・「中間管理職が思うように機能していない」
・「上長が部下をまとめきれず現場が混乱している」
・「マネジメントの役割を理解しきれていない」
こうした課題をお持ちの経営者は少なくありません。
とくに従業員数が30名を超え、部門制が導入され始めるタイミングでは、中間管理職の育成がその後の会社の“成長速度”を大きく左右します。
本コラムでは、中間管理職の役割と育成のポイントについて、業種を問わず共通する視点から解説いたします。中堅企業への成長を目指す全ての企業にとって必須の内容です。
なぜ中間管理職が育たないのか?
そもそも多くの企業で、中間管理職が十分に機能していない原因は、「プレイヤーとしての延長」で役職を与えてしまっている点にあります。
・営業成績が良いから課長に
・長く勤めているから部門責任者に
・現場を知っているから管理職に
このような昇格は一見合理的に見えますが、**“マネジメントの役割を教えずに任せてしまう”**という構造的な問題を内包しています。
中間管理職の本来の役割は、以下のように多岐にわたります。
・経営方針を現場に落とし込む
・現場からの声を経営陣に届ける
・チームをまとめ、目標を達成させる
・部下の育成と評価を行う
つまり、単なる業務遂行者ではなく、会社の“潤滑油”かつ“推進力”であるべきポジションなのです。
中間管理職育成の3ステップ
ステップ①:マネジメントの“定義”を言語化する
「管理職らしくしてほしい」と曖昧な期待を伝えるのではなく、会社として中間管理職に何を求めているかを明文化することが第一歩です。
例:
・部下3名以上の育成と評価を担う
・月次の部門目標を設定し、進捗管理による原因分析を行う
このように、役割・責任・成果の期待値をはっきりさせることで、本人も周囲も「何をすべきか」を認識できます。
ステップ②:マネジメントスキルを体系的に学ばせる
多くの中間管理職は、マネジメントを「なんとなく経験で覚える」しか方法がありません。
しかし本来、マネジメントは学問的に整理された“スキル”です。
具体的には以下のようなスキルがあります:
・コミュニケーション(傾聴・指導・動機付け)
・目標設定と進捗管理(KPI設計・PDCA)
・評価とフィードバック(成果と行動の見極め)
・問題解決と意思決定(MECE・ロジカルシンキング)
これらを外部研修や社内勉強会で継続的に学ばせる仕組みを整えることで、プレイヤーからマネージャーへの脱皮を促すことが可能です。
ステップ③:実践とフォローを繰り返す“育成の場”をつくる
学んだだけでは行動は変わりません。
重要なのは、実際にマネジメントを“やらせて”、定期的なフォローをすることです。
たとえば:
・プロジェクトリーダーを任せる
・1on1ミーティングを定期実施させる
・経営陣との定例報告会を設ける
これらの「場」を設けることで、実践と内省のサイクルが生まれ、マネジメント力は確実に向上します。
成功する企業は「育成を制度にする」
特に成長フェーズにある企業ほど、人の力で突破する課題が増えていきます。そのとき、中間管理職が育っていなければ、経営者の負担は増す一方です。
一方、継続的な中間管理職育成に成功している企業では、以下のような制度化が見られます。
・育成対象者の選抜制度(候補者を明確に)
・年間育成カリキュラムの整備(研修・評価・実践)
・経営層との定期面談制度(経営視点のインストール)
人材の成長が組織の成長をつくり、組織の安定が経営の自由度を生みます。育成の仕組みは、短期的コストではなく、中長期の経営戦略そのものです。
中間管理職の育成は“仕組み”で解決することが重要です!
中間管理職をどう育てるかは、経営そのものをどう持続させていくかに直結します。
属人的な経験に任せず、全社的な仕組みとして「中間管理職の育成」を位置付けること。これこそが、変化の激しい時代において、会社を“強くする”ための最短ルートです。
執筆者: 人的資本経営支援本部 本部長 宮花 宙希 みやはな ひろき |