いっけんネガティブに捉えられがちだが、売上高2桁成長に必要不可欠な経営指標とは?
内閣官房ホームページでは、官民が連携し「成長」と「分配」の好循環を実現する「新しい資本主義」が掲げられており、主な施策パッケージ案として「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」があります。その中で成長型経済を実現するには「賃上げこそが成長戦略の要」とあります。賃上げを実現する為の主な施策として「取引価格の適正化」「生産性向上」「事業承継・M&A」「人材育成」が挙げられています。
この中にヒントがあるのですが、今回のクイズではいっけんネガティブに捉えられがちな経営指標にも関わらず、売上高2桁成長に必要不可欠であることをデータを交えて解説すると共に、その構造的課題と打開策についても分かりやすく解説していきます。
【独自データ分析】 成長企業が持つ唯一の共通指標は「〇〇」だった
上記グラフは株式会社東京商工リサーチデータ(400社)のデータをもとに船井総研が加工したものです。10年GACR(過去10年の平均成長率)2桁の高成長企業と、それ以外の非成長企業の「〇〇」を売上高別にグラフ化したところ、非成長企業は売上増加に伴い徐々に「〇〇」が減少しているのに対して、売上高2桁成長企業は売上高30億円を境にして20ptもの大きな差が生まれていることが分かります。
答えは「攻めの投資に踏み切っているから?」でしょうか。
非常に鋭い答えをありがとうございます。概ね正解なのですが「大きく投資したくても、手元の資金がないので、小さな投資にならざるを得ない」となってしまっているのが、非成長企業の実態です。つまりは「大きな投資を実現する為の手段」にこそ正解が隠れています。
借入は「負債」だが、理由によっては「金融機関からの信用」となる
通常、借入が多いことは負債が多いと見なされ、財務の健全性が低いと判断されがちです。しかしながら、借入理由によっては以下表のように全く逆の見え方になります。
借入理由 | 見え方 |
|---|---|
| 足りない運転資金のため | 金融機関からの不信感(資金管理能力の疑い) |
| 成長のための攻めの投資 | 金融機関からの信用(将来の成長性への期待) |
中堅中小企業が成長するためには、生産性を高めるための設備投資や、新しい事業を始めるための新規事業投資が必要不可欠です。一方で、これらの大規模な投資には、自己資本だけではカバーしきれず、結果として金融機関からの借入に頼ることが多くなります。
金融機関からの借入するには、主に「返済能力の証明」「資金使途の明確化」「事業の将来性のアピール」が重要な要素になります。これらの要素を裏付けるために「事業計画書」や「決算書」を用意し、面談を通じて経営者の資質を伝える必要があります。この流れからもわかるように借入のすべてがネガティブというわけではなく、「成長のための攻めの投資」であれば金融機関から信用といったポジティブな意味合いを持ちます。
成長を阻む構造的課題「金融空白地帯」とは何か
出所:日下智晴氏の論文「リレーションシップバンキング再考―地域金融機関の経営基盤強化のための方策」より船井総研が加工
上図「規模別金融サポートの実態」をご覧いただくと、事業拡大を目指す企業をサポートする金融機関は、売上高50億円までは地銀、売上高70億円以上がメガバンクとなっており、売上高50億円~70億円はメガバンク不在領域になっています。これが企業成長を阻む構造的課題「金融空白地帯」です。
金融空白地帯を打開する財務戦略「多行取引」のメリットと実践法
金融空白地帯を打開するには、どういった財務戦略が必要なのでしょうか。船井総合研究所のクライアントのうち、実際に100億企業化を実現した企業を見てみると、売上高100億円を達成した時点で約20行以上もの金融機関との多行取引が目安となっている事実が見えてきました。
地銀1行で必要な借入額を賄えない場合でも、複数の地銀から借入することで大きな投資を実現できるメリットがあります。けれども、約20行以上もの金融機関に対して、経営者と財務担当者は金融機関のコベナンツに対応する必要があり、情報のとりまとめや金融機関への説明対応に多くの時間を割かれることになります。優秀な財務担当者を配置できなければ、経営者は事業に集中できなくなる課題が出てきます。
この課題を解決するには、企業側から戦略的に情報を開示する「決算説明資料」の作成・実施が非常に重要になります。決算説明資料では、損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)の実績値だけでなく、業績変動の要因、具体的な施策、今後の事業展開などを具体的に共有します。
特に、金融機関が重視する自己資本比率や債務償還年数といった財務指標を明確に示し、さらに事業計画の具体性を裏付ける月次管理の状況なども開示することが、信頼構築のポイントになります。このようにあらかじめ決算説明資料を用意しておくことで、個別対応を無くし高い生産性を実現できます。
まとめ:売上高2桁成長企業を実現する「攻めの財務戦略」と「金融空白地帯」の打破策
成長のための大きな投資
企業の成長のために「生産性向上のためのDX投資」「事業承継・M&Aによる拡大戦略」「新規事業の立ち上げを通した人材育成」など、大きな投資は必要不可欠です。
投資に必要な借入を多行取引で実現
地銀1行で必要な借入額を賄えない場合でも、複数の地銀から借入することで大きな投資を実現できるメリットがあります。
決算説明資料で高い生産性を実現
20行以上もの金融機関との多行取引を実現するには、あらかじめ決算説明資料を用意しておくことで、個別対応を無くし高い生産性を実現できます。
この「売上高2桁成長企業に共通する〇〇スコア」の答えと解説について、以下より無料ダウンロードいただけます。
