
コンサルティング会社と地方銀行がタッグを組み、地域の企業を包括的に支援
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北陸地方を中心にラーメン店を展開するカンサプ株式会社は、船井総合研究所と北國フィナンシャルホールディングスの支援を受け、売上100億円の企業を目指して成長を続けています。カンサプの成長に両社がどのように関わり、どのような役割分担をしているのかを、詳しく探ります。
福井県に本社を置くカンサプ株式会社は、北陸地方を中心に30を超えるラーメン店を展開しています。展開するのは「らーめん岩本屋」「つけ麺是・空」「味噌ラー一二三(ひふみ)」という3つのブランドです。

同社は「味だけではない」という信念のもと、元気な接客とサプライズ性のあるサービスで、お客様に感動を提供することを目指しています。社名の「カンサプ」は同社が大切にしている「感動サプライズ」が由来です。
北國銀行の誘いで船井総合研究所のセミナーに参加し「100億企業を目指す」と決意
カンサプは、多くの飲食業に大きな打撃となったコロナ禍により、業績が低迷していました。取引銀行である石川県の北國銀行から「成長の踊り場を迎えていないか」と指摘を受けたカンサプの代表取締役社長、岩本修一氏は、現状を打破するために新たな手を打たなければならないと感じていました。
そのとき、北國フィナンシャルホールディングスの子会社であるCCイノベーションは船井総合研究所と業務提携を行っていました。その縁で同社から船井総合研究所のセミナーに誘われ、受講したことがカンサプにとって大きな転機となります。セミナーで岩本社長は「100億企業化」の話を聞き、「夢がある」と感じ、それを実現する「100億企業化プロジェクト」への参加を決めました。
「100億企業化」とは「地域に高いレベルで密着し、いくつもの事業を手掛け、その地域になくてはならない存在になる。それらの事業の積み重ねで、年間売上100億円に達する企業に成長し、日本の売上上位1%の企業になる。スケールメリットを活かして生産性を向上させるなどして、さらなる成長を実現していく」というものです。
岩本氏は当時を振り返り語ります。
「実際に数字は落ちていて、人の採用などさまざまな課題を抱えていました。これまでのやり方ではもう伸びないと感じていたので、違う方法を教えてもらえるならば頼みたいと考えていたところです。
車を運転する際、料金を払って高速道路に乗れば速く目的地に到達できるように、経営も目指すゴールに速くたどり着ける方法があるなら、利用したいと私は考えています。
船井総合研究所は、創業者の舩井幸雄さんの教えも知っていて面白そうだと思っていました。100億企業化は、地域で商売をさせてもらっている私たちが、成長やそれに伴う雇用の増加などで地域に貢献できる方法だと感じました」

岩本社長を船井総合研究所のセミナーに誘ったのは、北國フィナンシャルホールディングスの子会社であるコンサルティング企業、CCイノベーションの長沢潤氏です。長沢氏は、その経緯を次のように語ります。
「岩本社長は、初対面から真摯に私たちの話を聞いてくださり、事業への思いも語られ、実直な社長という印象を受けました。面談を終えた頃は、通常以上にお力になれないかという気持ちが強くなっていました。
その頃にCCイノベーションと船井総合研究所が業務提携したことから、カンサプさんの課題である『売上を伸ばすための新たな手を探す』うえでよいと思い、北國銀行の取引支店の支店長にセミナー参加を打診したところ、ぜひご案内しようということになりました」

100億企業化プロジェクトの始動。攻めの船井総合研究所、守りの北國銀行
船井総合研究所、CCイノベーション、カンサプによる100億円企業化プロジェクトが始動しました。最初の3カ月で売上100億円に向けた計画を策定し、既存事業の拡大、新規事業の開発、人材育成、財務戦略など、多岐にわたる分野で具体的な目標を設定しました。
今後10年かけて売上100億円に達することを目指し、どのような順番で着手していくかを、時間をかけて決めていったのです。船井総合研究所の担当者は、そのときを振り返りこう語ります。
「売上100億円に達するための具体的なロードマップを共有し、そのイメージをつかんでいただいたことで、カンサプさん、CCイノベーションさん(北國銀行)、船井総合研究所がひとつになれた時間だったと、強く印象に残っています」
計画を策定する中で、それぞれの役割も明確にしました。船井総合研究所は、売上を伸ばし、事業を成長させることを得意とする、いわば「攻め」に強い会社です。100億企業になるためのロードマップの作成、成長戦略の立案、新規事業の実行支援や社員研修などを担当しました。

担当者は、カンサプにとってその都度の全体最適が何であるかを俯瞰的に見ながら、必要な知識やノウハウを提供し、成長を加速させる役割を担っています。担当者は自分の役割について、次のように語ります。
「何かを伸ばそうと思った時は、それを担う人が必要で、また組織や財務体制などしっかり構築しなければなりません。その実現をカンサプさんだけならば1年かかるのを、自分が関わることで半年で形にできる、そのような役割を担いました」
CCイノベーションは、銀行グループの強みを活かしてカンサプの財務状況の分析、資金調達の支援、本部業務の効率化などを支援しています。この役割はいわば「守り」で、長沢氏はその視点から、リスク管理や財務健全性を重視したアドバイスを行い、バランスの取れた成長をサポートしています。長沢氏は言います。
「私は従前より多くの事業再生案件に関わってきました。窮境状態にある会社をどのように復活させるかという業務をしていたので、いわば『悪い例』を多く見てきています。その経験を生かして『こうなると危ないですから気を付けてください』『この部分は注意しておきましょうか』といったことをお伝えしています。
新規出店を検討するときなども、守りの面で必要なことは必ず伝える。ただし、『やめよう』ではなく『その部分さえ押さえておけば、もしうまくいかなくても戻れますから、攻めて大丈夫です』という言い方をしています。チャレンジしないと面白くないですからね」
100億企業化の会議にはカンサプの岩本社長のほか、前田知也取締役などの幹部、事業の推進担当者、人材採用の責任者も同席します。
船井総合研究所の担当者と、北國銀行の担当者と長沢氏も出席し、すべての情報はそこに集まります。
情報を全員が共有したうえで、どう進めていくのかを理解してそれぞれのアクションを起こしていきます。船井総合研究所は攻める、事業拡大のための話をし、北國銀行は融資が必要ならば判断し、長沢氏は必要な守るべきポイントを伝えます。
外部の関係者も巻き込んだ、効率的に経営の意思決定を行う場です。

「高い目標を掲げることで、背伸びをして達成を目指す」
2022年に開始したプロジェクトは、現在1年半が経過しました。
カンサプでは、売上目標の設定、人材採用、社員教育など、様々な面で変化が見られています。岩本社長は言います。
「これまで『売上を伸ばしていくための会議』はあまり行ってきませんでした。していたのは会計事務所が主体となって毎月の原価率や人件費などの数字を共有する場くらいで、必要なものではありますが、正直に言ってあまり楽しいものではありません。
売上を伸ばすための会議は、攻めの話であり面白いものです。そのような場が設けられたことで、私もですが社員も売上に対する意識を持つようになり、またどう達成するかを考えるようになったと感じています」
カンサプの前田取締役は、岩本社長とともに船井総合研究所の売上100億円になるためのセミナーを受講し、社長の目指すところと思いを同じくしています。
「売上の目標を設定することの重要性を、改めて認識しました。『110%、120%売上アップ』を目標にすることで、完全に達成するのは難しくとも105%、110%という数字の達成は十分に見えてきます。
経営陣だけでなく会社全体の『より上を目指す』意識が高まっています。
高い目標を設定することで、達成を目指し背伸びをしたりする。それが成長につながっていくのかなと思います」

「外国人の従業員採用も進んでおり、必要な人員の確保は進んでいると考えています。アクセルを踏める環境は整っているのだから、目いっぱい踏めばいいんじゃないかという感じで、社内では盛り上がっていますね」(岩本氏)
CCイノベーションは、金融機関の本分でもある「融資」の面でもアドバイスを行います。
「北國銀行は『事業性理解』をとても大切にしています。決算書の数字だけで融資の判断をするのではなく、まず事業を理解した上で判断するほかに、その時に出てきた課題の整理もお手伝いしています。
中小企業には数多くの課題があるものです。それらすべてをいきなり解決しようとするのではなく、解決の優先順位をどう付けるかも私たちの役目です。融資は金融機関ができる重要な課題解決の手段です。その際に、事業を深く理解していれば前向きな融資判断ができます。事業をよくわかった上で『こういった目的で資金が必要ならばぜひ応援したい』となることが大事と考えています」(長沢氏)
100億企業化を達成した先の、上場を見据えて
カンサプは、現在目指している売上100億円を達成した先に、株式上場を目指しています。これからの展望を、関係者が語ります。
岩本社長は、上場を目指す理由の1つを「採用」であるとしています。
「大学の近くにもある店は、大学生のアルバイトを多く雇っています。優秀な学生さんには『うちに来ない?』と声をかけますが、親御さんに『大学まで行かせてなんでラーメン屋に入るんだ』と反対されることが多く、大学生がぜひ入りたいと思ってもらう会社になるために、上場を目指しています」
前田取締役は、すでに成長により生まれる課題である「人材の育成・定着」に重きを置いています。
「組織が大きく、強くなるとは、いかに人を育てるかと直結すると考えています。そのためには社長の考えをいかに自分たち幹部が社員に浸透させられるか。組織が大きくなっていくと伝言ゲームのようになり、現場の人たちには1割も伝わっていないということが起こりやすいので、規模が大きくなる分、採用後の教育と定着に力を入れたいと考えています。
船井総合研究所の担当者は、カンサプの今後に対して「ほとんど心配事がない」と語ります。
「もっと成長していけるという手ごたえが、十分にあります。カンサプさんの提供しているラーメンはおいしく、私も大好きです。一丁目一番地である商品が強いので、何も心配していません。
唯一心配があるとすれば、出店立地です。ただしそれは私に北陸の土地勘がなく、自分に判断がつかないからというだけで、そこは地元企業のCCイノベーションさんに力を発揮していただきたいと考えています」
長沢氏も語ります。「地方銀行という、地域に近い立場でのサポートはこの先もしっかり続けていきます。エリア状況、人口動態など私たちが知り尽くしている地域の情報について、うまく補完していきます。
そのうえで、カンサプさんのラーメンは北陸の外、都会でも通用する味だと思っていますから、今後の成長を考えると北陸以外の地域への進出や、海外も見据えて『戻れるようにしておけば失敗しても構いませんから、攻めて行きましょう』とお伝えしていきたいですね」
カンサプの岩本社長は、外部人材の利用について以下のように言います。
「コンサルタントや銀行の人は、社長に対し耳の痛いことは言いづらいと思います。それでも船井さんやCCイノベーションさんがちゃんと言ってくれるのは、それだけ真剣に考えてくれているからだと思っています。またそれが成長の材料、自分たちの改善事項なわけですから。
『嫌なこと』は『伸びしろ』だと思っています。厳しい声は『伸びしろを見つけたんだ!』と思えますからありがたいです。船井さんとCCイノベーションさんには、それぞれの異なる観点から私たちの会社のことを本当に考えての厳しい声を多々いただいていますので、まさに伸びしろです。
これからも会社の成長をサポートしていただきたいと思っています」

コンサルティング会社と地方銀行の、高い親和性
今回の事例は、船井総合研究所と北國フィナンシャルホールディングスが、苦手としている部分をうまく補う形で高い成果につながりました。
地方銀行は地域の会社の財務状況や課題、その地域で事業を行っていくことの優位性や気を付けるべきことなどを知り尽くしている一方で「成長のための具体的な策」についてはその性質上できることに限界があります。
コンサルティング会社は事業成長のプロフェッショナルですが、その地域の土地勘はありません。またその地域であまり知られていない存在であり、地域の会社にしてみれば「遠くの東京や大阪に本社のある会社に依頼しても、対応してもらえるのだろうか?」と二の足を踏むケースもよくあります。
船井総合研究所と北國フィナンシャルホールディングスは、それぞれの苦手とする部分を補完しあうことで、地域の課題をより高いレベルで解決する策を確立しました。
このような取り組みを、日本全国の地方銀行と提携しながら進めていきたいと考えています。
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