DX人材の採用方法をお聞きしました!
【インタビュイー】ランサーズ株式会社 代表取締役社長CEO 秋好陽介(以下:秋好)
ランサーズ株式会社 Chief Evangelist Officer 根岸泰之(以下:根岸)
【インタビュアー】株式会社船井総合研究所
ライン統括本部 WEBマーケティングユニット 宮井亜紗子(以下:宮井)
時代の変化に応じた仕事の仕方
宮井:今日は、フリーランスの方に仕事を依頼できる日本最大級のプラットフォームであるランサーズの代表取締役社長CEOの秋好さんと、同じくランサーズのChief Evangelist Officerである根岸さんにご登場いただき、DXを進めるためにはどのようなDX人材が必要なのかについてお話をお伺いしたいと思っています。
秋好、根岸:よろしくお願いします。
宮井:ところで、秋好さんはCEOということで皆さんお分かりになると思いますが、根岸さんの「Chief Evangelist Officer」とは、どのような役割になるのでしょうか。
秋好:確かに、初めて聞く名前ですよね。
根岸:同じ名前の役職が付いている人に会ったことないのですが、「Evangelist」は日本語では「伝道師」という意味です。
個人向けには「新しい働き方はこういうふうにするといいよ」という普及活動で、企業側には「こういう組織の作り方がこれからの時代必要だよね」とか「こういう事業の作り方が新しいよね」という、これまでのやり方とは違う時代の変化に応じたやり方を知っていただく事が僕の役割です。
宮井:今の時代で言うとデジタルというところにですか。
根岸:そうですね。
そこが特に絡んでくるかと思いますが、例えばコロナの影響によりリモートワークであったり、人口減少で採用が難しかったときに、今まででしたら会社で採用した社員だけで会社を成長させていく方が多いと思います。
それが当然という考え方だと思いますが、働き方が多様化し、場所も時間も雇用形態もその人のライフスタイルに合わせて変化していく中で、個人側も企業側も今までとは違うやり方といったときに、デジタルとかインターネットは手段として大事なポイントと思います。
DX人材とはどういう人か
宮井:今回のテーマである「DX人材」、そもそも「DX人材」とはどういう人のことか教えてもらいたいです。
秋好:人によっていろいろな定義があるので、私と根岸でも少しニュアンスが違うかもしれませんが、DXの人材はどういう人かと言うと
・インターネットやITを使って売上を上げる
・コストを削減する
究極こういうことかと思っています。
DX人材とは、デジタルツールであったり、そういうデジタル人材を活用して売上を上げるか、もしくはコストを最適化する人だと私は思っています。
宮井:根岸さんはいかがですか。
根岸:少しニュアンスの違った言い方を僕は普段することが多いですが、DXとは何かと言ったときに、デジタルの前に事業を構造改革すると当然組織の構造改革ということも必ずくっついてくると考えています。
「時代に合った構造改革をすること」がDXだと思っていて、それを「推進する人」がDX人材だというように捉えています。
この時代、デジタルというものが一個も使われないということはないと思うので、結果としてデジタルテクノロジーを活用し構造改革をしたり、組織の作り方を改革したりということになると思っています。
秋好:僕は昨日美容室に行きました。
美容室の経営者と話をしていて、美容室の経営において今必要なものは何だと思いますか。
美容師のスキルでも何でもなくて、実はウェブマーケティングです。
ウェブマーケティングがうまい美容室が売上を上げていく。
なので職人さんが美容師のスキルだけが非常に高くても、今若い人たちは皆スマホで「どの美容室がいいかな」と検索して行くのですね。
TikTok等で今美容師さんがマーケティングをしていて、TikTokでイケているカットの見せ方をする美容師さんにお客さんがついている。
それも立派な今日のテーマであるDXだと思います。
美容室ですらDXをしないといけない時代ということは、全ての企業がDXをしないといけない。
そこに逆に、可能性がとてもあると思います。
DXの分野とは
宮井:今の話で言うとDX人材とかDXと言ってもとても分野が広いなというふうに思うのですけど、例えば今どのような分野があるのでしょうか。
根岸:イメージしやすいところで言うと、今の美容室もそうですが、地域でビジネスをしている飲食店などはすべからくDXをしていかないと事業が成り立たない時代になっているのかと思います。
秋好:シンプルに先程申し上げると
・売上を上げること
・今の事業を最適化してコストを下げること
売上を上げるときにはウェブマーケティングであったり、集客であったり、昔ならタウンページに載せて広告していたところが、今はタウンページを見て店に行くという人はそれほど多くないと思います。
我々の親世代であっても、携帯やパソコンを見てお店に足を運ぶと思います。
物を見せるという部分もそうですし、根岸が言ったように、ありとあらゆる部分がデジタル化でき、オンラインに載せられます。
だからこそ逆にオフラインの良さが際立っていくという気はしています。
需要の多いDX人材とは
宮井:ランサーズさんの中でもDX人材の方がいらっしゃると思いますが、上位からいくとどういうDX人材が引く手あまたですか。
根岸:例えば今のインターネットで
・デジタルを活用して集客をすること
・デジタルを活用して商品を売ること
大きくDXにニーズとしてあり、裏を返すとそういうことができるフリーランスがたくさん活躍されています。
・ECサイトを作るエンジニア
・ウェブマーケティング
・ウェブデザイナー
・ウェブライター
そういう方が引っ張りだこになっています。
特に、インターネットを活用してECサイトでものを売るということはコロナの影響もあり、よりリアルで集客や商売が難しくなっています。
ECサイトをうまく活用し事業を維持、成長させようとする中小企業さんがたくさんいらっしゃるので、ECサイトをうまく作れるエンジニアなどは特に引っ張りだこです。
宮井:確かに。
売上に直結するほうが企業さんも取り組みやすいと思います。
経営の最適化で言うと例えばどのような感じですか。
根岸:企業の経営の状況や内容にもよりますが、全てを固定費で抱えないほうがいいというケースがたくさんあります。
例えば、飲食店さんだと、平日はあまりお客さんがいないが、土日や連休に増えるという繁閑の波があると、固定費を抱えていては繁忙期は足りないし、閑散期は過剰ということが起きます。
経営のタイプに合わせて最適化していくときに、必ずしも雇用でないやり方のほうがフィットするというケースはたくさんあります。
そのときの波に合わせて体制を動かしていく際に、フリーランスの方、ランサーズのユーザーさんでそれぞれのスペシャリティを持たれている方に、必要に応じてチームに入ってもらう経営スタイルに変わっているところは最適化されてうまくいっています。
そうでなくて常に固定費がいっぱいでどうしようかと苦しまれている企業さんも多くあるかと思います。
DX人材を採用するには
宮井:そもそも中小企業の方がDX人材にお願いしたい場合は、どこにいるのでしょうか。
自社で採用することは可能なのでしょうか。
根岸:可能だとは思います。
必要なスキルと経験が整理できていて、そのような方を求人募集するというのは可能だとは思いますが、雇用ということを前提条件にしてしまうと結構確率論的には下がってしまいます。
なぜかと言うと、雇用を前提にすると、例えば勤務地が通える範囲に住んでいる人でないといけなかったり、どのくらい仕事をしてほしいという期待に対して、フルタイムでないと駄目であったりします。
そういう方がたまたま今転職を考えているということになると、今どこでもDX人材と言われる人たちは日本中で引っ張りだこなので、なかなか転職市場にも出て来ません。
そこに会社の時間と場所という都合が出ると、なおさら確率的には難しくなると思います。
そういう意味では、適材適所で適した期間やボリュームなども含めて、選択肢をフリーランスの方まで広げると圧倒的に発見しやすくなります。
宮井:地方で、特に中小企業だとDX人材を採用したいが、全く応募が来ないということはあります。
給与の金額的にも他の社員さんとは比較にならないくらいの人件費になるという事があるのでまさにそうだと思います。
DX人材の技術面について
(宮井)ところで、例え採用できたとしてもDXの幅が広すぎるし、技術が廃れたりもするかと思いますが、その辺はどうですか。
根岸:新しい技術がたくさん誕生しているので、今やっていることが来年には古いと言われる可能性は十分あると思います。
構造改革なので、「このツールを導入しましょう」とか「この技術を活かしましょう」というよりも、「やり方や考え方を変えましょう」というところをインストールしてくれれば、ツールAがアップデートして、ツールBが誕生したといったときに「AとBを入れ替えることで効率化はもっとできるよね」ということになります。
このDX人材の方が「ITツールを導入します」というやり方だとあとで困りますが、事業の構造改革をしましょうというところをしっかり担ってくれたら、あとから新しい技術がアップデートされても新しいものに入れ替えていくことで済むのかと思います。
根底を変えにいくというところを最初にきちんとやる、ということを中小企業の経営者の方が意識するとうまくいくと思います。
宮井:まずはデジタルという部分だけでもハードルが高いですし、そこに構造改革もできる人材となると本当に限られてきますね。
非常にハードルが高いと感じます。
スペシャリティのチームを作る
根岸:適材適所に1人で、となるとハードルが高くなりますが、デジタルが得意な方や事業の構造改革が得意な方、さらに言うとデジタルの中でもエンジニアリングの領域が得意な方もいれば、マーケティングが得意な方とかもいます。
1人で全部ではなく、それぞれ色々なスペシャリティのあるチームを作っていくことで発見のしやすさは上がると思います。
宮井:1人で賄わなくてもいいということですね。
根岸:いいと思います。
宮井:逆に、1人では非常に難しいということですね。
何かすごく腑に落ちました。
既存社員とDX人材とのコミュニケーション
今回、ランサーズのお二人にお話をお伺いしたいと思ったのも、DX人材に限らずプロフェッショナル人材を自社で採用したり、抱えたりするのは非常に難しいというふうに思っていたからです。
船井総研でも自社にいないプロフェッショナル人材に関しては、ランサーズさんにご依頼させてもらったりしています。
一方で、社内の人材とコミュニケーションの仕方を変える必要もあるのかと感じていますが、どのような仕事のお願いの仕方が良いでしょうか。
秋好:実は、ランサーズ株式会社自体も、ランサーさんやフリーランスの方に結構お願いしていて、大体1,000人くらいのフリーランスの方と毎月一緒にお仕事しています。
私の秘書もフリーランスでタイのバンコクにいますし、決算発表の資料もフリーランスの方と一緒に作っています。
我々がどう意識しているかという話が参考になるかと思いますが、まずこれは社員だからとかフリーランスだからという前提がある人が多いと思います。
例えば、呼び方一つとっても会社によっては「外注さん」という呼び方をしたり、社員が中心で外注さんというのは外の人という意識があると思うので、ここの意識からまず変えないといけないかと思っています。
今いるフリーランスの方は正社員で副業していたり、その会社に貢献したいと思ってくれている人が非常に多いので、発注側が外注さんという意識でやってしまうと、言われた仕事だけすればいいのだという意識になってしまうかと思います。
なので、我々はフリーランスの方でも一緒のプロジェクトになったら
・「ランサーズのビジョン」とはこういうこと
・ランサーズウェイという行動指針がありますが「こういうことを大事にしています」
・「ゴールはこういうことを目的にやっています」
というふうに、社員だからなどと分け隔てないコミュニケーションを前提にしています。
フリーランスの方が仕事が終わったら社員と同様に評価会議という評価フィードバックをしっかりして、ランサーズの仕事をやってもらうことでフリーランスの方も成長してもらうという、社員と同じように同じビジョンや目標を共有してフィードバックをすることで、彼ら彼女らのコミットメントも上がります。
単に我々が言った作業だけをやってもらうというよりも、一緒にDXをしてもらうということを意識することが非常にいいのではないかと思っています。
会社さんによっては会社の中に内部通報窓口が社員向けにあると思いますが、フリーランスさん向けにもクレーム窓口を用意することによって、社内全体が社外のパートナーに対してよりフラットにコミュニケーションができるような仕組みを用意している会社さんもあります。
今DXの人材の社員が雇用できないという話がありましたが、5年後になればおそらくDX人材のフリーランスの取り合いになると思います。
DX人材に選ばれる企業になる準備
秋好:フリーランスが働きたいと思う企業になってもらうには、就職ランキングではないですが、そのようなことも今後大事になるなと思いますので、今から準備をしている会社は強くなるのではないかと思います。
何よりも経営者がそう心から信じているかということは大事なので、社長次第かなという気がします。
根岸さん、実際やっていてどうですか。
根岸:ほぼ一語一句同じ意見だったので、言うことがないのですが、実際そうだと思います。
雇用形態に関係なく、僕もフリーランスの人と一緒に仕事をお願いしてやっているのですが、必ず「目的と課題」「現状と課題」を伝えています。
自分が考えていたアイデアより素晴らしいアイデアを持ったフリーランスの方がたくさんいて、その方がいいねということがたくさん出てきます。
それを伝えずに作業を伝えてしまうと、言われた通りに動くだけになるので、目的・現状・課題を伝えるということには気をつけています。
先程の秋好の話で、何よりも経営者がコミットする、信じると言うことが大事で、特にトップである社長にあたります。
社長がそこに対して疑っていたりフルコミットでないと、やはり組織に浸透しなくなります。
特に、中小企業さんだったら大手企業より、社長と距離が近いと思うので、社長のスタンスが見えてしまうと思います。
なので、しっかりコミットして信じてやるということが大事だと思います。
ただ、得意でないことはあると思うので、それは構わないと思います。
それは得意な人、フリーランスでもいいですし社内の人でもいいですし仲間としてやっていけばいいです。
ただ、この人は本気ですということが伝わるということが何よりも大事です。
それがないとほぼ100%うまくいかないです。
逆に言えば、社長がフルコミットしていたらどのような壁でも乗り越えていけるので100%と言っていいくらいうまくいきます。
秋好:言霊もありますよね。
下請けというのも上下関係を作るし、外注という言葉もパートナーさんと呼ぶなど変えていけばまた違ってくると思います。
もちろん社員でフルコミットしている人のほうが物理的に働いている時間が多いので、アウトプットが多い場合もあると思うので、社員の方も外部の方と仕事をする中でなかなか部長というロールを全員でやるのは難しいですけど、外部の方とやると疑似のマネジメントを学べるのです。
経営者にとってみるとそういう観点、社員もより成長していくし、全社員がチームを持てるというふうに考えるとコミットしてやるメリットはあるかと、実体験としても思っています。
宮井:本当に選ばれなくなり、一緒に働きたくない会社になっていく可能性もありますよね。
就職したくない会社というのと全く一緒だと今聞いてて思いました。
秋好:それは、就職したい会社とまた別な論理というかロジックな気がします。
就職はしたいけど高圧的な会社だとやはりフリーランスとしても受けたくないですよね。
宮井:よりその会社のスタンスをシビアに見られそうな感じもします。
秋好:DX人材社員であっても、外部のフリーランスや副業・兼業の人でも、そのどちらかだけではなく、ハイブリッドにチームを組んでやっていくことがいいなと思っています。
外部のパートナーのフリーランスもフルコミット的に週5日8時間してくれるフリーランスの人もいますが、空いた時間で副業・兼業を巻き込むことが非常に大事だと思っているので、結果的にそれが変動費化する話にもつながるとは思います。
DX人材の有効活用
秋好:最後に一つ事例として、自社の話をさせていただきます。
ランサーズも実は2年前までエンジニアの開発チームがあり30~40人いたのですけど、全員正社員でした。
2年前くらいから方針を変えてランサーズを卒業した社員や外の会社さんでフルで働いているけど副業でやっている人をオンラインでチームを組んで、今100人くらいの開発体制になっています。
もちろん正社員は8時間なので一番コードは書いてくれるのですが、社員は緊急重要度で言うと緊急で重要なことしかできませんが、社外の副業・兼業の方がチームにいると、空いた時間に緊急ではないけれど重要ということが出来るので、そのような開発が進んでいます。
DXという観点だけでなく、経営としては重要なのだけど緊急ではないことを進めていくにも、外部のパートナー人材は有効活用できていると実感しています。
宮井:今きっと経営者の方でまさにそういうことをやってもらいたいという人もいたのではないかと思います。
根岸さんのほうからは何かありますか。
外部の仲間に頼り、経営者の仕事をする
根岸:少し違うところで言うと、全国の中小企業の経営者の方に、もっと仲間を頼って肩の力を抜いて経営をやっていったらどうかということは思っています。
今僕はエバンジェリストとして地方にいくことが多いですが、どの地域の中小企業の経営者さんも皆非常に頑張っていて、今コロナ禍だからさらに必死でやられています。
そこで自分が全部しようとしている人が多くいらっしゃいます。
経営者の得意なところだったらいいのですが、苦手な部分もあると思うのです。
経営としては全部やらないといけないとなったときに、社員も頑張っているからこれ以上仕事を渡すと大変だろうから出せない。
でもなかなか地域には人もいないから見つからないといって、夜中まで一人で抱えてらっしゃるのです。
そこで、ランサーズをまず知っていただいて、外部の仲間を見つける方法があることを知っていただきたいのです。
スペシャリティを持った人たちを仲間にして頼ってもらい、経営者の方は経営者にしかできないことや、得意なところに特化する。
例えば新規事業は経営者がやられたほうがいいと思うので、そのようなところに特化し、既存事業を任せていくとか、地域で販売してたものをインターネットで販売する等は得意な人に任せて、仲間を作って肩の力を抜き事業成長に向けてやっていただきたいと痛感しています。
宮井:本当ですね。
目を広げればたくさんの仲間がいますよね。
今回も非常に参考になるお話をどうもありがとうございました。
秋好、根岸:ありがとうございました。