費承認、販売目標管理などの仕組みを優先的に整備することが、持続的な成長基盤を確立する鍵となります。100億企業化への挑戦は、経営者の「本気」と、その本気を組織内外に示し、戦略的な投資と組織変革を断行する覚悟から始まります。
より具体的な100億企業化の事例を把握されたい経営者様は、100億企業様が登壇する100億企業化セミナーシリーズへご参加ください。経営幹部と共に、高収益化戦略についてインプットを増やし、実現して参りましょう。今年のみならず来年度も、100億企業化セミナーシリーズをよりバージョンアップし、バリエーションも豊富にして参りますので、奮ってご参加ください。 |