多くの業界で市場縮小が懸念される中、単一事業のみでの持続的な成長や2ケタ成長を維持することは、かつてないほど困難な時代に突入しています。一本の事業の柱に依存することは大きなリスクを伴うため、いま多くの経営者が「次なる一手」として新規事業の展開を模索されています。
本日は、「地域コングロマリット経営」と、それを牽引する新規事業のあり方についてお伝えします。
地域コングロマリット経営とは、単なる多角化経営ではありません。
地域の生活インフラを垂直・水平に統合し、独自の経済圏を作るという壮大なプロジェクトです。地域内需要を「点」でおさえるのではなく、「面」でおさえ、地域経済そのものを活性化させることを目指します。
この経営スタイルを推進することで、会社が地域になくてはならない存在になり、事業シナジーが生まれ、さらには経営幹部人財の育成ができるといった多くのメリットが得られます。加えて会社のブランド化が進み、採用力があがるなど、外部環境に強い企業体質がつくれるのです。
ではこの経営を成功させ、中核となる新規事業を次々と軌道に乗せている企業には、どのような共通点があるのでしょうか。成功企業は無闇に新規事業へ投資するのではなく、明確な評価基準を持って新規事業を選定し、推進しています。
ここからは、成功の鍵となる「3つの要素」に焦点を当てて詳しく解説いたします。
1. 理念・ビジョンとの整合性がある
一つ目の要素は、立ち上げる新規事業が自社の理念やビジョンと深く結びついていることです。新規事業の選定において第一の評価基準となるのが、「自社のパーパス(存在意義)に合致しているか?」という点です。
地域コングロマリット経営は地域に根付くことが大前提となります。
目先の利益や一時的な流行だけを追い求めた新規事業ではなく、自社がその地域でどのような価値を提供したいのかという根源的な想いと一致している必要があります。理念と整合した新規事業を展開することで、従業員の共感を生み、事業の軸がブレることなく推進力を持たせることができます。
2. 事業シナジーがある
二つ目の要素は、手がける新規事業が既存の事業にもプラスをもたらし、強固な事業間シナジーを生み出していることです。
新規事業においてシナジーを最大化するためには、全く未知の領域である「飛び地」を避け、既存事業と共通項がある「隣接地」を狙うことが鉄則です。 新規市場に対して新規製品を投入する「多角化戦略」は難易度が高いため、既存市場に新規製品を投入する「新製品開発戦略」や、新規市場に既存製品を投入する「新規市場開拓戦略」から着手することが有効です。「顧客」か「技術(商品)」のどちらかが既存事業と重なっていれば、シナジーは生まれやすくなります。
具体的には、顧客・ブランド・販売網の共有等による売上の最大化を図る「販売シナジー」、工場・物流・ITの共有による効率向上を図る「生産・運営シナジー」があります。
さらに資金効率を高める「財務シナジー」や、コア技術・ノウハウを移植する「組織・技術シナジー」も重要です。自社の強みを注入し、他社より有利に戦える独自の競争優位性を持ち、その新規事業をやることで既存事業の価値も上がる「相互進化」の関係を築けるかが成功の鍵です。
3. 事業を任せられる経営幹部が育成できている
三つ目の要素は、新規事業を通じて次世代の経営幹部を育成し、輩出する仕組みを持っていることです。
地域コングロマリット経営を推進することは、そのまま経営幹部人財の育成に直結します。 単一の事業体では経営トップのポストは限られますが、新規事業を立ち上げ、それぞれを独立した事業体として権限移譲することで、多くの優秀な人材に経営者としての経験を積ませることができます。
「それぞれの事業を経営する人材」が多数おり、また次々と輩出する強い組織になっている企業こそが、真のコングロマリットを形成できます。新規事業の推進と人材育成は、まさに車の両輪として機能するのです。
「理念・ビジョンとの整合性」「事業シナジー」「経営幹部の育成」。
これら3つの要素を高いレベルで満たしながら新規事業を展開していくことで、単なる多角化の枠を超えた、力強い「地域コングロマリット経営」が実現します。
人口減少という荒波が押し寄せる今、地域コングロマリット経営への転換は、単なる成長戦略ではなく企業の生存をかけた「必然の選択」と言えるでしょう。

