昨今100億企業化を目指す動きは加速し、目指される企業も増えております。
そのような中で先週、政府は2025年度補正予算案に中堅等大規模成長投資補助金として4121億円を計上することを発表しました。
来年度も「100億企業の創出」に向けて、政府が大きくサポートされるということが明確となりましたので、このチャンスを逃さず100億企業化を実現していきましょう。
政府が投資する支援策の根本的な部分は「成長の勾配(ベクトルの角度)を上げる」挑戦的な投資を支援する政策となりますので、来年度以降の計画を立てる上でも、挑戦的な成長の発想がまず必要となります。
その上で、前回コラムにてご紹介をさせて頂きました100億円企業への成長を加速させるための鍵である既存事業の徹底した「精緻化」により投資の土台を築き、そこに「中堅等大規模成長投資補助金(成長投資加速化補助金)」という強力な政策支援を組み合わせるといった構造が有益です。
前回「成長投資の土台を築く「精緻化」戦略」として、飛躍的な成長を実現した企業の研究から明らかになった通り、企業はまず限られた経営資源を有効活用するために、既存ビジネスの利益率を改善する「精緻化」から着手すべきという点
・「利益率の低い取引の排除」と「真の顧客」への集中
・「利益ゼロ近辺志向」からの脱却と「自己資本の積み上げ」
の重要性について、お話をしました。
今回、補正予算が発表されたことで「政策支援を梃子にした大規模投資の実行」を組み込むことはより重要となりました。
100億円企業へと成長した企業は、成長の過程で、非成長企業と比較して、有形固定資産や研究開発費への投資を積極的に行っています。この積極的な投資を後押しするのが、直近で措置された中堅等大規模成長投資補助金といえます。
(1)補助金の活用と投資の加速
本補助金は、売上高10億円以上100億円未満の企業に対し、上限5億円(補助率1/2)という、中小企業向けとしては極めて大型の支援策であり、特に建物費や機械装置費といった大規模な固定資産投資を対象に含めています。
成長には、生産・物流・販売拠点整備のための土地建物を含む数十億円規模の大規模投資が必要となるため、この支援は飛躍的な成長を目指す企業にとって絶好の機会です。
(2)経営者の覚悟を問う「100億宣言」の戦略的活用
本補助金の要件には、経営者が「100億宣言」を行うことが含まれます。これは単なる申請手続きではなく、経営者の明確なシナリオと成長戦略、そして「本気」の挑戦姿勢を組織内外に示す場です。
審査では、経営者のプレゼンに基づき、成長余力を最大限に伸張する事業戦略や、賃上げ水準、地域への波及効果などが評価されます。
この宣言を行うことで、社内では目標達成に向けた一体感の醸成や、社外では新たなビジネスパートナーや優秀な人材の獲得に繋がる可能性が高まります。
「精緻化」で得られたリソースを「探索」へ集中投下が重要になります。
精緻化によって「真の顧客」が特定されれば、次に進むべきは、その顧客が抱える未解決課題を見つけ出し、競合が未着手の「市場の空隙(ホワイトゾーン)」へ経営資源を集中投下する「新たなビジネスモデルの創造(探索)」です。
ビジネスモデルの創造、探索において、組み込んでいただきたい観点としては
①生産性向上と人件費増強
人手不足社会において、労働投入依存のマネジメントから脱却し、資本も含むトータルでのマネジメントを構築するために、機械装置の導入や自動化への投資を優先します。賃上げ要件が課されている補助金と連動させることで、人材確保と定着を可能にする付加価値の高い商品への事業入れ替えを進める基盤が生まれます。
②内製化と差別化
既存事業の収益力を強化するために、バリューチェーンの一部を内製化したり、核となる技術やシステムを自社で作り出したりするためのシステム投資や設備投資を実行します。
③財務健全性の確保
補助金や税制(建物・附属設備を含む税制優遇)を組み合わせた大型投資は、一時的に負債比率を高める可能性がありますが、研究結果では、負債比率の伸びている会社は将来の売上成長も大きいという傾向が確認されています。自己資本にレバレッジをかけて借入を増やし、「迷いのない実行」こそが成長をドライブさせる鍵です。
既存の事業を磨き込み財務の土台を強固にした上で、この政策支援を最大限活用し、「通常では実現し得ない成長の角度」を目指すことが、100億円企業への道を開く最速の戦略です。野心的な計画を構築してきましょう。
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