上場企業のESG対応コンサルティングを進めていると、経営層とサステナビリティ部門の迷いを感じることは多いものです。目的は企業価値向上であることは共通ではあるものの、ESG対応は開示が目的化してしまうことにも陥りやすくなっております。
「企業秘密、経営戦略を開示すると競合に模倣されないか?」
「開示するべきか?開示しなくてもよいか?」
「経営層、各事業部門への理解を得ることと根回しで疲れる」
「社内の各事業部門も真剣に取り組んでくれず、手間ばかりとなっている」
そしてついには、「開示が、本当に企業価値に繋がっているのか?」
の声が聞こえてきます。
この課題の背景には、経営戦略とESGが連動していないことにあります。
これまでのコンサルティング現場では、以下の原因がありました。
①中期経営計画とマテリアリティが別に設定されており、後付けとなっている
②ESG評価機関のスコアの為だけに取り組んでおり、改善が目的化している
③経営陣の理解が低く、コストとリスク対応と捉えている
④現場(事業部)側の認識が低く、市場も背景もリスクも認識していない
⑤サステナビリティ担当の取り組みがリスク対応となっており、発信も限定的になっている
⑥開示が限定的でアピールに使われていない
⑦取り組みのKPIが経営の中枢に置かれていない
しかし本当は、上場企業にとって経営戦略とESGの連動は持続的な成長戦略に不可欠なものでもあります。そして何よりも、リスクでもコストから収益に変える時にもなっております。
1.経営戦略と連動したESG対応の必要性
経営戦略と連動したESG対応が不可欠になっている理由は、以下のような外部環境の変化にあります。
つまりこの外部環境変化に気付けていない、または認識の低さによることが経営戦略にも連動されていないこととなってしまいます。また認識をしていても、それぞれが点となっており、線となっていないことこそ要因とも言えるかもしれません。
2.ESGを戦略に組み込む為の5つのメリット
ESGを戦略に組み込むことで、以下の5つのメリットにて競争優位性を獲得することが出来ます。
企業価値向上が目的であることからも、当初はリスク対応であることは問題無いのですが、常にプラス思考として考えていく必要があります。5つ全てにおいて、取り組まない場合のマイナスをゼロにすることに視点を置くことなく、加点として考えていくことも重要です。
3.経営戦略とESG対応の連動を実践させていく為に
(1)現状把握
ESGへの取り組みについて、競合企業と顧客企業の2点について、自社取り組みとの比
較を行い、課題の抽出と優先度の設定を行います。また、中期経営計画とマテリアリティとKPIについてもESGとの一貫性も併せてチェックを行っていきます。
(2)経営層への共有
現状把握の結果について、経営層への報告とともに、今後の市場環境と動向についても
レポーティングを行い、課題の温度感について併せていきます。
(3)事業部との連携
事業部との連携は、コストからプロフィットに変える大きな要素となります。その為にリ
スクと機会について、各事業部と内外部環境のレポーティングを共有していき、機会と
しての可能性を探っていき、新商品開発やサービス開発に活用していきます。
(4)マテリアリティとKPIの見直し
事業部との協議を踏まえて、経営企画部門とマテリアリティについて見直しを行い、次の
中計と連動をしたマテリアリティを特定していきます。
(5)KPIの見直し
ESGの指標、また他社の指標だけに囚われず、自社にとって本当に企業価値向上となる
指標を設定してください。その為には事業部と連携していき、業績アップとなるKPIを設
定していき、社内外に解りやすいものとしていきます。
(6)開示
有報での開示だけでなく、WEBや社内での開示についても進化して欲しいと思います。
また、アピールする際には「誰に何を」のマーケティング思考を持ち、ターゲット別の訴求
を前提に考えていきます。
(7)成果の共有
企業価値向上の成果について、ESG対応との関係性は可視化し難いことも多いもので
す。しかし、社内への浸透を目指す必要性は高く、だからこそ大小問わず、ESGでの取り
組み成果について、社内に共有させる仕組みが必要となっていきます。ESGの浸透が難
しいのではなく、共感を進める為に必要な発信として捉えてください。
4.経営戦略とESG
各社のIR資料を見ていると、経営戦略とESGの連動が解り難い会社は多く感じます。価値創造プロセスが、ステークホルダーとの「対話」とされてから久しいものの、まだ対話と言うよりも独り言になっていることも見受けられます。
勿論、開示の為にESGは取り組むものではありません。
しかし価値創造ストーリーには業績を上げていくことだけでなく、社会として必要とされている企業であること、その永続性を解りやすくするものでもあります。
経営戦略とESGが切り離されることなく、むしろESGを進めることこそ永続性となることを念頭に取り組んで頂ければと思います。
| 執筆者: サステナビリティコンサルティングチーム/ 金融機関アライアンス室 ディレクター 貴船 隆宣 きふね たかのぶ |
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