多くの中小企業が「売上30億」の手前で成長が鈍化します。
これは単に営業力や商品力の問題ではなく、組織体制の限界が原因になっているケースがほとんどです。
創業期・拡大期を乗り越えてきた企業の多くは、経営者のリーダーシップと少数精鋭のメンバーによって成り立っています。しかし、売上が20億を超え、30億が見えてくる頃には、これまでのやり方では組織の複雑性に追いつけず、生産性が低下しはじめます。
では、売上30億の壁を突破する企業は、どのように組織体制を変革しているのでしょうか。
本稿では、成長企業が実践している「組織体制の変革ポイント」をわかりやすく解説します。
1. 経営者主導の限界を認識し、“権限移譲”を仕組み化する
売上30億に近づくにつれ、経営者がすべてを把握し、すべての判断を行うスタイルではスピードが落ちていきます。
・採用判断
・営業方針の決定
・価格設定の承認
・新規事業の可否
・部署間調整
これらを経営者が担い続けると、意思決定のボトルネックが発生します。
突破口は「明確な権限委譲」の設計にある
権限委譲といっても、単に「任せる」のでは不十分です。
重要なのは、
1.組織構造を再設計する
2.役割と責任を明文化する
3.判断基準を統一する
この3つを整えたうえで、権限を段階的に移すことです。
特に、中堅マネジャー層が育っていない企業ほど「判断基準の共有」が不十分で、任せた途端に品質が揺らぎ、結局経営者が巻き取る…という状態に陥りがちです。
2. マネジメント層の再定義“現場リーダー”ではなく“部門経営者”へ
多くの企業が「マネジャー人材不足」という悩みを抱えています。
しかし実際には、求める役割が曖昧なまま昇格させていることが原因であることが多いです。
売上30億を超える企業のマネジャー像は次の通りです
・目標設定・戦略立案ができる
・数値管理を習慣化し、改善サイクルを回せる
・人を育てながら組織を機能させる
・部門横断の連携ができる
・経営方針を現場に落とし込む
言い換えれば、「小さな経営者」としての機能を求められます。
現場のまとめ役から、部門経営の推進者へ。
この役割転換が進まない限り、組織は経営者の判断に依存し続け、成長スピードが鈍化します。
3. 業務が属人化していると壁にぶつかる 標準化と仕組み化の重要性
20億前後まで成長してきた企業は、「優秀な現場」の力によって売上を牽引している場合が多いです。
しかし、30億の壁はここに潜んでいます。
属人化の典型例
・営業はトップ営業が数字を支えている
・生産やサービス提供が特定のベテランに依存
・顧客対応が担当者個人の裁量に任されている
・判断の理由が「経験」に頼っている
この状態では、人が増えても生産性が上がらず、事業拡大が進みません。
求められるのは「再現性のある仕組み」
・営業プロセスを可視化する
・業務フローを整理し、作業標準を作る
・KPIを設計して、毎週・毎月の改善サイクルを回す
・属人化している業務を棚卸しし、チームで対応できる状態へ転換する
仕組み化は「現場が窮屈になる」という誤解を招きがちですが、実際はその逆です。
仕組み化によって判断軸がそろい、業務のムダが取り除かれることで、チームの動きがスムーズになり、生産性が高まります。
4. 部門間連携を強化し、“会社全体で成果をつくる”体制へ
売上が拡大するほど、部門同士のコミュニケーション量と調整コストは増していきます。
・営業は案件を取ってくるが、製造・サービスが追いつかない
・経理や人事に情報が渡らず、後から混乱が起きる
・顧客からの要望が部門をまたぐと処理が遅れる
このような状態では、いくら現場が頑張っても顧客満足度が下がり、売上の伸びが止まります。
解決のポイントは「横串の機能を整える」こと
・全社会議や部門間ミーティングの仕組みを整える
・部門横断のプロジェクトチームを設ける
・情報共有のルールやツールを統一する
・組織の目的を共有し、“同じ方向を見る文化”をつくる
特に「情報共有の仕組み」は、多くの企業が後回しにしてしまいますが、規模拡大に伴う混乱を防ぐうえで最重要です。
5. 組織文化の変革 ― 人が成長し続ける土壌をつくる
最終的に、企業の成長を決めるのは「人」です。
売上30億を突破していく企業の多くは、組織文化に明確な特徴があります。
成長企業に共通する文化
・振り返り(レビュー)を習慣化している
・上司と部下のコミュニケーションが定期的にある
・挑戦を後押しし、失敗から学ぶ姿勢がある
・経営理念やミッションを日常業務に落とし込んでいる
・人材育成に時間とコストを投資している
組織文化は、経営者の言動や仕組みによってつくられます。
急成長期ほど、短期的な売上に目が向きがちですが、
長期的に企業を強くするのは「人材への投資」です。
売上30億を突破する企業に共通するのは
・経営者の判断を分散できる組織構造
・部門を経営できるマネジメント層
・属人化を排除した仕組み
・部門横断の情報共有
・持続的に人材が育つ文化
この5つを整えていることです。
市場環境が変化し、事業の複雑性が増す今、
企業が成長し続けるには「人と組織」の進化が不可欠です。
組織変革をどの順番で進めるべきか、
自社にとって最適な体制は何か、
専門コンサルタントがわかりやすく解説します。
