今、AIというワードは日常茶飯事に出てきますが、「正直良く分からない、イメージ湧かない」、そんな方が多いでしょう。関連本やネットを見ても、漠然とした概論念か、あるいは逆に、戦闘的な技術論かの両極端になっていて、経営に活かせて“良い具合”に解説されたものを見掛けることはまずありません。そこで、今回は「AIって何?」というレベルで解説します。
例えば、企業における営業活動。デジタル活用している企業も多いですが、結局は人的な営業マンの力に依存している企業は多いものです。そこで課題になるのは、営業マンの経験やスキルによって差が出る「属人化」という課題です。この「属人化」という課題にこそAIを活用できます。
営業マニュアルをいくら整備しても、顧客との商談の中ではそのマニュアル通りにならなかったり、すべてのシナリオを想定したマニュアルを作ろうにも、そのパターンが膨大過ぎてほぼ不可能だったり、そもそもそのマニュアルにはないことの方が実は重要だったりします。こういう時にAIを活用するとどうなるか?ですが、まず、その顧客との商談すべてをデータ化します。つまり、顧客との会話の録音です。会話をデータベース化して、受注できた会話と失注した会話で何が違うのか、受注&失注会話データを解析します。
その結果、受注会話ストーリーと失注会話ストーリーを数種類・数十種類、さらには、数千種類にも分けて作ります。数種類くらいならば人間でもできますが、数千種類ともなれば人間では無理です。人間が1桁2桁の暗算は出来ても、数千桁の暗算は出来ないのと一緒です。将棋のAIを思い浮かべて頂ければ良いでしょう。
イメージはこうです。まず、営業マンは数千種類の過去の受注・失注ストーリーのデータベースを持ったAI搭載のノートパソコンを持って、顧客との商談に入ります。顧客との会話は自動で録音・データ化されてノートパソコンにインプットされます。すると、AIにより、随時、顧客との会話から受注・失注パターンの判断がされて、失注になりそうな会話になったら、受注に持っていけるように、イヤホンから自動でAIからヒアリング指示やトーク指示が来ます。まさに、同時通訳的に、イヤホンを通じて経験豊かなベテラン営業マンから遠隔指示が来るようなものです。これは、リアルな営業活動の中では日常的にやっているはずです。若手営業マンにベテラン営業 マンが同席してフォローしているという光景です。それをAIが肩代わりしてくれるのです。
この例の最大のポイントは、過去商談のデータベース化であり、過去商談のパターン分けです。ここがキーポイントです。要するに、最も大事なことは、過去の良いデータを多数集めることです。AIシステムの中身云々と言うよりも、基礎となる過去データ集めが最も重要なのです。
どうも、AIを「未来からの贈り物?」と勘違いしている方が多いように感じます。SF映画のように、未来から凄いものを提供してくれると勘違いしているようなのです。そうではありません。あくまでも「過去の蓄積」です。「過去データの蓄積」です。しかも、「他社からの贈り物」でもありません。他社の蓄積ではなく、「自社の蓄積」です。もう1回言いますが、「未来からの贈り物」でもなく、「他社からの贈り物」でもなく、「自社の、かつ、過去データの蓄積」なのです。かなり“地道なもの”の積み重ねなのです。
AIって何???
2021年06月30日