経営環境が激変し、既存事業の延長線上だけでは持続的な成長が見出しにくい時代において、新たな収益の柱となる「新規事業の創出」は多くの企業にとって喫緊の課題です。一方で現政権の方向性は明確に成長企業への重点的な支援です。この意味でも新規事業の成功はますます重要になっています。
しかし新規事業は「立ち上げること」以上に、「成長・スケールさせること」に大きな壁が存在します。多くの新規事業開発プロジェクトをご支援してきた実績から見えてきた、新規事業の成長を加速させるための「5つの要素」を、経営者の皆様や新規事業の成功にコミットする開発・事業責任者の皆様向けにお伝えします。
① 自社の「強み(アセット)」を再定義し、フル活用する
「自社の競争優位性(勝ち筋)は何か?」という問いに、端的に自信を持って答えられますでしょうか?
単なる技術力や資金力だけでなく、既存事業で培った「膨大な顧客データベース」「長年の店舗運営ノウハウ」「地域でのブランド・知名度」といった目に見えない資産(アセット)を棚卸ししましょう。まずはここを起点とし、自社の経営資源をどう活かせるかを見極めることが、競合に対する模倣困難性や初期の競争優位性(参入障壁)に直結します。
一見すると当たり前のことに思えるかもしれませんが、この「自社の競争優位性(勝ち筋)は何か?」という問いに対して実は明確に見えている方は実は少ないように感じます。ここでの勝ち筋というのは、表面的な商品の特徴ではなく、「なぜ競合がそれを出来ないのか?」に対する答えであり、例えば実は1人の社員であったり、1つの工程であったりすることもあります。
② 「現場の生の声」と「客観的データ」で仮説を徹底検証する
「これなら売れるだろう」という自社都合の思い込みは、新規事業における最大の失敗要因です。
初期段階で構築した仮説は、市場規模や競合動向といった客観的なマクロデータと突き合わせる必要があります。さらに重要なのは、ターゲットとなる顧客へのデプスインタビューやアンケートを通じた「現場の生の声」の収集です。顧客自身も気づいていない潜在的なニーズや、「なぜ他社製品ではなく自社を選ぶのか(あるいは導入を見送るのか)」というリアルな理由を解像度高く把握することで、事業の成功確度を飛躍的に高めることができます。
③ スモールスタートと精緻な「投資シミュレーション」
いきなり大規模な投資を行って後戻りできなくなる事態を防ぐため、まずはテストマーケティングや実証実験(PoC)を通じて、現場のオペレーション課題や顧客の反応を小さく検証することが推奨されます。そこから改良を重ねながら、スケールしていくのです。
また、事業計画策定の段階で、楽観・中間・悲観といった複数のシナリオに基づく収益予測(PLシミュレーション)を作成しておくことが重要です。その際に、事業のKPIやKFSとの繋がりを表現することも大切です。これにより、「黒字化の時期」や「投資回収期間」、さらには「これ以上の赤字が出たら撤退する」という基準を事前に定めておくことができ、経営判断を誤らないための防波堤となります。
④ 経営トップのコミットメントと「当事者意識」の醸成
新規事業の立ち上げは、答えのない道を切り拓き、会社の将来を形作る困難な業務です。だからこそ、経営トップが「なぜ今、この事業をやるのか」というビジョンを社内外に強く発信し、全社でバックアップする体制を整えることが不可欠です。
また、事業が決まってから担当者をアサインするのではなく、事業案の検討段階から現場のメンバーを選抜し巻き込むことで、強い当事者意識(熱意)を持った推進リーダーを生み出すことができます。新規事業開発のプロセスそのものが、次世代の経営幹部を育成する最高の舞台となるのです。
場合によっては、初回の新規事業へのチャレンジを、採用吸引力強化(要は、新たなチャレンジを行う会社として学生等に認知してもらうこと)や幹部育成、新規事業に継続的に実施していくための最初のノウハウ蓄積ステップといった、間接的な効果をメイン目的に位置付ける企業もあります。
⑤ 生成AIを使い倒す
2つの意味で経営者や経営トップ層が自ら使い倒すことが重要です。
1点目は生成AIの有用性で、文脈をきちんと入れ、適切にフィードバックさえすれば、かなりの精度で的確な答えを返してくれるようになりました。この意味では、現状認識やAIが出した答えに対する「違和感」を言語化して再度AIに投げ返すような、言語化能力がかなり問われる時代になると思います。
いずれにしても、生成AIは、海外の事例含めた調査・ペルソナ作成(上記②)や自社の勝ち筋に対する壁打ち(上記①)等、あらゆる場面で強力なサポートになります。
2つ目は、今後の社会が生成AIが当たり前の社会になっていくからです。その意味でトップ自らが生成AIがどういう挙動をし、今どの段階にいるのか?(得意・不得意や出来る・出来ない)をつかんでおくことが非常に重要だと考えます。
例えば、今後サポート機能は基本的にはAIが中心となるでしょうし、顧客の購買検討においても生成AIが当たり前になってくることが予想されます。こうしたキャッチアップを含めて、経営トップには特に生成AIについての理解が不可欠だと考えます。
そして逆にこれらにより、経営者の時間の使い方としては④(経営トップのコミットメントと「当事者意識」の醸成)の度合いが高くなっていくし、そうしていくべきと考えます。生成AIがどんどんアウトプットは出してくるので、その交通整理をしながら意思決定や会社のコントロールをするという、本来経営者がやるべき業務に集中できるという意味で、ポジティブに捉えて良い変化ではないかと思います。
新規事業は、企業の10年後、20年後の未来を創るための重要なプロジェクトです。これらの要素を事業開発のプロセスに組み込み、持続的な企業成長を実現させましょう。
いかがでしょうか。船井総研では、上記各フェーズで貴社の事業の成功をサポートするコンサルティングを実施しております。ぜひ以下より無料経営相談のお問い合わせをお待ちしております。
![]() | 執筆者: プロジェクトマネジメント部 マネージング・ディレクター 内田 洋平 うちだ ようへい |
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