■中堅企業の未来を拓く羅針盤:カリスマ依存からの脱却と次世代経営チームの構築
昨今の激動の時代において、中堅企業が持続的な成長を遂げるためには、限られた経営資源を最適に配分し、グループ全体の企業価値を最大化する「グループ経営管理の仕組み」の構築が不可欠です。
同時に、未来の成長を担う「経営者・幹部育成の仕組み」の整備も待ったなしの課題と言えるでしょう。もはや、一人の「カリスマ社長」に依存する旧態依然とした経営体制では、変化の激しい多角化時代を勝ち抜くことは困難です。企業グループの成長ステージに応じた柔軟な体制を築き、組織的な経営力を高めることこそが、成功への鍵となります。
■企業が直面する経営課題:カリスマ社長依存からの脱却
多くの成長期にある企業グループが共通して直面するのは、経営の重責が特定の人物、特にカリスマ的な社長に集中してしまうという課題です。
社長の多忙さは、事業執行に加えてグループ全体の経営推進の役割も担うため、将来のビジョンを描いたり、新たな戦略を立案したりする上で十分な時間を確保できない状況を生み出します。
また、グループ経営を戦略的に推進できる専門人材の不足や、その人材を計画的に育成する仕組みが欠如していることも、看過できない課題です。結果として、個々の子会社が自律性を高めるあまり、グループ全体としての統制やガバナンスが効きづらくなるケースも散見されます。これは、グループとしての一体感を損ない、経営資源の最適配分やシナジー創出の機会を逸する原因となりかねません。
■「攻め」のホールディングス経営戦略がもたらす変革
これらの課題を克服し、持続的成長を実現するための有効な打ち手の一つが、「攻め」のホールディングス経営戦略です。この戦略の核心は、「経営」と「事業執行」の役割を明確に分離することにあります。
親会社(持株会社)は、グループ全体の企業価値最大化という大局的な視点に専念し、戦略立案、M&Aや新規事業開発といった事業再編の判断、グループ全体の経営資源配分といった役割を担います。
一方、事業会社は、それぞれの事業に特化し、日々の事業執行に注力することで、市場の変化に迅速に対応し、専門性を高めることが可能になります。この役割分担により、グループ全体としての意思決定の迅速性が向上し、M&Aや新規事業開発などの事業再編をより柔軟かつ機動的に進めることができるようになります。
そして、この戦略の最大の効果は、「脱・カリスマ社長依存」の実現です。
社長一人の負担に集中させるのではなく、取締役会やグループ企画、財務・経理、人事、システム、総務・法務、統制などの本部機能を強化することで、グループ経営をチームとして推進する体制を構築します。これにより、経営の安定性が増し、特定人物へのリスク集中を回避することができます。
■成長ステージに応じたグループ経営チームと本部機能の強化
グループの持続的成長を確実にするためには、その成長ステージに応じてグループ経営チームと本部機能を戦略的に強化していく必要があります。その際には、下記の3つの項目を意識することが大切です。
- 1.グループ経営チームの役割明確化
経営トップは、「経営トップにしかできない重要な意思決定」にそのエネルギーを集中できるような体制を築くべきです。
そのためには、次世代を担う経営幹部からなるチームを育成し、彼らがグループ経営活動の主たる担い手となるよう権限を委譲し、その役割を明確にすることが重要です。 - 2.グループ本部機能の整備
グループ全体の戦略を立案し、実効性あるガバナンスを強化するために、グループ本部機能の整備は不可欠です。財務戦略、人事戦略、IT・DX戦略、リスク管理といった中核機能を強化することで、グループ全体の効率性と統制力を高めます。 - 3.組織体制の最適化
グループの売上規模(例えば、100億円、300億円、500億円超といった規模感)に応じて、グループ本社部門の人員体制の目安を設定し、柔軟に変化させていくことが求められます。また、持株会社が事業会社に対して保有する権限も、グループの規模拡大に伴い、細部の指示からチェック機能主体へと調整していくなど、常に最適化を図る必要があります。
■未来を担う経営者・幹部育成の仕組み
持続的成長の要は「人」にあり、未来の経営を担う人材をいかに育成し、適所に登用するかが極めて重要です。
- 1.キャリアパスの設計
事業の実態や現場を深く理解している人材こそが、グループ経営に携わるべきです。
そのためには、各グループ会社の部長職から、ホールディングス(HD)の各部長、事業会社取締役、さらにはHD取締役へと繋がる明確なキャリアパスを設計し、運用することが不可欠です。これにより、人材は段階的に成長し、グループ全体の視点を持つことができます。 - 2.人材登用のポジション確保
意欲ある経営人材の育成・成長機会を創出するために、事業会社の社長というトップポジションを戦略的に確保し、育成機会とすることが重要です。これにより、実践的な経営経験を積ませ、次世代のリーダーを育成します。 - 3.早期の人材登用・育成の必要性
組織体制を強化し、持続的な成長を実現するためには、機能を発揮できる人材を早期に登用し、育成していくことが極めて重要です。待つのではなく、積極的に機会を与え、成長を促す姿勢が求められます。
■貴社の成長を加速するコンサルティング
船井総研では、中堅企業グループの持続的成長を強力にサポートするためのコンサルティングサービスを提供しています。
- 1.グループ経営機能設計・整備支援
貴社の現状と成長ステージに合わせた最適なグループ経営体制の構築を支援します。 - 2.グループ人事(経営人材育成・キャリアパス設計)コンサルティング
未来を担う経営人材の育成、具体的なキャリアパス設計、そして早期登用の仕組みづくりをサポートします。 - 3.ホールディングス化(組織再編)の検討・実行支援
ホールディングス体制への移行を検討されている企業様に対し、組織再編の実務検討から実行までをトータルで支援します。 - 4.コーポレート機能整備(権限、分掌業務整備)
グループ全体のコーポレート機能の最適化、権限や業務分掌の明確化を通じて、効率的で統制の取れた経営基盤を構築します。
貴社の成長ステップに合わせたコンサルティングを行いますので、ご興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。
執筆者: 事業イノベーション支援部 ディレクター 佐野 暢彦 さの のぶひこ |