「100億企業化」を専門とし、「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに据えている部門、アカウントパートナー室のマネージング・ディレクターの鈴木圭介です。今回は、非上場・上場に関わらず、経営者が持つべき100億企業化に向けた「中堅企業のガバナンス戦略」についてお話を致します。
日々100億企業に向けてチャレンジを続けられている企業様のお手伝いをしている中で、明らかに中小企業規模では無かった問題に直面し、成長が鈍化するケースや、状況によっては業績を大きく下げてしまうケースがあります。ガバナンスの観点において、100億企業に向けて企業が成長過程で直面する課題の例としては・・・・ 1. 債権者(金融機関)要求事項の対応/外部株主要求事項の対応 2. 適正な子会社運営 3. 適正会計・適正納税 4. コンプライアンス(法令遵守) 5. 許認可・自治体折衝 6. 職掌分配・権限分配 7. 適正な労務・人事 8. 取引先対応・セキュリティ対応 といった事柄が挙げられ、規模が大きくなるにつれて、新たに解決するべき課題が出ている状況ではあるものの、問題が発生するまでは、それに向けた投資がされないケースは多いです。ただ、こちらは経営者及び経営チームも過去に経験されていないからこそ、イメージが付かないため、仕方が無いとも言えますが、成長を続ける企業様は、先んじて取り組まれている企業の施策から逆算し、問題が深刻化する前に対処されています。
適切なガバナンスが伴っていない場合の病理事象としては、 1. オーナーへの権限集中、それを背景にした不適切な言動、公私混同 2. ファミリーの不適切な関与 3. 不明確な役割分担 4. コンプライアンス問題の広がりと放置 5. リスクの放置、これに伴う士気の低下 等々、いずれも企業成長の継続性を阻害する要因となります。
100億企業へ達した企業をコンサルティングしている中で共通している要素として、攻めと守りのバランスが良く、それは経営チームを組成するメンバーの志向性や特徴のバランスの良さとも言えます。中堅企業においてガバナンスは「一部の人が暴走出来なくし、健全に成長し企業価値を高めるため」に作られると考えて頂きたいと思います。ガバナンスに取り組んだほうがいいことは共通理解としてある中、いつから、どこまで、どうやってやるのか・・・?を判断する上での基準について次項にてお話を致します。
日本ではほぼ中小企業・中堅企業向けのガバナンス基準が無い状況ですが、EUではInternational Finance Corporation(IFC)等が中小企業にスポットを当ててガバナンス標準の検討が進められています(Governance for SME Sustainability and Growth(2018)/SME Governance Guidebook(2019))
上記表では、Key Governance Risks として、 1. 文化とグッドガバナンスへのコミットメント 2. 意思決定と戦略的な監査 3. リスクガバナンスと内部統制 4. 開示と透明性 5. オーナーシップ の観点があり、
アクティブグロース(50-75名)規模では、 文化とグッドガバナンスへのコミットメント
● 組織図におけるコアポリジョンが満たされている状態 ● 主要な方針、基本的な経営理念の表明
意思決定と戦略的な監査 ● 外部アドバイザーを正式採用 ● 重要な意思決定をエグゼクティブとの協働で実施 ● 署名権限の限定的な委譲 ● 人員配置の優先順位を特定 ● CEOと重要人材を念頭に置いた事業継続計画
リスクガバナンスと内部統制 ● 行動規範に関する基本原則 ● 基本的なビジネスリスク(キーパーソンリスクも含む)の特定 ● 税金の支払い、記録、申告のためのプロセスと現金管理に関するコントロール
開示と透明性 ● 毎月の銀行口座の照合結果を創業者に開示 ● 創業者、株主、取締役は、定期的に一貫した財務および非財務情報を受け取る ● 企業の公共的なプロフィールが作成されている
オーナーシップ ● 非家族と家族の問題の違いを認識する ● ファミリーサクセッションプランを意識している ● 年1回の株主総会
組織的発展(76-150名)規模では、 文化とグッドガバナンスへのコミットメント ● ガバナンストップの存在 ● コアプロセスの文書化 ● 企業イベントカレンダー
意思決定と戦略的な監査 ● 継続的かつ体系的な外部からのアドバイスが受けられる ● 戦略、資金調達、人材配置に関する全社的な議論 ● エグゼクティブ/マネジメント(または同様の)委員会の正式化 ● スタッフを惹きつけ、維持し、動機付けるための人事方針 ● 重要人物の後継者育成のための枠組み
リスクガバナンスと内部統制 ● 倫理・行動規範の詳細制定 ● 目標、戦略的計画 予算、重要業績評価指標、明確な説明責任 ● プロフェッショナルなCFOの存在 ● 基本的な内部監査機能 方針と手続き 戦略的・業務的リスクを監視・軽減するためのおよびオペレーショナル・リスクの監視と軽減のための方針と手順の制定 ● ビジネスユニットには明確な 権限、報告ライン およびガイドラインの制定
開示と透明性 ● 国内会計基準に準拠した財務諸表 ● 特定された情報共有者 ● 重要な決定事項は、正式に 全スタッフに伝達される ● 基本的な業績報告書は 外部アドバイザーに提示する ● 主要な非財務情報は 公開されている
オーナーシップ ● 創業者、家族、経営者の役割分担の明確化 ● 非同族経営者のキャリアパスの明確化 ● ファミリーの後継者計画 ● 年次株主総会では、主要な決定事項、配当、計画について議論
と基準が示されています。日本では記載の規模でここまでのガバナンスが効いているケースは少ないですが、何からすべきかという基準としては、参考にしたい内容です。
企業規模が大きくなるまでガバナンスは意識しないことが多いですが、企業規模が大きくなったら突然出てくるテーマでもあり、重要度は高いが、緊急度が低い、経営理念浸透策、行動規範、不祥事対応、子会社管理、事業承継といったことがガバナンスと繋がるため、短期的に売上に直結しない事柄についても取り組んでいくことは、100億業化を実現する上で必要となります。
今回は、100億企業に向けての中堅企業のガバナンス戦略「非上場・上場に関わらず、経営者が持つべき視点についてお話をさせて頂きました。長期ビジョンを構築する際にガバナンス戦略も組み込んでいきましょう。100億企業化に向けて、事業戦略のみならず、ガバナンス戦略を含めて、お気軽にご相談ください。最適なタイミングと機能のご提案をさせて頂きます。
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