「100億企業化」を専門とし、「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに据えている部門、アカウントパートナー室のマネージング・ディレクターの鈴木圭介です。前回は地域コングロマリット経営のメリット・目指すべき理由についてお話をさせて頂きました。今回「地域コングロマリット経営を実現するために中堅・中小企業ならではの新規事業への取り組み方①」として戦略の実践に入っていきたいと思います。書籍の内容もご紹介と共により深堀をしつつ、お話を致します。
成熟している日本市場では、大手企業がその資源調達力を活かしたビジネスモデル構築力が高く、中堅・中小企業による完全な新規事業というケースは少ないですが、新規事業と関連性の深いフランチャイズ関連市場の動向は一つの指標となります。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によれば、その市場規模は99年には16.6兆円、09年には20.8兆円に躍進。さらに毎年、市場が拡大して19年には26.6兆円となりました。この20年で10兆円も拡大しました。複数店舗を運営するオーナー企業の存在や、業種特性による売上の幅など、さまざまな要因がありますが、一つの参考にはなる数字といえ、フランチャイズ以外においても既存事業の伸び悩みから新規事業へチャレンジする企業は確実に増えています。
16年に、中小企業庁はアンケート調査を行いました。これは新事業展開の取り組みを実施している企業と、実施していない企業とに経常利益率を聞いています。新事業展開とは具体的には、新市場開拓戦略・新製品開発戦略・多角化戦略・事業転換戦略の4つとなります。これについて約3千社の回答があり、その結果は、いずれの取り組みでも新事業展開を実施している企業は、実施していない企業に比べ、経常利益率は増加傾向にありました。持続的な成長のためには新規事業への参入は欠かすことはできないと言えます。
新規事業の必要性については、船井総研の「売上高の方程式」からも説明することができます。
次に挙げるのが、売上高の方程式です。 売上高=マーケットサイズ(何を)×商圏人口(誰に)×シェア(どのように)
この式には、業績を上げていくための要素が凝縮されています。マーケットサイズとは市場規模を意味し、どの程度の可能性を持った商品・サービスを扱うのかということです。その商品・サービスが1000億円の市場規模なら1%のシェアでも10億円だが、1億円なら100%のシェアを取っても1億円でしかないです。そこでまずマーケットサイズを見極めることが大事になります。次に商圏人口とは誰に売るのかということです。誰とは、どこにいる、どのくらいの数の人かといったターゲットエリア・ターゲット顧客です。これもマーケットサイズと同じ考え方で、商圏人口が多いほどに売上高に対する影響は大きくなります。
そして最後がシェア、つまり占有率です。船井総研では基本的にそのマーケット・対象商圏で1番を獲ることに向けた支援を提供しています。1番になることで、売上高への直接的な影響があります。さらに「マーケットで1番」「エリアで1番」と対外的にアピールもできます。このマーケットサイズ、商圏人口、シェアという3要素を掛け合わせることによって売上高は決まるというのが、売上高の方程式の考え方です。そして、この方程式に当てはめれば、売上高の最大値もある程度決まります。マーケットサイズと商圏人口には、それぞれに上限があるため、一定以上のシェアを取ると、必然的に伸び悩みます。成長に踊り場を迎えた事業は、そこで次の一手が求められます。
その際、従来のオーソドックスな経営戦略は、商圏人口を拡大させることでした。拠点を増やすことで商圏を広げ、ターゲット顧客を増やしました。ところが人口減少時代においては、この効果は高くはありません。そこで選ぶのが、新規事業への参入ということになります。マーケットサイズも商圏人口もシェアも変わらないため、新たな方程式もとい事業を組み込むことが重要となります。
参考までに新規事業参入の緊急度について、チェック項目を挙げました。7項目で、ごく簡単な目安になりますが、参考にしてみてください。
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