たった8.6%の経営者だけが描く目標設定の謎
船井総合研究所が毎年行っている経営者アンケートの結果(n=2,481)を分析したところ、たった8.6%の経営者だけが描く目標設定がありました。一般論で考えると、全ての経営者が目標設定した方が良いと思われますが、いったい何故8.6%に留まるのでしょうか。
この記事では、私たち船井総合研究所の調査データを元に、このスコアの正体を解き明かし、企業の成長と経営者の目標設定の間に存在する、深く重要な関係性について分かりやすく解説していきます。
スコアの正体:「売上高〇〇億円を目指す企業」の割合
私たち経営コンサルタントが経営者と対話する中で、多くの経営者が「昨年よりも今年」「今年よりも来年」常に昨年対比で成長していくことを目指して、日々の経営に取り組んでいます。裏を返せば、創業当時から「売上高〇〇円を達成する」大きな売上目標を掲げて、毎年の成長に取り組む経営者は極めて少数派です。
先ほどの謎の答え、それは「売上高〇〇億円を目指している企業の割合」です。当社のアンケート調査によると、企業の売上規模が大きくなるにつれて、「売上高〇〇億円」という目標を掲げる経営者の割合が劇的に増加することが明らかになりました。以下の表は、その詳細を示したものです。
このデータを見ると、特に売上高50億円を超えたあたりで、過半数の経営者が売上高〇〇億円という大台を明確に視野に入れていることが分かります。一方で、調査対象となった企業全体の平均は8.6%にとどまり、10社に1社未満の企業しか売上高〇〇億円という高い目標を掲げていないのが現状です。
では、この一見シンプルなデータは、私たちに何を教えてくれるのでしょうか。このデータの背後にある経営者の心理と戦略を読み解いていくために、売上高〇〇億円という高い目標を達成した経営者のリアルな声を見てみましょう。
経営者のコンフォートゾーン化
船井総合研究所が行った売上高〇〇億円という高い目標を達成した経営者へのインタビューの中で「成長を阻害する要因と考えられること」について質問をしたところ、複数の経営者から成長段階でいわゆる心地よい規模感=コンフォートゾーンが訪れたとの回答を得ました。以下に代表的なものを紹介させていただきます。
■売上高〇〇億円を達成した経営者へのインタビューより①
業界が成熟しているとは言え、安定した家族経営ができているのに あえて時間を費やし、リスクを冒す必要があるのだろうか? |
| 会社を経営して、20億円を超えてから50億円くらいが、一番楽で心地よい(コンフォートゾーン)。個人的な収入としても満たされる。自分が何もしなくても会社が仕組みで回って、売上が入ってくる。 そうなったときに、経営者によっては、だんだん現場に出なくなり、ゴルフが増えたり飲みが増えたり、というようになっていく人もいる。でも、それも人生。そういった部分で快適に経営者人生を過ごしていくのか、もう1段階上を目指していくのか?もう一段階上、となると、リスクに挑んでいかないといけない。且つ成長痛を覚悟しないといけない。 もうひと伸びするには、コンプラ面だったりマネジメント面だったり、窮屈なこともあるし、知らない領域の勉強も必要だったりするので、ストレスはかかる。もうひと伸びを目指すんだ、というスイッチが入るキッカケは経営者によってそれぞれだが、そのスイッチが入るかどうかであった。 |
■売上高〇〇億円を達成した経営者へのインタビューより②
自身が見えている範囲内で安定した経営が行えているのに、誰かに任せるリスクをとる必要があるのだろうか? |
| 1拠点(管理しやすく、リスクの少ない事業運営)で収益性が確保され、低成長でも赤字にならない。また、1拠点目のモデルづくりに最大投資できていない企業ほど展開へネガティブなことが多い。 さらに2拠点目を出すということは経営者以外で店舗経営を任せる人材が必要になるため、「後継者がいない」「経験値が高く信頼できる人材がいない」状況がある場合は次の一歩へのリスクが相乗的に高まっていくことが多い。 |
売上高〇〇億円を達成した経営者を通して見えた3つの重要な心理変化
実際に売上高〇〇億円を達成した経営者の声ほどリアルな答えはありません。あらためて売上高〇〇億円を目指す企業が抱える課題「経営者のコンフォートゾーン化」と、それを突破する戦略を紐解いていきます。
①売上高20億~50億円で、コンフォートゾーンが訪れる
創業してから何とか売上高20億円に到達し、ようやく経営が安定してくると、仕組みで回るようになってきます。「だんだん現場に出なくなり、ゴルフが増えたり飲みが増えたり」経営者人生が快適になってきます。
②売上高50億円で、葛藤が生まれる
拠点を複数立ち上げるには、店舗経営を任せる人材が必要になることから、経営者自身の役割を進化させる必要があります。幹部育成、マネジメント、コンプライアンスなど、新たな領域を勉強する必要があり、現状の快適さをわざわざ捨て去ってまで「もう1段階上を目指していくのか」大きな葛藤が生まれます。
③売上高50億~100億円で、スイッチを入れる
それでも尚、リスクをとって高い目標を目指していくキッカケは経営者それぞれですが、コンフォートゾーンを突破する「スイッチを入れる」には、経営者自身の強い意思が必要不可欠です。逆に考えると、だからこそ売上高50億~100億円の経営者の過半数が、売上高〇〇億円という高い目標を掲げていると分かります。
まとめ:企業成長を阻害する「コンフォートゾーン」を突破する強い意思が必要不可欠
企業成長における最も重要な教訓は、経営者の「目標設定」の高さと、成長を阻害する「コンフォートゾーン」を突破する強い意思に集約されます。経営が仕組みで回り始め、個人的な収入や快適さが満たされるコンフォートゾーンが訪れると、多くの経営者がここで立ち止まる傾向があります。
この心地よいコンフォートゾーンを突破し、もう一段階上の成長(多拠点展開、幹部育成、マネジメント強化など)を目指すには、リスクを冒し、成長痛を覚悟した上で、経営者自身が「売上高〇〇億円」という高い目標を目指すスイッチを入れることが必要不可欠だと教えてくれます。
この「売上高〇〇億円」の答えと解説について、以下より無料ダウンロードいただけます。
