児童発達支援事業所の経営戦略:成功への3つの鍵

児童発達支援事業所の経営では、多くの法人が「新規利用児童の獲得」、「人材の確保」、そして「組織の活性化」という大きな課題に直面しています。
既存施設の稼働率向上、持続的な事業展開、そして組織全体の一体感醸成のためには、戦略的なアプローチが不可欠です。
児童発達支援事業所を成功に導く経営戦略
1. 新規利用児童を増やすポイント
新規利用児童の獲得は、既存施設の稼働率を向上させる上で最も重要な要素です。
〈重要なKPI(目標達成指標)を設定し、定期的に見直す〉
事業の状況を正確に把握し、改善点を見つけるために、以下のKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に進捗を確認しましょう。
● 売上: 月間250〜350万円を目指します。稼働率アップと加算の取得が鍵となります。
● 経費: 月間150〜220万円に抑え、特に人件費は売上の50〜60%を目安とします。
● 営業利益: 20〜30%を確保するためには、適切な人員配置が重要です。
● 延べ利用日数: 月間250〜320回、1日あたり10〜13人の利用を想定します。
● キャンセル率: 予約に対する欠席数を最小限に抑え、10%以下を目指します。
● 平均利用回数: 1人あたり週2回以上、月間8回以上の利用を促しましょう。
● 問い合わせ数: あらゆる集客経路から月間7件以上の獲得を目指します。
● 契約率: 利用者数増加のために重要であり、80%以上が目標です。
〈効果的な集客施策〉
サービスの認知度やターゲット層の人数に合わせて、効果的な施策を使い分けましょう。
● 幅広い層へのアプローチ(福祉サービスを知らない・探している層):
○ 講演会やイベントの開催
○ 新聞折り込みチラシ、ポスティングチラシ
● 福祉サービスを既に知っている層へのアプローチ(対象人数が少ない層):
○ 口コミや紹介
○ 相談支援事業所などへの訪問営業
○ ポータルサイト、SNS、自社サイトを活用したWEB集客
〈訪問営業成功の秘訣〉
障がい福祉業界での訪問営業では、以下の4つのポイントが成功に繋がります。
1. 高精度: 紹介を得られやすい場所を優先して訪問しましょう。
○ 相談支援事業所: 児発・放デイの利用計画を作成するため、紹介見込み者が多く、重要度が非常に高いです。
○ 自治体の障がい福祉課: サービス利用を検討している保護者が最初に相談する場所であり、自治体内の事業者リストも把握しているため、重要度が高いです。
○ 療育センター・保健センター: 発達検査で指摘を受けた方が相談に来る場所で、事業所の紹介も可能なため、重要度が高いです。
○ 家族の会・保護者の会: 利用見込み者に直接アプローチできる場であり、重要度が高いです。
2. 高頻度: 一度きりの訪問で終わらせず、継続的な関係構築が重要です。
3. 高再現性: 誰が訪問しても同じ結果を出せるよう、ツールを活用して標準化しましょう。
4. 営業管理: いつ、誰が、誰に、何を話したかを明確に管理することで、効率を高めます。
○ 配布物: 訪問時には、事業所通信、イベントのチラシ、アプローチブック、利用児童の成長事例などを活用すると効果的です。
〈イベント企画で集客を加速する!〉
イベントは集客に非常に効果的な手段です。
● チラシ配布による成功事例:50,000部のチラシ配布で25名の集客に成功した事例があります。
○ ポイント: ターゲット(保護者・関連機関)を明確にし、事業所の強みを前面に出しましょう。見学会や体験会の日程を具体的に示し、メディア掲載情報や第三者評価も盛り込むと信頼性が増します。統一感とカラフルさを持たせつつ、スタッフや利用者の声、療育内容も記載することで、魅力的なチラシになります。
● オンライン講演会による成功事例:オンライン講演会で100名以上を集客した事例もあります。
○ ポイント: 教育委員会の後援を得て、学校でチラシを配布すると信頼性が高まります。保護者が関心を持つテーマを設定し、ゲスト講演を依頼するのも良いでしょう。「利用者集客」を直接訴求せず、勉強会として企画することで参加へのハードルを下げられます。保護者が参加しやすい土日などにオンラインで実施することで、広範囲からの集客が可能になり、講演会の最後に個別相談へ誘導すれば、見込み客獲得に繋がります。
〈WEB販促の活用〉
現代において、WEB販促は非常に重要な集客手段です。
● PPC広告・Google広告: 放課後等デイサービス事業所では、問い合わせ単価のKPIが8,000円/人、契約単価が12,000円/人とされています。
● 成功事例: ある事業所では、1ヶ月の広告費94,800円でWEB経由の問い合わせ14件、契約4件を獲得しました。これにより、問い合わせ単価は6,770円/件、契約単価は2
3,700円/件という優れた実績を達成しています。
2. 成果につながる採用施策
事業を継続的に展開するためには、絶え間ない採用活動が欠かせません。採用は単なる欠員補充ではなく、未来の事業展開のためのものと捉えましょう。
〈採用の目的〉
● 中途採用: 即戦力の確保、新規事業所の管理者獲得、加算取得に必要な資格者の配置が主な目的です。
● 新卒採用: 若手職員の採用、次世代の幹部候補の育成、組織全体の活性化に繋がります。
〈採用戦略の立て方〉
効果的な採用活動のためには、以下のステップで戦略を立てることが重要です。
1. ターゲット設定: どのようなスキルが必要か、具体的な人物像、事業計画上必要なポジションの人材を明確にしましょう。
2. 採用計画策定: 採用目標人数、いつまでにどの職種が必要か、中長期的な離職も見据えて計画を立てます。
3. 求人手法選定: 自社の採用計画に合い、かけられる予算を考慮した手法を選びましょう。
4. フォロー体制確立: 入社前のフォローや、入社後の受け入れ態勢を整えることで、定着率を高めます。
〈中途採用の有効な手法〉
● Indeed有料掲載: 圧倒的な流入数を誇り、月2〜10万円程度で掲載可能ですが、応募者の年齢層が若く、面接に繋がりにくい場合もあります。しかし、優先順位は高いです。
● ハローワーク: 無料で掲載でき、年齢層は高くなる傾向がありますが、基本的に掲載すべきです。
● 採用イベント: 問い合わせ数の確保に効果的で、地元で働きたい方や主婦・シニア層の確保に繋がります。費用は20〜30万円程度です。
● 専門媒体への掲載(ジョブメドレーなど): 採用しやすいですが、Indeedなどに比べて採用経費がかかる成功報酬型です。
● 人材紹介会社: 人員基準を満たす資格者の採用が難しい場合に利用しますが、費用が100万円以上かかることもあるため、優先順位は低いです。
● お仕事説明会の開催: 採用の場ではなく、「仕事内容・施設見学・法人紹介」の場として位置づけ、説明会の満足度を高めて応募に繋げることを目指しましょう。40〜50代のスタッフやパートスタッフの採用に向いており、地方開催の方が効果的です。
○ チラシ作成・配布のポイント: 「オープニングスタッフ」を強調し、3日間で1日3回開催するなど、参加しやすいように工夫しましょう。募集資格・経験を複数明記し、「私服OK」など参加しやすい文言を追加します。フリーペーパーなど各家庭に配布される媒体で配布したり、求人掲載ではなく折り込みで視認性を高めたりすることが効果的です。
● ジョブメドレーの活用: 医療や介護福祉職に特化した求人サイトで、職種によって採用経費はかかりますが効率的です。スカウトメッセージの表示文字数は140文字前後なので、この文字数内で事業所の特徴や強みを簡潔に示すことが重要です。
〈新卒採用の有効な手法〉
新卒採用は、一般的に3店舗目以降の展開を視野に入れるのが適切で、必要な採用人数に応じた施策を行うのがポイントです。
● 有効な採用手法:
○ 学校訪問: 採用コストが低く、意欲の高い学生を採用できますが、採用人数が多い場合は非効率です。
○ インターン: 入職後のミスマッチが少なく、応募母数を形成できますが、仕組みづくりと専任スタッフが必要です。
○ 新卒専用媒体(オファーボックスなど): こちらからオファーをかけることで名簿獲得ができますが、地方では登録学生数が少ないケースがあります。
○ 自社採用サイト: 学生のロイヤリティが上がり応募率が高まりますが、制作に費用と工数を要します。
● 特に「学校訪問」と「インターン」は、取り組みやすく、効果が出やすい方法です。
○ 学校訪問の進め方: 福祉系の大学や資格取得可能な専門学校をリストアップし、キャリアセンターへ求人票や法人案内を置いてもらいましょう。現職員の母校や在籍していたゼミなどにアプローチすると、採用に繋がりやすいです。児童系や福祉系の学部の場合、実習先として認められるケースもあり、win-winの関係で紹介に繋がることがあります。
○ インターンの進め方: 日程・スケジュールを企画しチラシを作成します。学校訪問と同様にキャリアセンターへチラシを置いてもらい、アプローチを開始しましょう。専門資格を持つ方の多くは、実習先や病院などを就職先に選びがちで、障がい福祉業界への就職が選択肢にない方も多いため、採用したい人数の倍の人数をインターンで集める覚悟が必要です。近隣の専門学校や大学などへ告知を実施し、インターン集客チャネルとして採用専用のSNSアカウント(特にInstagramは若い女性ユーザーが多い)を作成することが有効です。新卒保育士の場合、実習に入る前の実施(例: 25卒であれば2023年秋〜冬ごろ)が好ましいです。
3. 内部環境を整えて組織を活性化する
多店舗展開や規模拡大を目指す上で、組織マネジメントの強化は非常に重要です。
採用力強化だけでは、「穴の開いた器に水を注いでいる状態」になってしまいます。
「注ぐ水の量を増やす(採用数の増加)」だけでなく、「空いた穴をふさぐ(離職者の減少)」ための従業員エンゲージメント強化が不可欠です。
〈従業員エンゲージメントを高める〉
従業員エンゲージメントは、以下の3つの要素から構成されます。
● 組織への理解度: 組織の目標に共感できれば、自分が組織にいる意義を見出して誇りを持って業務に取り組めます。
● 組織への共感度: 自分の理想と組織が目指す理想が合致していれば、「目指す姿の実現のために、自分は何ができるのか」を考え、行動するようになります。
● 自らの行動意欲: 「理解度」と「共感度」が高まることで、「組織が成長するために積極的に動こう」という意思を持つようになります。
〈組織エンゲージメントの測定方法〉
データに基づいて組織の状況を客観的に把握し、経営陣で仮説を立てた上で施策を決定し、継続的に効果を測り続けることが重要です。船井総研では、「組織SANBŌ」の活用を推奨しています。これは、役職、性別、勤続年数、所属部署、年齢といった基本プロフィール項目に加え、事業推進力、会社・仕事への誇り、上司への信頼・社員間の関係、自身の将来像、評価・報酬、働く環境整備、多様性、理念・ビジョンへの共感など、多岐にわたる診断項目に基づいて従業員エンゲージメントを測定します。施策実施中・実施後にもスコアの進捗を測ることが可能です。
〈“自走式”組織を作るために〉
従業員の成長意欲を阻害する要因を理解し、組織の構造と個人のモチベーションの関係性を把握した上で、適切な育成を行うことが重要です。
● 個人特性を考慮した1on1面談や評価サイクル制度: 目的を持たない面談や制度は意味がありません。個人の社会人としての成長と会社・組織貢献(MBO・OKRなど)という二軸で目標設定を行い、定期的なフィードバック面談を通じて、良い点と改善点を明確にし、具体的な目標と実行策を設定しましょう。
● 社内研修の強化: 階層別研修や職務別研修を実施し、組織の縦横を鍛えます。マネジメント領域、施設管理者、次世代幹部、中間領域、初任者領域、行政領域といった職務に応じた研修を優先度を設定して行いましょう。
〈企業/経営理念の浸透〉
法人の方向性と個人の方向性、そして業績・成果が一致している状態が理想です。根幹となる「WHY(なぜ企業があるのか)」の部分を明確にして、組織全体に浸透させることが重要ですし、弊社がお手伝いできます。
1. トップの思考の整理と言語化: 障がい児・障がい者福祉を通じて達成したいこと、自身の夢、経営者の得意なこと・好きなこと、大切にしている考え方、従業員に大切にしてほしいこと、そして将来の展望(来年、5年後、10年後)などを具体的に言語化します。
2. 思考の戦略化、施策の戦術化: PMVV(Purpose, Mission, Vision, Value)を経営方針の物差しとして徹底的に施策に落とし込みます。
● 経営方針発表会: 経営理念や方針を組織全体に浸透させるための効果的な場です。代表挨拶、企業・経営理念、経営方針、行動指針の説明から始まり、前期の振り返り、中長期経営計画、今期経営計画、部門別事業計画と進めます。表彰やムービーなどの演出を加え、外部講評、代表総括、懇親会と続くことで、社員を巻き込み、組織の一体感を高めます。
これらの多岐にわたる施策を総合的に実行することで、貴法人の事業活性化と多店舗展開が成功に導かれると弊社は確信しています。
船井総研への経営相談をおすすめします!
船井総研は、これまで多くの放課後等デイサービス事業所の経営を支援してきました。貴法人が直面する可能性のある児童発達支援の経営課題に対し、新規集客の仕組み作り、福祉職員の特徴を理解した組織活性化戦略、そして時代の流れに適応した採用活動といった、実践的で具体的な解決策を提供します。
貴法人が目指す「差別化できる療育内容の発信」「WEB・SNSの強化」「イベント企画から実行までのサポート」「人材定着のための組織体制構築」「PMVV・経営方針の浸透」といった多店舗展開成功の共通点に対し、船井総研の専門家が伴走いたします。
ぜひ、貴社のさらなる発展のために、船井総研にご相談ください。貴法人の現状を深く理解し、最適な成長戦略を共に描き、実行をサポートさせていただきます。
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